生き方

「働き方」の教科書に学ぶ!終身雇用、年功序列の終焉

この記事は、ライフネット生命株式会社会長兼CEOの出口治明氏の著書「働き方」の教科書(新潮社 2014年)の書評記事です。出口氏は「終身雇用や年功序列制度は今後の日本では維持できない。その理由は3つの前提条件で説明できる」としています。今回は、第三章「20代の人に伝えたいこと」で語られている戦後の日本の経済状況と終身雇用、年功序列の関係性についてご紹介します。

仕事の成果よりもロイヤリティが重要だった時代

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第三章「幸運な時代の終焉」という中タイトルで記されている「幸運な時代」とは第二次世界大戦後の50年間です。

伝統的な日本企業は、仕事の成果よりも従業員のロイヤリティ(忠誠心)を評価する傾向があります。出典:「働き方」の教科書P102

ここでいう伝統的な日本企業とは、戦後50年間で大きな成長を果たした伝統ある企業です。これらの企業では、仕事の成果よりも従業員の会社へのロイヤリティ(忠誠心)のほうが評価される傾向にあるとしています。

極論、「成果を出すものの上司や組織と頻繁に対立する」社員よりも「成果は出さないけれど上司や組織の言うとおりに働く」社員のほうが、評価されます。

出口氏はその理由を3つの前提条件、「キャッチアップ型モデル」「人口増加」「高度成長」で説明できるとしています。

 

キャッチアップ型モデル、人口増加、高度成長とは?

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キャッチアップ型モデルとは「先進国のやり方をモデルとしてマネをする」ことです。

戦後の日本は、戦争で負けた原因は技術力の差であることをわかっていました。アメリカのように高度な技術力を身につけて産業を育成し、経済力をつければ、豊かな国づくりができるのではないかと考えたのです。

キャッチアップ型モデルは大成功しました。その結果、高度成長が30年から40年続き、しかもこの間一貫して人口も増え続けたのです。出典:「働き方」の教科書P103

「キャッチアップ型モデルの成功」「人口増加」の結果、日本経済は「高度成長」の時代へと突入しました。

歴史上、他に類を見ないほど順調に国家が経済成長した時代です。

高度成長期の日本は、毎年7%程ずつ成長をし続けました。年7%成長を10年続けると、経済規模は2倍になります。この状況下での企業は、慢性的に人材不足に陥ります。

この時、求められていた人材像は

体力があり、厳しいことを言っても潰れそうになく、どんなに無茶を言っても文句を言わずに黙々と働く人材出典:「働き方」の教科書P105

でした。

 

終身雇用、年功序列制度が定着した背景

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当時求められていた人材像を最も効率的に獲得できた手法は「大学生の青田買い」でした。

中途採用が一般的ではない時代、そもそも特定のスキルや経験値は人材要件になっていなかった時代です。「体力」「打たれ強さ」「従順さ」さえある人材であれば、高度成長中の日本経済のシステムに乗せるだけでどんどん業績が拡大した時代だったのです。

10年で経済規模が2倍になるということは単純に、10年で給与が2倍になる時代です。働く側は合わない仕事と思っても我慢して働き続けました。「給与は我慢の対価」という価値観はこの頃に出来上がったとされています。

文句をいわずに働けば会社は大きくなり、給与はドンドンとあがる。
終身雇用制は、このような時代背景から成立しました。

終身雇用制が定着すると同時に、年功序列制も定着していきました。この頃の仕事は個人の仕事の評価がしづらい仕組みだったからです。それぞれの従業員を個別に評価するよりも、働いた年次で一律評価するほうが合理的だったのです。

年功序列が定着すると次の問題は、役職者のポストが高齢者で埋まることです。この時に効果を発揮するのが定年制です。

出口氏が

定年で企業を放り出されても誰も文句を言わないのは、手厚い退職金や企業年金制度が控えていたからです。出典:「働き方」の教科書P107

というように、定年制があったことも、終身雇用や年功序列システムが定着した背景のひとつです。

 

ロイヤリティから成果の時代へ

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こうしてみると、「青田買い、終身雇用、年功序列、定年制」という日本独特の雇用システムは、ワンセットであることがわかります。出典:「働き方」の教科書」P107

という整理の仕方は、戦後から高度成長期までの日本経済の人材モデルを的確に表してます。

極端に表現すると、この時代は誰が仕事をしても相応の業績拡大が見込めたのです。

もちろん個人個人の能力の差は存在したでしょう。ただほとんどの企業は、それ以上に強力な「キャッチアップ型モデル、人口増加、高度成長」のスキームを前提とした企業経営を戦略的に選択していたのです。

従業員のロイヤリティ(忠誠心)を最も重要視するのも、この前提から考えると合理的ですね。また、従業員側がロイヤリティを簡単に証明する手段は「残業」でした。現代にも残る「残業する人はエラい」という価値観は、この頃に出来上がったのです。

これからの日本には、キャッチアップ型モデルも人口増加も高度成長も期待できません。

この三つの条件が揃うのは、人類5000年の歴史のなかでも稀有なことなのです。

戦争が半世紀も起こらず、人口が増え、その間ずっと右肩上がりに成長し、市民全員がハッピーになることなど本来あり得ません。出典:すべて「働き方」の教科書P109

出口氏の指摘の通り、キャッチアップ型モデル、人口増加、高度成長が見込めない日本経済においては、青田買いから定年制までをワンセットにした人材採用スキームも成立しません。当然、終身雇用制や年功序列制の維持や復活も見込めません。
親世代とは経済の前提が違うことと、これからの市場経済では成果が評価の主役になることを理解しておいてくださいね。
(BraveAnswer編集長: 和田)


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