オピニオン

「ひらめく」ための離れる勇気

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。
慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。
卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。
2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から
様々なビジネスの知見を得る。
現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。
冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。

「今、アイデアがほしい」と会議中に思ったことはありませんか?

 

〜会議冒頭〜

「この案件どうしましょうか?」

「とりあえずみんなでアイデアを出してみよう。」

「かしこまりました!」

いわゆる「ワイガヤ」ってやつです。自由な雰囲気のもとドンドンいろんなアイデアが浮かんできます。

 

が!

 

〜会議1時間経過〜

「いや〜、煮詰まっちゃいましたね。なんかいいアイデアないっすかね?」

「まぁ出ないものは出ないな。。。」

「はい。。。」

 

〜さらに時間だけが経つ〜

おもむろに

「一旦、寝かせますか!?」

 

〜何も決まらず会議終了〜

 

みなさんも、こんなやりとりをしたことがあると思います。焦っても何も出てこない。しかし、デッドラインが待ってくれるわけでもない。

 

そんな状況を救ってくれる救世主がいます。

そう、「ひらめき」です。「ひらめき」はそんな壁を一瞬で破る力を持っています。上記の流れを料理に例えるならば、どんな素材にでもバシッと味を決めてくれる「魔法のスパイス」のようなものです。

 

そうは言っても「魔法のスパイス」はそう簡単には降りてきてはくれません。今回はそんな「ひらめき」について考えてみましょう。

 

天才数学者アルキメデスも「ひらめき」に助けられた

すばらしい考えなどが瞬間的に思い浮かぶ「ひらめき」は、人類の歴史を開く大発見の場においても、大きな演出をしています。

天才数学者アルキメデスの「エウレカ(Eureka!)」という言葉をご存知でしょうか。「エウレカ」とは古代ギリシア語で「私は発見した!」という意味を持つ言葉です。

 

「王冠は純金か」

アルキメデスは、古代ギリシアの数学者・物理学者です。

地元の王様であったヒエロン2世は純金製といわれる王冠を献上されました。しかし、その王冠には銀が混じっているとも噂されます。そこで、王様はアルキメデスにその王冠が本当に純金製なのか(銀が混じっていないか)確かめる方法を考えてくれと依頼しました。

当時の技術では王冠を溶かさずに純金かどうか確かめる方法がありませんでした。アルキメデスは頭を悩ませます。どうしたら純金であることを証明できるのか。

 

数日経っても良い方法は思い浮かびません。

ですが「ひらめき」はふとした瞬間に訪れます。それは彼がお風呂に入っている時でした。

 

湯船に浸かった時に水位が上昇するのを見て、「そのお湯が上昇した分の体積=自分の体がお湯に浸かった分の体積」ということを発見します。

 

(↑クリックで拡大)

金と銀は質量が違うので同じ重さでも、銀が混じっていると王冠の体積は大きくなってしまいます。つまり、同じ重さの「純金のインゴット」と「王冠」を水に沈めて、増えた分の水の量を測れば体積の違いがわかるのです。

王冠が純金であれば、増えた分の水の量は同じになるはずです。

 

ふとした瞬間に訪れる「ひらめき」

彼はこの原理をお風呂の中で発見し「エウレカ!」と叫びました。

仕事場で考えて抜いている時ではなく、お風呂に入るというふとした瞬間に気づいたという、まさにひらめきの瞬間をとらえたエピソードといえるでしょう。

 

つくづく「ひらめき」の不思議さを感じます。

論理的な積み上げではない経路からふっと出てくるアイデアが、それまでの論理的な枠組みの問題を解決し、さらに一瞬にしてその枠組みを飛び越えて新しい扉を開いてくれるのです。

 

「ひらめき」はどこからやってくるのか

中国、北宋時代の政治家であり、名文家としても知られる欧陽脩(おうようしゅう)は「三上(さんじょう)」でひらめきは生まれると言っています。

  • 馬上(ばじょう)
  • 枕上(ちんじょう)
  • 厠上(しじょう)

「馬上」は、今でいえば車や電車など移動中ということです。「枕上」は(寝ようとするときではなく)朝起きたとき、「厠上」はトイレです。

どれも仕事から離れたリラックスした状態を思い浮かべられます。

 

多くの著名人たちが「朝に仕事をする」

特に枕上(朝起きた時)は興味深いものがあります。

世界の著名人たちに朝型の人が多いということです。

  • スティーブ・ジョブズ(元Apple CEO)
  • ティム・クック(Apple CEO)
  • イーロン・マスク(テスラモーターズ CEO)
  • 村上春樹(小説家)
  • フランク・ロイド・ライト(建築家 近代建築の3大巨匠の1人)

ざっと挙げただけでもこれだけの人物がいます。

各分野で突出した功績を残している人物がこぞって朝に仕事をしているのです。

彼らのすごさはその人物個人の能力の高さもありますが、「朝に仕事をする(枕上)」という習慣自体にも効果があると言ってもいいのではないでしょうか。

 

脳科学では記憶は寝ている時に再構成されると言われています。1日考え尽くした脳を睡眠で休ませることで再構成され、朝リフレッシュした状態になるのです。

朝仕事をすることは脳科学的にも合理的なものだということがわかってきています。

 

それでもなかなか訪れないのが「ひらめき」

では、欧陽脩のいう「三上」のようにリラックスさえすれば、必ず「ひらめき」がどこからかやってくるかといえばそうではありません。

脳科学では、「ひらめき」はニューロンの同時発火という説明の仕方をされることが多いですが、なぜ同時発火が起こるのかはわかっていません。

残念ながら、必ず「ひらめき」がやってくるというような確実な方法はわかっていないのです。

 

ただ、ひらめきに必要な要素はあります。これらを押さえておくことで問題を解決するための「ひらめき」を逃さない準備をすることができます。

 

ひらめきに必要な要素

ひらめきに必要な要素とはなんでしょうか。

 

とことん考えている状態

まず、前提として対象について「とことん考えている状態」が必要です。当然ですが知識がなく考えたこともないところにはひらめきは訪れません。

アルキメデスは王冠の測り方について「とことん考えた」結果、お風呂の中のふとした瞬間に「ひらめき」を得ることができました。

まさにスティーブ・ジョブズ氏のいう「コネクティング・ザ・ドッツ(点と点をつなぐ)」です。「ひらめき」を得て、振り返ってみると過去の学んだ複数の知識が点となってつながっているのです。

 

今、自分が向き合っている問題についてとことん考えている状態にあることが「ひらめき」に必要なひとつ目の要素です。

 

とことん考えている状態とは?

では、とことん考えた状態とはどんな状態のことを言うのでしょうか。

 

物事がスムーズに進んでいる時は、どんどん思考がアイデアを生み出しているのでまだまだ考え続けることができます。そのあとの、まさに今「ひらめきが欲しい」と思っている時点が「とことん考えている」状態です。

「ひらめき」を心から欲している時は「ひらめき」が降りてくる準備ができた状態なのです。

 

しかし、もう「ひらめくしかない!」と思っていてもなかなか訪れてくれないのが「ひらめき」です。いつ来るかわからない「ひらめき」をそのまま頭をフル回転させて待ち続けるのは得策ではありません。

 

そこで、欧陽脩の「三上」です。つまり、「そこから離れる」ことが次の一手です。

 

そこから離れる勇気

米グーグルには「20%ルール」という社内ルールがあります。勤務時間の20%は通常の業務を離れてその人自身が取り組みたい事業をしていいというものです。1週間の中で1日は自由な発想でその人が面白いと思った発想を試すことができるのです。

「20%ルール」は現在でこそ、あまり聞かなくなりましたが、「Gmail」「Googleマップ」「Googleニュース」など現在のグーグルの主要サービスには「20%ルール」の中から生まれてきた成果も少なくありません。

常に革新的な姿勢を求められるグーグルにおいて本業から離れた時間に大きな成果が生まれているのは興味深い現象です。

 

またグーグルは社内にビリヤードなどの遊び場があるということも有名です。職場に遊び場を作ることで、企業をあげて頭をリフレッシュさせる場を作っているのです。

 

リフレッシュで言えば「ほぼ日」で有名な糸井重里氏は、東京を拠点に仕事をしていますが、数ヶ月に一度、京都の別宅にリフレッシュに行くそうです。忙しい中で、あえて仕事から離れる時間を作っているのです。その中で生まれているアイデアもたくさんあるということからも、仕事から離れる時間を大事にしていることがわかります。

 

根詰めて集中していると、そのことから離れられなくなってしまいがちですが、あえて「そこから離れる」勇気を持つことが「ひらめき」を生んでいるのです。

 

つまり、「ひらめき」に必要なもうひとつの要素は「そこから離れる勇気」です。

 

「ひらめき」が生まれる準備をしておくことはできる

「ひらめき」を確実に生み出すことはできませんが、

  • とことん考えている状態
    +
  • そこから離れる勇気

を準備することはできます。

 

何か簡単に解けない問題にあたったときには、まず必要な知識を入れられるだけ入れてとことん考える。そしてそれでもダメな時は、遊びに出かけたり、寝てみたり、美味しいものを食べたり、そこから離れて自分が楽しいと思うことを思う存分に楽しむ。

この2つの要素を自分で用意しておくことが、どこかに漂っている「ひらめき」を逃さずつかまえるために必要な最低限の下準備なのです。

 

特に心に余裕を持っておくことは大切なことです。「ひらめき」が訪れる部屋、つまり「心の余裕」を心の中に作っておくことは意外と忘れられがちなのです。

 

もしあなたが、今解けない問題を抱えているのならば、どこかに「ひらめき」はあるはずです。諦めてしまう前に、もう一度そのため必要な上記の準備をしてみましょう。

万能薬ではありませんが、少なくとも自分の行動については納得できる結果になるはずです。

 

余裕がないと「ひらめき」は扉をノックすらしてくれない

「ひらめき」の敵はルーティンです。何も考えずにいつも通りにしていても「ひらめき」はやってきません。

とことん考えて、試してみる。仕事で行きづまったら、思い切って楽しいと思うことをする。ルーティンから抜け出してみることは脳の活性化を促し、より「ひらめき」やすい状態を生み出します。

 

さらに「ひらめき」の生まれやすい脳内には大量のドーパミン(快感の神経伝達物質)が多いこともわかっています。つまり、「ひらめき」の準備をすることは「快」が生まれやすい脳を作ることともいえます。

特に「遊び」など楽しいからやりたいと思えることは、誰から命令されることでもなく、自分の「快」を求めるものでもあるのでドーパミンを増やす効果があります。

 

「ひらめき」は「快」が大好きなのです。「とことん考える」という脳に負荷がかかることだけでは「ひらめき」は扉をノックさえしてくれません。

仕事や問題から離れて何も考えず「心の余裕」を持つことは実は生産的なことなのです。

 

「遊び」で作った「快」が、「仕事」の「ひらめき」を生み出し、それがまた「快」を生む。人がイキイキしてくるとはこのようなループに入ることなのかもしれません。

行き詰まったらそこから離れて息を抜いてしまいましょう。思い切って息を抜くことで心に余裕が生まれます。

気づけば「ひらめき」はあなたにの目の前に訪れるかもしれません。掴んで離さないようにしましょう。

 

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