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2016.8.3
2016.8.3
「シンプルに考える」は、森川氏がLINE株式会社の代表取締役を退任した直後に出版された書籍です。LINE株式会社は2016年7月に上場を果たしています。本書で紹介されている考え方は、LINEの事例や森川氏のこれまでのキャリアで培われた経験がベースとなっています。
会社にとっていちばん大切なことは何か?ヒット商品をつくり続けること。これしかありません。出典:シンプルに考えるP2
「シンプルに考える」は、会社にとって最も重要なことの定義をする一節からスタートします。
森川氏はさらに、会社における社長の役割を
ユーザーのニーズに応える情熱と能力をもつ社員だけを集める。出典:シンプルに考えるP3
彼らの「熱」を守ることこそが、最大の使命なのです。出典:シンプルに考えるP25
としています。
情熱と能力のある社員を「採用」し、社員たちが熱を持って働ける環境を「守る」ことが森川氏が考える社長の役割なのです。
「会社にとって重要なこと」「社長の役割」を明確にすると、「理想の会社像」が見えてきます。
僕の理想はシンプルです。現場はひたすらユーザーのために全力を尽くす。経営は、現場が仕事にとことん集中できる環境を守る。出典:シンプルに考えるP25
会社とは何か。
本書では、「ユーザーのニーズに応える情熱と能力をもつ社員」と「社員の熱を守れる経営者」がヒット商品を作り続ける場所と定義されているのです。
会社の定義を明確にした上で森川氏は、ビジネスについても言及しています。
ビジネスとは何か。とてもシンプルなことです。求める人と与える人のエコシステム(生態系)。出典:シンプルに考えるP28
求める人がいて、与える人がいれば、ビジネスは成立する。
森川氏がここまで端的に「ビジネスとは何か」を表すことができるのは、これまでビジネスとは何かについて何度も思考を重ね、深く考え続けた結果なのだと想像ができます。
森川氏の思考にかかれば、「ビジネスで価値を出せる人」の定義もシンプルです。
人々が本当に求めているものを感じ取る能力と、それを具体的なカタチにする技術を磨き続けること。出典:シンプルに考えるP29
これさえできれば、ビジネスで価値を出すことができるのです。
1人で両方できなくても、感じ取る能力に長けている人と、具体的にカタチにする技術を持っている人が組めば、ビジネスで価値を出すことができます。
森川氏は本書のなかで、「ビジネスは戦いではない」と言い切っています。
ビジネスが戦いではない理由は、戦う相手はライバルであるものの、応えるべきはユーザーのニーズだからです。他社のことばかり気にしていると、ユーザーから目が離れてしまうのです。
こうした戦いにばかり気を取られるうちに、ユーザーのことよりもライバルのことばかりに気が向くようになります。そして、ライバルに勝つことが目標になってしまうのです。しかし、ユーザーにとって、それはどうでもいいことです。出典:シンプルに考えるP33
周囲を見渡すと、貢献するべきユーザーよりもライバル社の動向ばかり気にして、ライバル社に勝つことばかりに注力している人がいるのではないでしょうか。
森川氏の考え方に沿うと、これはビジネスではありません。
どちらが勝とうが、ユーザーにとってはどうでもいいことだからです。ユーザーは自分が欲しいプロダクトやサービスを使いたいだけなのです。
シンプルにユーザーのことだけを考える。そして「ユーザーが本当に求めているもの」を生み出すことに集中する。その結果として、勝利はもたらされるのです。出典:シンプルに考えるP33
競合他社に対抗するという意味では、ビジネスは戦いではありません。ユーザーが本当に求めているものを生み出せるかどうかこそ、本当の意味での勝負といえます。
森川氏は、「会社」「ビジネス」をシンプルに整理した後に、「幸せ」についても言及しています。
「幸せ」とはなんだろう。人は誰でも、誰かに認められたいと願っている。だから、仕事を通じて世の中の人々に喜んでもらったときに、自分の存在価値を認められたと感じる。それが「幸せ」なのです。出典:シンプルに考えるP59
森川氏は幸せを、「自分の存在価値が認められたと感じること」と定義しています。仕事を通じて幸せを感じるのであれば、自分の仕事が世の中の人々を喜ばせるものでなければなりません。
そして、その幸せのためなら身を削る努力ができる。それが、プロフェッショナルだと思うのです。出典:シンプルに考えるP59
幸せの定義を通じて、プロフェッショナルの定義までできてしまうのも、「シンプルに考える」成果といえますね。
森川氏は33歳で日本テレビを退職しています。日本テレビでは驚くほどの高給をもらい、周囲からチヤホヤされていたようです。ただ森川氏は、本当の自分の市場価値に比べてあまりに高い給料とステータスに恐怖を覚えていました。
このままじゃダメになってしまうと思いながらも、
まったく躊躇しなかったと言えば嘘になります。会社に残れば、将来の生活も保証され、社会的なステータスもある。それを手放すが惜しい気持ちもありました。出典:シンプルに考えるP54
といった、退職することへのためらいもあったとしています。
そんな葛藤のなかでも日本テレビを飛び出すと決めたのは、森川氏が以下の考え方を持っていたからです。
それにしがみついて、やりたいことをあきらめるような生き方はしたくない。それはまるで、動物園で飼育されるような人生だ。出典:シンプルに考えるP54
だから、僕は動物園から出ることにしたのです。出典:シンプルに考えるP54
日本テレビという理想的な職場環境を「動物園」と表現していることもさることながら、本当に動物園から出てしまう行動力こそ、特筆するべきことです。
理想的な職場環境で働いている人の中には、森川氏と同じように、本当の自分の市場価値に比べて高い給料やステータスに恐怖を感じている人もいるでしょう。ただほとんどの人は、その環境を捨てる選択をしていないように思います。
なぜ森川氏は、ほとんどの人ができない選択をしたのでしょうか。
明日のことすらわからないのが、人間にとって普通のことなんだ出典:シンプルに考えるP81
根底には、この価値観があるように思います。
人間は、どこまでも自由なのだと思います。すべては、自分が決めること。どんな仕事をするか、仕事とどう向き合うか、どんな会社で働くか、何を大切にして生きるか。その選択で人生は決まっていくのだと思うのです。出典:P81,82
「明日のことすらわからないのが人間にとって普通」という考えを持つことが、自由な選択をするポイントだと思います。
安全そうに見える道や安定したキャリアも明日のことすらわからない状況では意味がありません。安全や安定の前提には「明日も今日と同じで平和」という価値観が無意識にあるからです。
人はいつか死にます。
ほとんどの人は、いつ死ぬかをコントロールできません。
その意味でも人間は本来、明日のことすらわからないのが普通なのです。
森川氏のようにシンプルに考えれば、多くの人がしない選択肢の方が、実は理にかなっているのかもしれない。そう思える一冊です。普段上司や同僚に「思考が浅い」「もっと考えて」「何をいっているかわからない」と言われてしまう人にオススメの本です。
(BraveAnswer編集長: 和田)