日大アメフト事件を基に考える「パワハラ」とは何か。

1984年生まれ。埼玉県立川越高等学校、早稲田大学社会科学部卒業。リクルート、グーグル日本法人を経て2016年に独立。自社メディア運営をしながら、顧客のマーケティング支援、人材育成、採用支援を行う。専門はマーケティング、広告、営業。

2018年5月に起きた日大アメフト事件。

「選手が監督の指示で相手選手にケガをさせた。」
「監督は『指示をしていない』とウソをついている。」
「監督やコーチは最低の人間。」
「選手はケガをさせたとはいえ、会見は立派だった。」

この事件に対する世論は、上記のような見解が一般的であるように思います。

この記事では、日大アメフト事件をテーマに、パワハラについて考察を深めたいと思います。

あなたは、パワハラをしていますか?この問いに対して答えが明確に「No」と言えてしまうのであれば、逆にあなたはパワハラ加害者かもしれません。

なぜなら、パワハラについての考察や理解が不十分な可能性があるからです。

パワハラとはなにか?

広辞苑によるパワハラ(パワーハラスメント)の定義は、

職場で上司がその地位や権威を利用して部下に行ういじめや嫌がらせ

です。

近しい言葉としてモラハラ(モラルハラスメント)も広辞苑では定義されていまして、

言葉や態度などによる精神的な嫌がらせ・虐待

とあります。

 

広辞苑での定義におけるポイントは

  • 「職場で」と明記されている
  • 「上司が部下に行う」と明記されている
  • 地位や権利を利用する
  • いじめや嫌がらせ
  • 言葉や態度で精神的に追い込む(モラハラまで含めると)

ですね。

 

BraveAnswer的パワハラ考察

BraveAnswer編集部として、広辞苑の定義によるパワハラを、より深く考察しました。

 

本当に「上司が部下に」だけか

有能で社長や部長の大のお気に入りであるAさんが、その地位を利用して上司である課長Bさんに行ういじめや嫌がらせはパワハラではないのでしょうか。

地位も権威もないおじさん社員を「窓際族」と揶揄することはパワハラではないのでしょうか。

役職的には同じ平社員でも、入社5年目が入社2年目を呼び捨てで呼んだり横柄な態度を取ることは、パワハラではないのでしょうか。

厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」によれば、職場のパワハラとは

同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為

と定義されます。パワハラは、「職場内の優位性を背景に」、立場や役職に関係なく起こりえることなのです。

 

本当に「職場」だけか

「家賃や生活費は俺が払ってるんだから、子育てや家事はお前の仕事だろう」と恫喝することも「お金を払っているという地位利用した配偶者に対する嫌がらせ、精神的に追い込む虐待」に分類される感じがしませんか?

つまり立派なパワハラです。

飲食店で店員に横柄な態度を取る人も「サービスを受ける側という地位や権利を利用している」という点では、パワハラですね。

職場に限らず、家庭でもお店でも、人間関係が生じている空間やコミュニティであれば、パワハラは起こりえます。

 

嫌がらせの定義は?

嫌がらせとは、悪意を孕むもの。「相手が嫌がるだろうという意図を持った人が、相手を嫌がらせる行為」としましょう。

では、相手が嫌がるだろうという意図を持っていない人の行為を、相手が嫌だと感じている場合。

これは嫌がらせなのでしょうか。嫌がらせとは言わないのでしょうか。

 

嫌がらせを、悪意の有無問わず、相手が嫌だと感じていることをする行為と定義するのであれば、「私は、嫌がらせをしていません」という主張は、成立しなくなります。

なぜなら、嫌がらせかどうかを決めるのは、自分ではなく相手側だからです。

 

どこまでがパワハラで、どこまでがパワハラじゃないの?

相手が嫌だと感じる行為をすべて「嫌がらせ」と定義をすると、パワハラの定義も大きく代わります。

職場(や家庭等、コミュニティすべて)で地位や権威がある人が、部下や立場の弱い人に何かをする。それを相手が、嫌だと感じる。

これでもう、パワハラが成立します。

地位や権威がある人が「そんなつもりはなかった」「パワハラをしようという意図は一切なかった」といくら釈明したとしても、受け手が嫌だと感じた時点で、パワハラです。

 

どこまでがパワハラで、どこまでがパワハラではないか。

この問いは、どこまで相手が嫌がって、どこまで相手が嫌がらないか、という問いと同じです。

相手が嫌がるかどうか。

行為そのものに起因するわけではありません。これは、人間関係に起因するものなのです。

 

信頼関係がある人間関係においては、パワハラは起こらない

A部長がBさんに説教をしている。罵詈雑言の限りを尽くし、机をバシバシと叩いている。PCのエンターキーは壊れそうな勢いで叩かれ続けている。

この事象がパワハラであるかどうかは、A部長とBさんの関係性によります。

Bさんがこれを「愛のムチ」と認識しているのであれば、パワハラではありません。同じことをC課長がしたら「パワハラだ」と感じるかもしれません。

 

重要なことなので繰り返しますが、パワハラであるかどうかの判断材料は行為そのものにはありません。その解があるのは、当事者間の信頼関係のみです。

 

日大アメフト事件の問題点

その視点で考えると、日大アメフト事件の問題点は「監督コーチが悪質な行為を強要したこと」ではなく「監督コーチが嘘をついていること」でもなく「監督コーチと選手の間に信頼関係がなかったこと」ということになります。

ただ、もっと根深い問題だなと感じるのは、日大アメフト事件を批判している人々が「自分はパワハラなんてしていない」という前提でいることです。

 

誰もがパワハラの加害者になり得る

今回の記事を書くにあたって、パワハラについて調査し、考察したなかで思ったことは、「パワハラをしないなんて、不可能じゃないか」ということです。

なぜなら、コミュニケーションはリスクのある投資なので、意図が間違って伝わったり、感情に任せて言い過ぎてしまったり、何かしらの理由で真意ではないことを言ってしまったりすることは日常茶飯事だからです。

「自分はパワハラなんてしていない」という前提こそが、最も危険な態度なのです。

 

今日この瞬間はパワハラをしていなくても、次の一言、次の立ち居振る舞いが相手にとってパワハラになる可能性は充分にあります。

日大アメフト部事件のニュースを見て私たちが学ぶべきことは「気をつけないと、自分自身が内田前監督や井上前コーチの立場になることもあり得る」ということです。

私自身、自分の言葉、自分の行動を定期的に点検し続けていこうと思います。

 

【パワハラチェックリスト】

厚生労働省「職場のパワーハラスメントについて」で定義されている職場のパワハラの6類型(身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害)を元に、パワハラに当たりうる行為をより具体化したチェックリストです。ご自身の言葉や行動をチェックする際にご利用ください。

  • 自分はパワハラをしていないと思う
  • イライラするとエンターキーを強打してしまう
  • 部下を吐き捨てるように呼ぶ
  • 職場は「◯◯さん」ではなく「◯◯部長」など役職をつけて呼ぶ文化がある
  • 周囲から見える場所で部下を叱ったことがある
  • 自分は部下と信頼関係を結べている
  • 自分の言葉遣いは丁寧だと思う
  • 自分は部下から慕われていると思う
  • 自分は部下がなんでも言える環境を作っている
  • お酒を飲まない部下は出世に不利だと思う
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