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【対談】経歴と「緯歴」で紡ぐキャリア最強論――李東潤×和田宏樹

1994年生まれ。埼玉県立川越高校、法政大学文学部卒。ライターが記事を作成する行為は「無から有を生み出す行為」であり、無のときにはなかった価値を提供する意味のある行為と感じている。「膨大な知識量と独自の視点で世の中の潮流を見極めるコンテンツメイカー」を目指して活動中。

この記事は、歴史を軸にした各種勉強会やWeb放送への登壇、時事問題の解説でご活躍されている李東潤さんと、BraveAnswerを運営するアクトデザインラボ社代表の和田宏樹による対談をまとめたものです。

今回は「キャリア」をテーマに対談して頂きました。

 

キャリアという言葉、誰しもが1度は耳にしたことがあると思います。

それでは、キャリアってなんでしょうか?

 

対談の中で、キャリアとは「轍(わだち)」のことである、という話が出てきます。

これを李さんが和田との対話の中で深掘りしていくと、キャリアの奥深さが見えてきます。

もし今、ご自身の進退について少しでも不安を感じている方は、ぜひこの記事を読んで、キャリアの神髄に触れてみてください。

 

李東潤

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から様々なビジネスの知見を得る。現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。

 

和田宏樹

1984年生まれ。埼玉県立川越高等学校、早稲田大学社会科学部卒業。リクルート、グーグル日本法人を経て2016年に独立。アクトデザインラボ社代表。

キャリアとは「轍(わだち)」である

今回はキャリアについて話をしていくっていう事なんですけど。
和田
そう、今回はキャリアですよ。
キャリアについてはリベラルアーツとかでも触れてきていますけど、改めてキャリアの原義についてちゃんとおさえておきますか。

キャリアの原義って「轍(わだち)」なんですよね。

和田
轍って、車がぬかるみを通ったあとに残っている車輪の跡みたいなやつですよね。
それですね。車が通った後とか人が通った後に残るものがキャリア。
和田
そうなんですね!
キャリアはラテン語から派生した言葉ですが、キャリア(career)と同じラテン語から派生した言葉にキャリー(carry)があります。

キャリーは運ぶっていう意味ですが、運ぶって行為そのものの意味はキャリアにも残っているんです。「通信キャリア」という使い方がこれですね。

和田
そんなところに名残が。
じゃあその一方で、経歴という意味で使っているキャリアってなんでしょう。

どんなイメージがあります?キャリアに関して。

和田
まぁ、これまでのことって感じですね。

振り返りというか、過去から現在のイメージですよね。キャリアって言われると。

あなたのキャリアは?って聞かれると、これまでの事、話しません?

なるほど。

今までを振り返る感じですかね。

和田
そこを一般的な意味では使っていますよね。
なるほど。

じゃあちょっと質問変えますね。

さっきはキャリアの原義をおさえましたけど、日本語で経歴ってなんて訳します?

和田
経歴?
そう、経歴。
和田
経験と歴史ですかね。
そうですね。歴史はまあ、分かりやすいですよね。

「歴」って漢字、「止める」って入っているじゃないですか。漢字の下のところ。これって、木でくくりつけた色々なもの、情報などを止めおくっていう事が原義なんです。

だから過去の出来事を残すというのも、ある意味歴史。歴。

和田
へぇ、「歴」ってそんな原義があったんですね。
じゃあ次は、経歴とか経験の「経」。時が経つとか、経済とか。

「経」っていう字は元々どういう意味があると思います?

和田
経験の「経」?経験で使ってる経はどういう意味か?

なかなか難しい質問ですね。うーん、時間とか。

時間?ほう。
和田
一刻一刻みたいな意味かな。
なるほど。時間が経つとかの意味ですね。

実はそれは原義じゃないんです。派生語なんです。その派生語から、まさに時間とか、貴方が体感した事は何ですかっていう意味になってくるんですけど。

でも原義は違います。皆さん知っている言葉ですよ。

普通に接していて、事の経緯を教えてくれとかいいますよね。

和田
経緯って言うね。
経緯、経緯って言いますよね。経緯の緯の字と経の字が使われている言葉…
和田
あ!経線、緯線。
そうそう。経度と、緯度。
和田
どっちだっけ?
経度はどっちですか?
和田
経度は、縦だ縦。
そうですね、東経何度とか、西経何度とかって言いますよね。

で、経緯って何偏が入っていますか?

和田
糸偏。
そう、糸偏。

なのでもともと織物の縦糸の事を「経」って言っていたんです。で、横糸の事を「緯」って言っていたんです。だから経線緯線、緯度経度となるんですけど。

なので「経」の最初の原義って縦糸なんです。織物を作る時に、縦糸と横糸を重ねて織物を作っていく。だから糸偏なんですよね。

縦糸が連なっているという事で、それが時の流れを表している。やがて時間という意味で使われていく。

和田
経糸(たていと)っていう意味なんですね。
経糸っていう意味なんです。だから、ポイントとしては、繋がっているっていう事。

ここもある意味轍と一緒で、だからこそ経歴って訳した人ってなかなかセンスあるなって。

轍の原義語をふまえると、「経」っていう字を使うと、「経歴」という漢字も同じ「繋がっている」という意味を表しているんですよね。

 

キャリアは断絶する?

和田
キャリア、轍だと今この瞬間までのイメージですかね。過去から現在までみたいな。

経緯だと未来も入る気がする。

長いイメージになってきますよね。経緯っていう字が今より先に繋がるイメージが出てきますよね。

だからキャリアプランとかキャリアアップとかっていう言葉には、「キャリア」に「今からどうする」っていう未来を意味する「プラン」とか「アップ」が後ろについてくるわけです。

じゃあキャリアを轍だって考えた時に、キャリアって切れる事はあるのか、という話になります。

和田
轍と考えると切れるのは不自然ですね。
そうですね。
和田
まあでも、止まれば切れますよね。

止まったら轍が残らない。

確かにその後は出ないですね。でも止まったりする事ってあるんですかね、人間。
和田
んー。

時間は過ぎますから、止まるっていうのは不可能ですね。

不可能ですね。時間っていう意味で捉えていくと。

でも、休暇を取るのを、時間という領域ではなく、自分の仕事とか職業とか、狭い領域で捉えると、キャリアって断絶するとか、中断するとか、そういうイメージを持たれる事が往々にしてあります。

和田
産休とか。
産休はキャリア断絶と言われたり、そのキャリアの断絶を少しでも緩やかするためにリモートワークを導入する動きがあったりしますよね。

でもそれって文脈として僕は違和感を覚えていて。

別に産休で、キャリアは断絶しないし。

和田
キャリア=仕事の経歴ではない。
ない。

なぜなら経歴って、経験と歴史なので、人生を仕事だけで語るっていうのはちょっとおかしいんですよね。

ビジネスって元々は「ビジー(Busy)」、忙しいとか努力するとか大変とかっていう意味があって、そこから派生してきている言葉。

なのでビジネスで言うと、忙しい状態がなくなるっていうのがある意味中断だったり、あるいは断絶だったりになってしまうかもしれないんですけど。

でも結局、我々の人生考えていった時に、仕事以外にも色々なことをやるわけで。仕事でも、40年間同じ仕事をしている人がもしいたとしたら、それってどうなのかなっていうのがある訳です。

例えばこの間、安室奈美恵さんが引退しましたけど、彼女はそれで引退してキャリアが終わるのかって言ったら…

和田
何か次がありそうですよね。
次のステージがありそうですよね。しかも彼女、早めに産休とっていますよね。
和田
確かに、早かった。
早かったですよね。でも何も断絶していないし、何も止まっていないし、音楽活動、歌手としての、パフォーマーとしての活動は続いています。

確かに産休時代、妊娠してる時に激しく踊れないっていうのは物理的にあるかもしれない。でも他の所は確実に進んでいるんですよね。

彼女がママにならなければ、これだけの人気を集められたか。

和田
確かに。
私は仕事にしか生きていませんっていう状態で、あれだけの支持を30代になっても変わらずいけたかっていう話です。
和田
うんうん。
やはり彼女がキャリアを断絶させなかったっていうの、皆見てわかるんですよね。

20代の絶頂期になんで今、産休取るの?しかも相手はサム!?みたいな。

中2だったかな僕。

和田
人気絶頂ですよ。
絶頂。絶頂期の引退でみんなの頭に浮かんだのは、もう表舞台に出てこないんじゃないかっていう事かもしれませんね。

と思ったら、時代は変わって小室哲哉さんの時代が終わっちゃったんですよね。彼女がいわゆる休んでいる間に。

でも、結果的に見るとその間に彼女は小室色を払拭して、パフォーマーとして復活したんです。歌って踊るっていうことを突き詰めたわけですね。

和田
もうライブ屋さんですね。あの人。
ライブ屋さんですね。歌って踊る事に命を懸けていたので。だから40代で引退するってある意味当たり前で。

僕の義理の妹ってバレリーナなんですけど、やっぱり30超えると動くのがきつくなるんですね。

もはやそれ以上自分がレベルアップすることは難しい。維持するのでいっぱいいっぱい。

和田
フィジカルな話。
フィジカルな話なんですよ。
和田
柔軟性も落ちそうですしね。
だからそういうことを考えておくと、安室さんが引退しました、となった時に、本当にそこで終わるのかなってなるわけです。

今言われているのは、裏方に回ってプロデューサーになってとか。でも色々なことできますよね。今までのものを使って。

パフォーマーとしてはここで区切りかもしれないけど。他の人を指導したりとかできそう。

こうやってみると、仕事ではなくキャリアという幅で捉えた時に、断絶ってしないと思うんです。

 

「緯歴」の大切さを知る

和田
安室さん、政治家もいけますよね。
いけそうですね。
和田
というかマジで選挙勝てそうですよね。
勝てそうですね。

あとは、沖縄出身という所がどうやって繋がってくるのか。

キャリアっていうのは、いかに自分の今やっている事が自分の人生と結びつけられるかが凄く大切なんです。

自分の人生の中で、当然子育てだってしたいし、子供の成長も見守りたいし、仕事もしたいし。

ただタイミングによって、集中度合いを変えるタイミングってあるわけで。物理的に妊娠してる状態だと色々な制約がかかるし。

ようやく子供が生まれても、あっちこっち行くので余計目が離せない状態。キャリアって考えた時に、「これって私にとって足枷になってる」って感じるとしたら、それは凄くもったいない。

和田
確かに!
目が離せないって別に子供だけじゃないんですよね。

まあ僕ら30代なので、例えば20代の若者やインターンの大学生とか、ほったらかしにするとどこに行くかわからないですよ。

仕事で気づいたら、なんか勝手に色々なことやってました、みたいな。

そうなると、先回りする能力って当然高まると思うし。

予期せぬ動きをしたり、当然自分ができて当たり前だと思っていることができなかったり。そういう経験を踏まえて、ちゃんマネージャーとしてマネジメントして、それを動かしていくって考えたら、子育てってすごい。

生きた勉強だし、人生と結び付けられるんです。責任感も半端ないわけですよね。

和田
危機感と緊張感もあるし。
そこで得た経験って必ず何かに活かせる。

自分のキャリアを考えた時に、それを職業とか仕事って捉えたら、もしかしたら一本道なのかもしれないけれど、自分の人生全体をキャリアと捉えたら、色々なルートがあるわけで。

その色々なルートの中に子育てが含まれているってこと。

子育てをしながら仕事をするっていう事が、どういう風な繋がりを持つのかっていうことを意識するのが大切なのかな。

和田
まさに轍、つながりですね。
ここで切れちゃったから、あー、終わり、私は出世ができない。ロールモデルがいないから、子供は諦めなきゃいけない。

なんかそれってちょっと本末転倒だなっていう気がする。

むしろそういった事を積極的にやっていかないと、新しい視野っていうのが広がっていかないし。

大切なのは、色々なルートをつなぐバイパスを作ること。仕事と子育てっていうルートをつなぐためには、バイパスが必要なんですよね。

キャリアは経歴だっていう「経糸(たていと)」の話をさっきしましたけど、横糸っていう意味の「緯」の方も大切になってくるんですよね。

和田
バイパスが緯なんだ。
バイパス、要は横串。皆色々なキャリアがある中で、横串のキャリアをどう入れていくかっていう意味で、「緯歴(いれき)」。そんな言葉ないですけど、そこが大切になってくるのかなっていう。
和田
緯歴ってすごく大切になってくると思うな。

結局僕も最初に選んだ仕事の延長線上にいないわけですよ。最初はリクルートの営業だったんですけど、子供が出来たり、体壊したりして、違うルートを通っている感覚もあるので。どう繋げるかが問題ですけど。

なんかこう緯歴の活かし方っていうか、考え方もそうですけど、ありますかね。

2つポイントがあると思うんですけど。「緯歴が大切だよ」っていう話と「緯歴の育み方」の話、これって両方必要だと思うんですよね。

日本人ってどちらかというと緯歴好きじゃないんですよ。転職が苦手だし、職人とか職人芸が好きなんです。

職人って褒め言葉なんですよね。その道一筋40年。頑固な匠の親父が磨き上げたこの製品を見よ、っていうのが好きなんです。

和田
うん、好き。
その技術を、例えば、刀鍛治で打ちながらちょっと火傷しながらでも、「俺はこれしかねぇんだよ」とか言いながら叩いてる姿、好きですよね。
和田
好き。
「プロジェクトX男たちのなんとか」とか。専門性一本のやつ。
和田
この道45年の寿司屋とか。
とかね。匠ジャパン的な。

フランス料理とイタリア料理全部混ぜ合わせた最高級のそば、これがジャパニーズそばだぜっていう人が出てきたら、おい待てってなりますよね。

和田
なんでしょうね、説教したくなりますね(笑)
でも、麺料理を極めるっていうことを考えるとちょっと違う視点が持てるんです。

ラーメン、パスタ、担々麺をやって、色々な麺を知っているからこそ蕎麦の良さが出せるみたいな、こういう文脈で捉えたら、すごく大切な事ですよね。

和田
うん。確かに。
でもなんかふらふらしている、脇道いっている、そんなことするぐらいだったら蕎麦を育てろ、農家に行ってそばの作り方を学んでこい、みたいな感覚がある。土から知れ、みたいな。

TOKIOの番組で「ザ!鉄腕!DASH!!」ってあるじゃないですか。あれでラーメン作ろうってDASH村でやった時は、「土からやらなきゃ。」「え、そこから?」みたいな感じでしたからね。

和田
でもまあ日本っぽいね。
そこが好きなんですよね。ラーメン作るってなったら緯歴より経歴を探りに行く。

横に広げるのではなく、ひたすら1つのことを深掘りしていく。

日本人は基本的にプロフェッショナルが好きなんです。職人さんが好き。これって、経糸を極めた人のことなんです。

職人を英訳すると、プロフェッショナルと置き換えていいでしょう。でも、プロフェッショナルで生きていける人って限られているんですよ。

和田
全員じゃないですよね。
全員じゃない。プロで飯食える、一本の道で飯食える人って限られているでしょうね。ただ、もしその一本を失った時に困っちゃう。
和田
まぁポートフォリオ的に良くないですよね。
良くない。野球選手で怪我して引退して、さあこの後どうする、とかなりますよね。

だからこそコミュニティが大切。会社っていうコミュニティも大切だし、会社のコミュニティの中にも上司、部下の関係だけじゃなくて、隣の同僚だったりとか、他のチームの人とか、他の組織の人とかがいるっていう環境が大切だし。

そういったところで、やっぱり横の重要性って大切なんだってことに気づくのが大切。これがファーストステップなのかな。

みんな同じことしか言わない、みんな安倍政権大好き、っていう組織にいたとしたら、あるいはそういった情報にしか接しないとしたら、すごい偏ったものの見方になってくるわけで。

色々なことを知ることが大切っていう事なんです。

 

「緯歴」を育むなら幅広い経験をするべし

和田
じゃあ、どうやって色々な事を知るんだっていう話になりますよね。
そう。キャリアってものを考えた時に、今度はどうやって他のものも育んでいくのか。緯線、横糸の話ですね。
和田
どうやるんですか?
古典的なのが、正に本を読め、なんですよね。

偉くなった人とか上の人が、本を読め、新聞を読めって言ったり、クリエイターさんとかアーティスト系の人が、もっと学校で勉強しておけばよかったって言っていたりするの、よく聞きますよね。

和田
聞きますね。
どういうことかっていうと、学校とか、そういう場所って強制的に自分の興味のないことを勉強させられるので、横幅広がるんですよ。

なんで将来靴屋になるって決めているのに、あるいは職人になるって決めているのに、学校なんて行かなきゃいけないのか、数学なんて勉強しなきゃいけないんだ。

これって、視野を広げるための入り口なので、最初からその人の人生が決まっていたとしても、緯線を加えるっていう意味で、緯歴を加えるっていう意味で、やっぱり学校教育って非常に大切で、そこはバランスがとれたものじゃないといけないんですよね。

和田
学校にはそんな意味付けができるのか。
だから僕、中学受験の三科目受験とか、あんまり賛成じゃなくて。それって学校教育の本筋じゃないよね。受験勉強になっちゃうよね。

五科目やっての結果がやっぱり大切だと思っていて。五科目だけじゃ当然ないんだけど、音楽とか芸術とか美術とか、そういうのも全部大切なんですけど、テストで絞らなきゃいけないから。

科目を分けていかなきゃいけないっていうのはあるんですけど、やっぱりそういう風に自分の世界を広げるっていう意味で、非常にその学校教育っていうのは、大切。

和田
学校は横幅を広げるためにもあるんですね。
益々これから色々なコミュニティが、オープンにクローズド化していく、つまりオープンに色々な人達を集めやすくなるが故に、自分の意見にだけ同調してくれる人としか交わらない様になっていく。

そうなると、学校っていう場所で手に入れた人間関係が重要になってくる。

会社の人には言えない事が、高校とか同級生とか、大学の時の同級生とかと話せたりっていうのはそういう所なんです。

そういうものの大切さをきちんと、学校の教育で、育んでいかないといけない。

学力って何なんだって言った時に、別に受験に合格することじゃないんです。そういった横幅を広げていくこと。そうすると結果的に自分の経歴の轍も太くなっていくし。

自転車の轍より多分戦車の轍の方が、安定しているし、消えないじゃないですか。どんな雨が降ったとしても。

まあ今は景気がいいと言われていますけど、いつ何時また嵐が来るかわからない。

その嵐の時に消えない轍をどれだけ作っていくのか。

そのためには一本の仕事をしていたっていう人よりも、家庭や家のことをわかっている人たちの活躍の場っていうのが、どんどん広がっていくんだと思うんです。

それを掴んだ人が、次のメルカリなりなんなり、新しいダイバーシティを使って、次のイノベーション、次のスタートアップ、次のユニコーン企業を作っていくんだろうなと思っています。

和田
大企業のジョブローテーションも緯線の話なんですか?
緯歴、緯線の話ですね。
和田
あれ外資系からすごくユニークだって言われますけどね。
あれは緯歴を作るってことなんです。外資だと転職になるんですよね。外資系だと定期異動とかそういうのはないので。

ところがこれが最近若者に嫌われているんですよね。日系企業の就活の有り方が話題になったりしていますし。要は何をやるか紐付いていないと就職したくないっていう人が増えている。

和田
増えていますね。
だから僕は、緯歴の話からするとすごく心配な流れだなーって思っていて。
和田
早くから専門を決めたいって事ですからね。
それがすごい突っ切ると結局は、もう小学校で、将来大工になると決まっているのになんで音楽の授業受けなきゃいけないんですかって話になってきちゃう。

全く同じ文脈になってきちゃう。それがだんだん若くなりつつあるし。その職業について何も知らない若者がなぜ仕事を決められるんだっていう。

和田
確かに。
だから僕、総合商社に入ったんです。何やるかわからないし。

就活している時にすごかったんですよね、他の人。テレビ受けると私は○○が好きでとか、車受けても車は日産の顔が好きでとか。

私はそういうのが全くなかったので、こういうフワフワした状況を許してくれた会社にしようっていう感じで入ったっていう訳ですね。

和田
なるほどね。そう言われるとリクルートも色々な業種があって。旅行とか、スーモとか。
旅行もあれば、結婚もあれば、不動産もあれば、人材もあれば。
和田
なんか今も同期会とかやると、人材営業出身の話と旅行業界出身の話で全然違う視点があって面白いっていうのはありますよね。
そうですね。それって自動的に緯歴が揃っているので、色々な人が色々な話をした時に、同年代っていう軸、同期入社っていう軸で色々なものが回りだしたりしているわけですね。

そういった意味でもやっぱり、リクルートが部署紐づき採用していたら、そことしか交わらないようになっちゃうので、非常にその人本人ももったいない事になっちゃいますよね。

専門領域もやがて決めたらいいと思うんですけど。

和田
実はリクルートは2014年位からやったんですよ。3年間だけ。キャリアはキャリアだけとか。

で、今年から戻したんですよ。駄目だこりゃって。なんていうかまぁ、あの会社は気づいたのかもしれないですね。今の話。

そう。アメリカの MBA とったりとかして、インターンをやって、俺この会社でこの仕事したいって決めて、入って来るならいいんですよ。

そういう訳でもないし。

だから新卒一括入社辞めたらいいと思っています。

入社するタイミングは人それぞれだし、自分が何やりたいかとか、どういう企業に入りたいとか決めてからでいいと思うんですけど。

大学1年からもう自分はユニクロでっていう人は行ったらいいと思うんですよ。1回インターンとかやって店長紐付け勉強をしながら卒業したらいい。そういう流れは全然ありだと思うんですけどね。

和田
緯歴を育むのであれば、興味のないことも含めて色々な経験をすることが大切なんですね。

 

あらゆることが「緯歴」になり得る

和田
うちの妻の話で言うと、同期入社なんですけど、子供産まれてやっぱり1回断絶する訳ですよ。彼女の中で。
彼女の中で。
和田
そう、彼女の中で。で、その間バリバリでずっとやっていた自分の同期の女性は、女性で1番早くマネージャーになったりしているんです。気分良くない訳です。

っていう感じになっていて、彼女は2回産休していて、正直言うとそのレースでは全然、天と地の差なんですわ。

まあそのルートはそうですよね。
和田
そのルートはそうです。

この出世競争選手権では確かにそうなっているんですけど、でもうちの妻は、子どもの服とか、子どもの学校とか、子どもと一緒に行けるオシャレなレストランとかたくさん知っているんですね。

で、子どもがいて、都内に住んでいて、働いている人たちってなんか、悩み共通じゃないかって、最近思いついたらしくて。

なんかこの横串で、メディアとかやろうかと話していたんです。

それでリクルートの雑誌とか作ったらいいんじゃないですかね。売れると思いますよ。
和田
でも、本当そういう事だと思うんですよ。緯歴って。
そういった意味でも1人1人のキャリアは決して断絶しないし、自分の人生は仕事だけじゃない。

仕事も大切な一部だからこそ自分の人生を大切にして、休むことも仕事だし、自分の人生を自分の思う通りに生きるのも仕事だし。

和田
確かに。僕もまだまとめきれていないですけど、2ヶ月休んだタイミングの前後ではちょっと働き方変わってきた気がします。考え方も変わってきますし。
休んでいた間ずっと勉強していたじゃないですか。生きるとは何か、死ぬとは何かっていうテーマから、教育って何だろうっていう風に。

めちゃくちゃ進んでいる訳ですね。歩みは。

和田
キャリアという意味では緯歴ができたんでね。
緯歴ができて、経営者としては一皮むけたんじゃないですかね。
和田
うん。しかもあんまり他の人がやらない緯歴ですからね。ユニークっちゃユニークだし。
選んでは取りにいけないですから。

でも引いちゃったからにはどうするか。ちゃんと歩みは止まらなかった、それがすごく大切。

だから結婚して子供が出来て、子供が生まれるって言う所はある意味自分でカードを引きにいっているので、できればカードを引く前にこういったことをちゃんとね、理解ができるとより安心してカードを引きに行けると思うんですよね。

結構、ためらう女性、増えていると思うんですけど、結婚して子供が生まれる、産休とったら自分のキャリアが断絶しちゃうからってこのカードを、しかもいつ取るかすごく悩む人がいるんですが、入社してすぐこのカード引いたら上司に何と思われるかしら、とか。

和田
マクロで見ると引かないって選択増えてそうですよね。

でもそれって社会全体で見ても、個人で見ても引けないっておかしいじゃないですか。快く引けるように、引いても大丈夫なんだよって。

もし引いて、顔に出す上司がいたら、それは組織がおかしいので。そうしたら違う所に目を向ければ、色々な所で色々な働き方が増えている中、自分の目の前にある道だけがキャリアじゃないんだよっていう話です。

っていう事で締めた。なんとなくまとまったかな。

 

編集後記

今回は「キャリア」についてお話しいただきました。

キャリアを「仕事」という狭い領域で捉えてしまうと、産休、育休や、一旦仕事をやめてゆっくりすることなどは「断絶」として捉えられてしまいます。

ただキャリアとは「轍」のこと。そしてこの轍は、仕事だけではなく、人生そのものです。

そう考えると、育休も産休も旅行も休暇も、すべてキャリアに含まれます。つまり、キャリアは断絶しないのです。

 

後は、そういった様々な軸を「緯歴」としてどうつなげていくのかが、キャリアという「轍」の広さになってきます。

李さんは

自転車の轍より多分戦車の轍の方が、安定しているし、消えないじゃないですか。どんな雨が降ったとしても。
まあ今は景気がいいと言われていますけど、いつ何時また嵐が来るかわからない。
その嵐の時に消えない轍をどれだけ作っていくのか。

と表現していましたね。

 

私は学生時代サッカー部だったのですが、サッカーという領域で緯歴がありました。

中学3年生の6月、大切な大会の数日前に、右足首の靭帯を断裂してしまったのです。全治1ヶ月以上かかる怪我で、その大会は断念せざるを得ませんでした。

ただその大会をピッチ外から見ることができたおかげで、プレイヤーとして出場していたときにはわからなかったチームとしての動きを知ることができました。

怪我で一時期プレーができませんでしたが、おかげでプレイヤーとして大切なチーム全体の動きを学ぶことができたのです。

これが私の、サッカーにおいて怪我が緯歴になった経験です。

 

もしかしたら、意図せずこれまでの経歴とは違った道を歩まなければならないこともあるかもしれませんし、自ら進んで違う道に行くこともあると思います。

それでも、キャリアという大枠で捉えることで、緯歴として結びつけることができるのではないでしょうか。

 

次回の李さんと和田の対談は、「教育」がテーマです。

教育に絶対的な正解はありませんが、だからこそ考える余地があります。李さんと和田が考える教育とは一体何なのでしょうか?

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