オピニオン

煩悩で探る己のあり方

1984年生まれ。東京都在住。慶應義塾大学環境情報学部卒業。映画、音楽、読書をこよなく愛す編集者。ビジネスについて勉強中。

今年もいよいよ残す所あと少しです。

みなさま、もう大掃除はお済みでしょうか。

 

大掃除という文化は面白いですね。大掃除が生まれたのはなんと平安時代といわれています。1年のススを払いお正月の神様を迎え入れる準備をしていたそうです。

また江戸時代、徳川将軍の大奥では12月13日に「スス払い」を行うという決まりがあったそうで、庶民もそれに倣って年末の大掃除を行っていたようです。

確かに、このような機会がなければ、普段手の届かない所まで掃除する時間はなかなか作れないのではないでしょうか。

1年という区切りがあることで、地続きにつながった時間を一回清算することができるわけです。

もし1年という概念がなければ、きっと私の自宅は、、、。

 

1年という区切りがあることで、掃除できるのは自宅の窓のような物理的なものだけではありません。

 

そうです。

「心」の大掃除も、年末があるからこそ、しやすいことのひとつなのではないでしょうか。

慌ただしい毎日の中では、なかなか心の中を覗き込むことができません。そして、そのように心を放置していると、部屋と同様に払いきれないススが溜まっていくものです。

  • この仕事のこれからに少し不安感があるけれど、このまま続けるしかないのか?
  • 仕事はうまくいっているけど、今後どうしようか
  • 同僚の言動に憤りを感じだけど、どうしようか
  • 家族との時間をもっととりたい
  • 自分のしたいことってなんだっけ

など、良いことも悪いことも少し深いところにある気持ちの問題は、すぐに答えがでないので、どうしても考える優先度が下がってしまいます。根本的な解決をせずに、なんとなくやり過ごしていることも多いのではないでしょうか。

 

まさに、それが心のススです。

 

本当はひとつひとつに対して、問題がでてきた度にじっくり向き合って答えを探りたいものですが、そうそう時間が許す訳でもありません。だからこそ、1年の区切りで「心」も大掃除することは必要なのだと思います。

この1年間にたまった心のススを落として、新たな気持ちで新しい年を迎えることで、もしかしたら来年の今頃「あーあの時大掃除をしていてよかったな」と思うような行動がとれる年になるかもしれません。

 

この機会に、年の最後に心の大掃除について少し一緒に考えてみましょう。

ここで取り上げたいのは除夜の鐘で鎮められるという「煩悩」についてです。

今でこそ年末のひとつのイベントとして行われている「除夜の鐘」ですが、「鐘の音」をじっくり聞くという行為は厳かな気持ちで心を見つめる行為にも感じられます。

 

一説によると「除夜の鐘」には厳しい修行をしていない一般の庶民の煩悩をも取り払う力があるそうです。鐘を聞くことによって、108つの煩悩を鎮めたいというわけです。

 

108つの煩悩は大まかに諸悪の根源とされる3つの煩悩(「三毒」と呼ばれている)に分けることができます。

  • 貪欲(とんよく):執着、必要以上に求める心
  • 瞋恚(しんい):怒り、憎しみ
  • 愚痴(ぐち):真理を知ろうとしない無知な心

です。

「執着」「怒り」「真理を知ろうとしない」これらの煩悩にしっかりと向き合わずにいると負の感情が積み重なっていき心のススになるということです。

煩悩はまさに心のススの素なのです。

そうか。煩悩について知れば、どう手をつけていかわからない心のススの掃除の仕方が少しはわかるのかもしれません。

心のススは除夜の鐘を聞くだけではなかなかはらえないと思うので、煩悩をより具体的に考えてみましょう。

 

煩悩には原因があります。

  • 「執着」には執着の原因
  • 「怒り」には怒りの原因
  • 「真理を見ない」には真理を見たくない原因
  • 「不安」には不安の原因

様々なことが絡み合っている日常生活ですから、諸々の原因となる出来事が身の回りに次々と発生してきます。

直接の原因と見えるものの奥に、さらに大きな原因があるということもあります。

  • 【煩悩】「怒り」を覚える
    ⬇︎
  • 【煩悩の原因】同僚の言動が自分を軽く見ているように感じるから
    ⬇︎
  • 【「原因」の原因】現在同じようなポジションにいる同僚を見ていると自分に自信が持てない
    ⬇︎
  • 【「原因の原因」の原因】自分の成長のための時間を十分に取れていないという不安
    ⬇︎

    ⬇︎

と掘り下げると、多くの場合、直接の原因とまったく関係のない大きな原因や、別の煩悩が見えてきます。

確かに、表面的(直接的)な原因に対処することで、一時的に煩悩は治るかもしれません。ただ、奥にある原因を解決しなければ同じ煩悩は消えることなく別の場面にも現れてきます。

上述の例で見ると、同僚の言動だけをなんとかして正したところで、同じようなポジションの人がいなくなるわけではないので、別の人が現れた時にはまた同じようなことが起こるかもしれません。

 

あなたは今、本当に根本的な原因と向き合えているでしょうか。

「心の掃除」はこのような煩悩の原因をどう見つめて、どうあつかうか、ということにつながるものなのです。

 

実は「心の掃除」は昔から世界各地で様々な形で行われてきています。

 

例えば、瞑想。

瞑想は心を鎮めて、何かに集中したり、無心になるためのひとつの技法です。

瞑想をすることで、心の中の不浄なものを無にしていくのです。

インドでは、紀元後4-5世紀には「ヨガ」(あのヨガです!)と呼ばれる瞑想の技法が体系づけられており、そのずっと以前、仏教の始祖であるブッダが悟りを開いたのも、瞑想の技法によるものだとも言われています。

そこから派生してきた日本の座禅なども瞑想の一種です。

ちなみに「断捨離」という言葉をよく聞きますが、この言葉も「ヨガ」の〈断行/捨行/離行〉から来ているそうです。

 

他には、「お祈り」も、瞑想に近い心の掃除の方法と言えるでしょう。

キリスト教やイスラム教などでは古くから「祈り」の儀式が行われてきました。

キリスト教の「懺悔」によって許しを得る行為の心の掃除ですね。

 

あるいは、日本のお葬式などでお経が唱えられているのも、一種の心の掃除なのかもしれません。

このように、心の掃除は古くから現在に至るまで世界各地に存在し、人間にとって欠かすことのできない行為であることがわかります。

 

共通していえることは、煩悩の原因がない状態を意図的に作っていることです。

瞑想においては、集中することで外界の情報を遮断していきます。

お祈りやお経も同じです。

教会やお寺という俗世から離れた場所で行うことには大きな意味があるのです。

 

「心の掃除」の方法として、「瞑想」「座禅」「お祈り」を行うことを挙げました。

それらは、まず外界からの情報をいちどせき止め、自分の中へ潜って何があるのかを見つめていく行為です。

いいかえると「空白の時間をつくる行為」とでもいいましょうか。良いことからも悪いことからも一旦離れた空白ですね。

 

そのように考えると、ネットが発達した現代は身の回りに煩悩(心のスス)の原因が溢れかえっています。良くも悪くもスマートフォンは簡単に外界からの影響を受けることができますよね。

メールにしても、常に誰かとつながっている状態です。これらの原因から一度離れてみるというのは至難の技かもしれません。

 

あなたがここ最近「空白の時間」を持ったのはいつですか?

 

ネットやつながりから短時間でも離れて煩悩(心のスス)の原因を遮断した「空白の時間」を持つだけでも、「瞑想」「お祈り」同様に「心の掃除」につなげていくことができます。

なかなか難しいのであれば、いっその事この年末年始、短時間でもメールのアプリごと消してしまうのもひとつの手です。

強制的に外界から離れた状況を作れば、自分の内面を見つめるしかなくなるということです。年末年始という区切りだからこそ、思い切ってできることがあるかもしれません。

 

「空白の時間」は、自分の中に堆積した煩悩(心のスス)を見つめるきっかけになります。

そして煩悩(心のスス)見つめることができれば、それらを整理し、奥の奥にある根本的な原因を見つけるための道が見えてくるのです。

その時間は、あなたをさらに広い場所へと連れて行ってくれるヒントを与えてくれるはずです。

 

そして、ある程度、根本的な原因を掘り下げることができれば、あとは現実の行動で解決するのみです。

 

例えば、先ほどの同僚への「怒り」という煩悩も根本的な原因を見つめ直すことで、溜め込むのではなく自分の成長へ力を向けることができるようになるかもしれません。

心を見つめずに「怒り」という煩悩に振り回され心にススを貯めることと、心を見つめて根本的な原因のひとつである自分の成長のために行動できるようになることでは大きな違いになると思います。

 

つまり「瞑想」「お祈り」でなくでも、自分の行動で自分の中の煩悩(心のスス)をはらう=心の大掃除をすることができるということです。

心の大掃除は今後の行動にもポジティブな影響を与えてくれるはずです。

 

今年の煩悩(心のスス)は今年に置いて、来年はまっさらな心で自分の本質に向けて行動できますように。

 

 

 

本年のBraveAnswerのオピニオンは今回が最後です。この1年間BraveAnswerにお付き合いいただきありがとうございました。

来年のオピニオンは1月11日(木)から配信予定です。どうぞ来年もよろしくお願いいたいます。

 

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