オピニオン

AIでも破壊不可能な埼玉のオヤジのビジネスモデル

1984年生まれ。埼玉県立川越高等学校、早稲田大学社会科学部卒業。リクルート、グーグル日本法人を経て2016年に独立。自社メディア運営をしながら、顧客のマーケティング支援、人材育成、採用支援を行う。専門はマーケティング、広告、営業。

AI時代。それはAIが発達して多くの仕事がAIに代替される時代。

そんな時代が遠からず到来することが予測されている中で、親友から聞いた父親の話がキャリアの観点でとても学びが多く、AI時代を生き抜く上でヒントになるのではないかと思った。

 

そのオヤジの職業は自動車の整備士。この道40年の大ベテラン。長年整備士として企業に勤めた後、独立。埼玉のとある街に生まれ、いまもその街で暮らしている。

地元のサッカー少年団の監督を20年以上続け、卒団生の子どもたちもその親も、みんなオヤジを慕っている。生まれてからずっと住んでいるこの街には、友人が大勢いる。

その仕事のやり方、ライフスタイルが本当にすごい。

 

顧客は全員知った顔

顧客は、友人か顔なじみだけ。それ以外の人の車の面倒は見ないスタンスを貫いている。

サッカー少年団の教え子が大人になって車を持つ年齢になると、オヤジに相談が来るのだ。営業をかけたり、広告を出したりしなくても、ゆるやかに着実に、顧客が増えていく。

 

顧客が知った顔だけであるメリットは融通が効くこと。

1日に働く時間の上限を決めているので、それを超える仕事は請けない。あらかじめその仕切りで顧客との付き合いをはじめるので、顧客も文句を言わない。

顧客は全員近所に住んでいるので、遠出をする必要がない。

緊急時にはすぐに駆けつけられる距離の顧客としか付き合わないことで、顧客も自分も安心感がある。

 

通勤3秒、日が暮れる前から晩酌スタート

職場は自宅の駐車場を改装したガレージなので、通勤時間は3秒。満員電車とは無縁のライフスタイル。スーツを着る必要もなく、自由な服装で働ける。

ランチは3秒で戻れる自宅リビングで。

 

働く時間も自由だ。

大抵は朝はやくから働き、日が暮れる前には愛犬と共に晩酌をはじめる。たまに近くの焼鳥屋に行って、友人とワイワイしながら酔っ払っている。

 

家賃なし、食べ物は人からもらえる

生活コストも劇的に安い。自宅のローン返済は済んでいるので、月々の家賃はかからない。

都心部で暮らす人の最たる支出が家賃であることを考えると、家賃がかからないのはなんとも魅力的だ。

 

更には自分で野菜を育てたり、近所の人からもらったりすることもある。長年同じ地域に住んでいるので、地元のネットワークが確立されている。その為、地域の繋がりを最大限に活かす事ができるのだ。

 

子供は独立しているので、夫婦と犬の生活費だけが必要最低限の生活コストだ。詳細は聞いたわけではないが、月10万円程で済むのではないか。

 

鉄壁の競争優位性

事業の安定性もバツグンだ。

車がないと不便な土地なので、地域の人が車に乗らない未来は想像できない。

車が自動運転になろうとも、整備のニーズはなくならない。車体の異常もAIが感知するようになれば、整備の頻度はむしろあがるかもしれない。

市場規模は大きくないので、大手の参入も考えづらいし、そもそも顧客は友人か顔なじみだけなので、参入障壁も果てしなく高い。

 

サッカー少年団で実の子供のように可愛がっていた子たちが、サービスの質や価格で他の整備サービスに乗り換えることもほとんどないだろう。

身内相手の商売なので、競争原理そのものが働かないのだ。

 

仕事環境も最高

いわゆる「一人企業」なので、上司も自分以外の株主もいない。部下自体いないので、部下のミスや勤務態度にイライラすることもない。

大手取引先に依存するビジネスモデルでもないので、無理難題を要求してくる顧客もいない。会議も査定も接待もない。

 

無償の愛が信用に繋がった

オヤジはなぜ、このような人生を手に入れることができたのだろうか。

たくさん勉強して、よい学歴を手にいれたからだろうか。

一流企業でキャリアを積んだからだろうか。

社会人になっても自己研鑽を怠らず、難しい資格やMBAを取得したからだろうか。

SNSやネットワーキングパーティーを通じて、最新の情報のキャッチアップを怠らなかったからだろうか。

先祖代々、資産を引き継ぐ地元の名士だったのだろうか。

 

すべて違う。

オヤジがこのような人生を手にいれたのは、オヤジが信用を獲得したからだ。

 

特に地元のサッカー少年団の監督を20年以上継続していることが大きいと思う。地域の子供たちに、無償の愛を注ぎ続けた結果、いつしかその愛が信用に代わっていったのだ。

オヤジが20年前、サッカー少年団の監督をやると決めたのは、こんな未来から逆算したわけではないだろう。

 

打算も計算もなく、目の前の子供たちにサッカーを教え続けた。愛し続けた。

その結果が、このキャリアに繋がっているのだろう。親友の話を聞いて私は、そのように感じた。

 

自分にとっての価値を知る重要性

正直に告白すると学生の頃の私は、たくさん勉強して、良い大学、良い会社に入って仕事をバリバリすることが、良い人生だと思っていた。

同じように感じていた人もいるのではないだろうか。

 

ただ実際に社会に出て、いろいろな人と出会い、あらゆる話を聞けたことで、仕事やキャリア、人生に優劣はなく、違いが存在しているだけということに気づいた。

どんな仕事、ライフスタイルを選ぼうとも、自分自身にとって何が価値があるかを知り、その価値に繋がる行動をして、繋がらない行動をしないことが、よい人生なのだと考えを改めた。

 

オヤジはきっと、自分にとって何が大切で何が価値なのか気付き、自分の価値観に従って未来を思い描いて、仕事やライフスタイルの選択をしたのだろう。

難しい言葉を使えば、オヤジは「グランドデザイン」を描き、それに沿って選択をしていったのだ。これは「自分にとっての価値」という人生の本質を見抜き、人生の大局を掴まなければ出来ないことだと思う。

 

親友の父親のキャリアは、学校では教わることができない学びに満ちたストーリーだった。

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