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【対談】歯車を回せば誰でも多動力を発揮できる――李東潤×和田宏樹

1994年生まれ。埼玉県立川越高校、法政大学文学部卒。ライターが記事を作成する行為は「無から有を生み出す行為」であり、無のときにはなかった価値を提供する意味のある行為と感じている。「膨大な知識量と独自の視点で世の中の潮流を見極めるコンテンツメイカー」を目指して活動中。

この記事は、歴史を軸にした各種勉強会やWeb放送への登壇、時事問題の解説でご活躍されている李東潤さんと、BraveAnswerを運営するアクトデザインラボ社代表で、多動力を体現してる(※)和田宏樹による対談をまとめたものです。

今回は「多動力」をテーマに対談して頂きました。

 

堀江貴文氏の著書で一躍有名となった「多動力」という言葉。

堀江氏は著書で、多動力のことを「いくつもの異なることを同時にこなす力」と定義しています。

 

李さんは、多動力にあるものが欠けていると、ただ色々な物に手を出しているだけの注意散漫な状態になってしまうと言います。

多動力とは何か。発揮するためにはどうすれば良いのか。

詳しくお話頂きました。

 

 

李東潤

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から様々なビジネスの知見を得る。現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。

 

和田宏樹

1984年生まれ。埼玉県立川越高等学校、早稲田大学社会科学部卒業。リクルート、グーグル日本法人を経て2016年に独立。アクトデザインラボ社代表。

※和田宏樹の多動力

  • 人生に夢中な人を増やすwebメディア「BraveAnswer」やペットライフを楽しくするwebメディア「pepy」の運営
  • ITで効率化を目指す美容室「NACER」の立ち上げ・経営
  • 企業向け研修を受託しており、ビジネスパーソンの成長に貢献
  • 家庭では一男一女の父。共働きの妻と子育て奮闘中
  • 麻雀を愛し、過去に麻雀大会で決勝進出経験あり
  • ラップに言葉の深さを感じ、ラップの研究をしている

多動力とは何か

和田

多動力を発揮している方が最近活躍されていますよね。

例えば、電気自動車と宇宙事業を同時並行で手がけているイーロン・マスクとか。投手と野手の二刀流でメジャーまでいってる大谷翔平選手とか。

あとは本田圭佑選手なんかも多動力ですよね。「プロサッカー選手×代表監督(※編集部注:正式にはGM)×経営者×投資家」っていう。

李東潤さん(以下李)

そうですね。

多動力は、個人だけでなく組織でも、発揮することができます。

例えばグーグルは、アルファベットという持株会社を設立して、自動運転とかIoTとか、検索以外にもいろんな事業をやっています。

和田

なるほど、組織にも当てはまるんですね。

ただ僕が思うのは、個人でも組織でも、いろいろやって、つまみ食いしているのは多動力ではないということです。

それはただの注意散漫。一本の軸、目的がないと成立しません。

和田

多動力と注意散漫の違いってどこにあるんでしょう?

例えば、Googleマップを例に考えてみましょうか。

Googleという検索エンジンの会社で、Googleマップという本業とは関係ないことをやっていて、意味あるの?という感じですが、マップも情報なんですよね。位置情報っていう。

Googleは「世界中の情報を整理する」を使命としていますので、その文脈でとらえれば、位置情報も立派な情報として整理されているわけです。

和田

Googleマップは使命に沿っているので、しっかりとした軸があると言えますね。

そうですね。これは多動力です。

Googleマップのあとに位置情報の価値に気づいたAppleは、iPhone 4でGoogleマップの締め出しを行ったわけですが、結局マッピングの技術が追いつきませんでした。

海の上にマークがあるとか、不具合を起こしてしまって結局負けてしまったんです。

和田

Appleは、Googleと違って明確な軸がないのに位置情報に手を出してしまったわけですね。

そうそう。

多動力において1番重要なポイントになるのは、それぞれが有機的に機能すること。

そうじゃないとただ複数を同時並行でやってるだけなんです。これは注意散漫です。

「歯車の1つを回すことによって関わるもの全てが回る状態」が多動力、とも言えますね。

和田

確かに、「いくつもの異なることを同時にこなす力」という多動力の定義から考えても、そう言えそうです。

経営者で言えば、自分が直接手を動かさなくても、取締役会を回せば全部のモノゴトが動く状態とか。

これも立派な多動力です。

和田

歯車を回すことで全部が動いていますもんね。

優秀な人であればあるほど時間が足りなくなって、できることが限られてくるので、仕組みが必要なんです。

会社経営だけじゃなく、個人もそうなってきましたよね。ITの力を借りることによって。

メールとか、チャットツールやテレビ会議ツールができました。メールという歯車を回すことによって、手紙を書く必要がなくなりましたね。

和田

なるほどねぇ。

多動力と注意散漫の差は「自分で回す歯車を選んでいるかどうか」、つまり選択と集中ってことですか?

「得意な人にやってもらう」という視点でみるとわかりやすいです。

例えば、歴史でみれば、フビライ・ハーン。日本にも攻めてきたことで有名ですね。

彼はモンゴル帝国を広大化させるために、得意な人に得意なことをやらせました。

遊牧民には戦争を、漢民族には行政を、ペルシャ人(今のイラン人ですね)には商売を、という具合に。

そして北京という大都市を作って、情報を北京に集約しました。

自分はそこにいながらにして、世界帝国を動かすための都市を作り出したんです。それぞれの民族的背景や文化的背景、多様性を味方につけたとも言えます。

和田

フビライ・ハーンは、北京にいながら色々な歯車を回して世界帝国を動かしたんですね。

日本史的には織田信長も多動力を発揮した人物です。

政治や軍事、経済という側面で、自分自身が先頭切って改革を推し進めるだけでなく、部下たちが動くように色んな仕組みを整えました。

和田

信長も多動力を発揮していたんですか。

例えばどんな仕組みを整えたんですか?

給料や福利厚生を磨くだけでなく、それまで価値がなかったと思われたものに価値を与えて、それを受け取れることを特別な名誉となるように設計したんですよ。

わかりやすい例が「茶器」です。

信長の部将の一人は、領土をもらった後に「領土よりも茶器が欲しかった」と嘆いた発言も残っているほどです。

茶器という、それまでに価値がないと思われたもの使って自分以外の人間を動かす原動力にしたんですね。信長すごすぎです。

さらに茶器を使って茶会を開く権利も名誉化し、信長の許可がなければ開けないようにしました。

現代でイメージすると、政治資金パーティーや園遊会などの権威ある会合を開くためのお墨付きを信長が握ったわけですね。

和田

織田信長すげぇ。

今度うちの会社でもやってみようかな。

「幹事をやることは名誉あることなんだ!」と定義づけて幹事やってもらうとか(笑)

(笑)

人が集まれば、情報も集まるということです。

交流関係を信長がコントロールすることによって、部下をコントロールしたんですね。

得意な人に得意なことやらせるのが多動力の基本です。ピカソも優秀な画商がいたから、ピカソになれたわけです。

得意なことを任せて、全体を動かせる状態にできているかどうかが、多動力と注意散漫の差と言えますね。

 

1つを極めたがる日本人

和田
日本だと、二刀流とかやりたいことやるとかより、脇目も振らずにそれだけやる、みたいなのが好まれますよね。
日本人は1つのことを極めるのが好きです。例えば、通算533本のバント世界記録保持者の川相とか、Jリーグの最年長ゴール記録保持者で50歳を超えて未だに現役のKINGカズとか。
和田
サッカーつながりで言えば、中田英寿さんはサッカーを引退した後に旅をした理由を「サッカー以外何も知らなかったから」と言っていました。

多動力の素を探しにいったんですかね?

そうかもしれませんね。

営業の人って、営業部を外されるとほんとに嫌がりますよね。

中田英寿さんが旅に出たように、いろいろな部署でいろいろなことを体験して、多動力を発揮できそうなポイントを見つけるのが重要なのに。

 

多動力に必要なのは抽象化とグルーピング

和田
多動力を発揮するためには、どうすれば良いんでしょう?
多動力を発揮するには、抽象度を高めていかなければいけません。自分は何ができて、どんな歯車を加えたら全てが回る状態になるか、知る必要がありますからね。

ただ、いきなり抽象度をあげるのも問題です。

例えばスポーツ選手が、「世界平和が夢」と掲げても、どうやっていいかわかりませんよね。一方で、「おれはサッカー選手だからサッカーしかやらない」では、多動力を発揮できません。

「サッカー+コーチング」で指導者の道もあるし、「サッカー+説明能力」で解説者の道もあります。抽象度をあげていく感覚が重要です。

Googleも最初は論文の情報を検索するツールでした。

そこから情報の抽象度をあげて、位置情報も情報だよねって捉え直したから、Googleマップも作ったんです。

和田
多動力を発揮するためには、抽象度をあげた上で、「サッカー+コーチング」みたいなグルーピングをする必要があるんですね。

副業ってどうなんでしょう?

グルーピングの選択肢が増えるからやったほうが良いような気もするんですが。

副業もただやっていれば多動力じゃないですよ。

主婦にも、「私は家族のお世話係だから」みたいなマインドの主婦と、多動力のある主婦がいます。

多動力のある主婦は、単純に家事をするだけじゃなく、自分の経験を応用して創意工夫しながら、家事をどんどん効率化していく。

どんな人でも、どんな仕事をしている人でも、多動力を発揮することはできて、そのポイントとなるのは抽象化をする思考力です。

和田
多動力はみんなが持つべき力ですね。
多動力は持ちたい人が持てばいいというよりも、この先どんな人も持っていなければならない力になると思います。

理由は、AIの台頭により、単純作業を繰り返す仕事にどんどん価値がなくなるからです。

でもAIは主体的にグルーピングをできないし、抽象化概念を自動で行わないので、ここがいまのAIの限界。

グルーピングも自動での抽象化もやるのが人工知能といわれていますけど、それがくる未来はもうちょっと先かなと。

和田
これからAIが台頭してくることを考えても、必要な力ですね。
多動力を発揮するためには、ビジョンも大事です。

バントの川相もそうですね。

プロだもの。目立ちたいしHRも打ちたい。主役になりたいだろうけれど、そんなところに彼のビジョンはないんですね。

彼は、チームの勝利という、より高次元なところにビジョンを抽象化することができるので、どんな時でも自己犠牲ができるのです。犠打世界一も抽象化の概念なくしてはできません。

20代ビジネスパーソンも抽象化概念なしに転職を繰り返したら、単なるジョブホッパーと呼ばれます。

抽象化概念があって、多動力を身に付けるために戦略的に転職している人はジョブホッパーとは呼ばれない。

その違いは面接で話せばわかりますよ。

和田
抽象化がなく、今の会社が嫌いだからとか、あの会社のほうが条件が良いからという理由だけで転職を繰り返していたら、40代になってもジョブホッパーのままかもしれませんね。
ただ、多動力は年齢に関係なく発揮できますからね。

40代でジョブホッパーになってしまっても、そこから少しずつ多動力を身に付けることはできると思います。

和田
確かに、定年後のおじさんでも多動力発揮している人いますからね。

以前私がお会いした埼玉のオヤジなんか、多動力発揮しています。

多動力は、起業家なら持っているとか、サラリーマンだから持っていないとか、そういうものではありません。

主婦が多動力を発揮できるように、心がけ次第、意識次第で、誰にでもできます。

まずは意識するところから、始めてみることが大切です。

 

編集後記

今回は李さんと弊社代表の和田に、多動力というテーマでお話して頂きました。

お話の中に色々な人が登場しましたが、彼らのような有名人でなくても多動力は身に付けられますし、身に付けるべき力です。

 

もし20代がこの対談を読んだら、「忙しいから、一度に色々なものに手を出すのは難しいよ」と思ったかもしれません。

確かに、一度に色々なものに手を出すのは難しいと思います。ただ、多動力を身に付けたいのなら、まずは1つでいいので、自分がやりたいと思うものをやってみるのがおすすめです。

李さんも対談の中で「まずは意識するところから始めてみることが大切」とおっしゃっていましたね。

 

私自身、多動力を身に付けたビジネスパーソンではありません。ただ、あることを1つだけ継続して取り組んだ結果、多動力の入り口に立つことができました。

それは、新聞を毎日読むことです。そんな基本的なこと誰だってできると思うかもしれませんが、実際に毎日新聞を読んでいる人はどれくらいいるでしょうか?

私は1年間新聞を毎日読んだ結果、BraveAnswerで記事を書くまでになりました(興味があればこちらを是非)。

毎日新聞を読むことによって私は、多動力の種を1つ手に入れたわけです。後はこれをどのように他の要素と掛け合わせて活かすのか、どのようにして多動力の種を増やしていくのかが、私の今後の課題です。

 

こうやって少しずつできることを広げていくと、いつの間にか多動力を発揮できるようになってきます。

たくさんを1度に身に付けるのではなく、1つずつ着実に身に付けていくのです。

 

次回の李さんと和田の対談は、「キャリア」がテーマです。

育休を使っても、留学しても、キャリアは断絶しないんだ、というお話となっていますので、お楽しみに!

【対談】経歴と「緯歴」で紡ぐキャリア最強論――李東潤×和田宏樹

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