教養

『クルアーンを読む カリフとキリスト』中田考/橋爪大三郎|守破離の書評

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。 慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。 卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。 2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から 様々なビジネスの知見を得る。 現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。 冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。

クルアーンを読む カリフとキリスト
著者:中田 考 橋爪大三郎
出版社:太田出版

ISBN:4778314980
発売日:2015/12/9
サイズ:19cm/312p

世界には70億人を超える人々が暮らしており、その中の15億人はイスラム教徒と言われています。

イスラム教徒が大多数を占める中東では、同じイスラム教でも宗派による対立などで争いが絶えず、IS(イスラム国)の問題など、尚、多数の火種がくすぶっており、世界情勢にイスラムが与える影響は大きなものがあります。

そのイスラム教徒が大切にしている書物が、クルアーン(コーラン)です。イスラム教の聖典で、イスラム教における最高の権威を持つものであります。

しかし、イスラム教徒が身近に中々いない日本では、クルアーンは非常に敷居が高いものではないでしょうか。イスラムに興味を示し、クルアーンの翻訳解説書を手に取ったとしても、クルアーンが意味するところを正しく理解できるとは限りません。

 

この『クルアーンを読む カリフとキリスト』は、社会学者であり比較宗教論の大家である橋爪大三郎先生と、ご自身もムスリム(イスラム教徒)でありイスラム学者の中田考先生のお二人による対談です。本書では、ときにその他の宗教を補助線にしながら、ときに日本社会との対比をしながら、クルアーンそしてイスラム世界を紐解いています。

その過程で映し出されてくるものは、イスラムだけでなく、グローバルな現代社会の成り立ちやその矛盾、そして我々日本社会の立ち位置までがスコープに入ってきます。

我々は日頃、日本にいれば日本人であることを意識することはありません。たとえば、日本語の特徴や日本語の美しさを、外国語である英語を学ぶことを通して、より鮮明に実感することがあるように、『クルアーンを読む』での対談で浮かび上がってくるのは、我々日本社会の特異性です。

日本社会から遠くかけ離れたイスラム世界を理解することで、自分たちを再認識していく。

日頃馴染みのない分野だからこそ、手に取って欲しいこの一冊です。

中田 考 1960年7月22日生まれ。日本のイスラム学者。同志社大学客員教授。著書に『イスラームの論理』(筑摩選書)、『イスラーム法とは何か?』(作品社)、『みんなちがって、みんなダメ』(ベストセラーズ)など

橋爪 大三郎 1948年10月21日生まれ。日本の社会学者。著書に『教養としての聖書』(光文社新書)、『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫)、『はじめての構造主義』(講談社現代新書)など