教養

「助けて」が言えない 書評|守破離の書評

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。 慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。 卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。 2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から 様々なビジネスの知見を得る。 現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。 冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。


「助けて」が言えない
著者:松本 俊彦
出版社:日本評論社

ISBN:4535563799
発売日:2019/7/12
サイズ:18.8cm/264p

「言ってくれれば、よかったのに。」

何か困っている時、友人や家族との話のなかで、たった一言「困っているんだ」という言葉を、本人から聞くことができたら、鈍感な私でも助けてあげられることや、自分に出来ることを手伝えることがあるかもしれません。

たとえば、小さなことかもしれませんが、家事を助け合ったり、話を聞いてあげたりすることでも救われることがあるように。

「困っている」という状態を、そのメッセージを、本人が出すことができれば、周囲は意外なほどにも手を差し伸べてくれるように、私自身は感じています。

それでも、その「たった一言」を声に出せない人がいます。
それどころか、「困っていません」という言葉を返してしまう人もいるかもしれません。

虐待・貧困・差別・自殺・依存症。

傍からみれば、大きな問題を抱えているように見えるのに、助けを求めることができずに最悪のケースに至ることもあります。

この『「助けて」が言えない』は、ご自身も精神科医である松本俊彦先生が編者となって、臨床心理士たちの現場からの声を集めたものです。

文中には、一部専門用語が出てくるものの、そこで語られていることは、人間関係そのものへの考察です。

読み終えたときに、私が感じたことは、「助けてが言えないのは自分も同じかもしれない」ということ。

誰かを助けたいと思って、手を伸ばしたこの本で、気付かされたのは、助けを求めているのは、他ならぬ自分自身だったのかもしれません。

貴方も気付かないうちに無理をしていませんか。

「安心して「人」に依存できないこと」に問題の本質があると、同書の冒頭で松本先生は述べています。

社会の、家庭の、会社の、各コミュニティにおける「心理的安全性」を考える上でも、「ウチは何の問題もない」と思っている人にこそ読んで欲しい、そんな一冊です。

松本 俊彦 1967年生まれ。日本の精神科医、研究者。著書に『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』(講談社)、『薬物依存臨床の焦点』(金剛出版)など