オピニオン

クリエイティブとは価値を見いだす力

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。 慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。 卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。 2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から 様々なビジネスの知見を得る。 現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。 冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。

価値を感じないところに価値を見いだす

自分の希望通りに物事が進むことは少ないものです。私も、総合商社に入社した当初はそんな状態でした。

商社に入り営業として世界を駆け回りながらバリバリ働くという希望を抱きながら入社しましたが、最初の配属先は会計部隊でした。

 

誰しもが、希望通りの場所で仕事ができるとは限りません。しかし、そんな中でも仕事をしなければならないのが現実です。

理想と現実にギャップがあった場合、どのように折り合いをつければいいのでしょうか。

 

望まない場所にいる人へ

池上彰氏を多くの人がご存知だと思います。

彼は記者としてNHKに入社し、日本や世界を揺るがす多くの事件や事故を最前線の現場で取材して世に送り出してきましたが、1994年、44歳の時に「週刊こどもニュース」というこども向けのニュース番組のキャスターに指名されます。

「週刊こどもニュース」のキャスターへの指名は、最前線の現場で取材をすることが華である記者にとっては思い描いていたキャリアから外れた辞令ともいえるものでした。

 

しかし、そこで池上彰氏は与えられた仕事に今までにない価値を見いだしました。彼はこどもにもわかるように説明する能力を培い、ジャーナリズムの本質でもある「伝える」という点に特化した、現在のスタイルを確立して、2005年に独立し一躍時の人となりました。

 

自分の望まない場所において、その環境をプラスに変えたのです。

現在では誰もが知っているニュース解説者として、他の追随を許さない人物と認められています。彼が与えられた仕事をルーティンワークとして淡々とこなしていたら、今の「池上無双」はいませんでした。視点を変え今までにない価値を創造すること、これが「クリエイティブ」の本質ではないでしょうか。

 

あなたの仕事もクリエイティブにできる

あなたはクリエイティブな仕事というとどんなイメージを持っているでしょうか。

テレビ、広告宣伝といった業界、ゲームプログラマーやデザイナーといった職種は、なんとなくクリエイティブなイメージを持っていると思います。実際に求人情報においてもこれらの職種は「クリエイティブ系」などとカテゴライズされています。

 

自分に仕事にクリエイティブさは関係ないと感じている方もいると思います。ここで、少し掘り下げて一緒に考えてみましょう。

 

小学館の大辞泉によるとクリエイティブ(創造)の定義は以下の通りです。

 

そう‐ぞう【創造】

①新しいものを初めてつくり出すこと。

②神が宇宙・万物をつくること。

↔︎(反対語)「模倣」

 

模倣は「他のものまねをすること。似せること。」という意味です。

 

テレビや広告、ゲーム、デザイナーなどクリエイティブ系と呼ばれる仕事の中にも、他のものをただ、まねをしているものがあります。

例えば、テレビ番組だと、「昔の焼き直し」「二番煎じ」と思う番組もありますね。一般的に面白くないと思われるテレビ番組はルーティン化に陥っている可能性があります。

 

つまり、クリエイティブの本質は、職種や仕事そのものにあるわけではなく、仕事や物事への向き合い方・姿勢にあるのです。

言いかえると、「ものを作る仕事」がクリエイティブなのではなく、「新しいものを作ろうとする姿勢」こそがクリエイティブだということです。

 

新しいものを作ろうとする姿勢があれば、業界、職種に関係なく、どんな仕事であっても「クリエイティブに」仕事することができるのです。

あなたが今している仕事も「クリエイティブに」することができるといえるのです。

 

聖徳太子だってクリエイティブ

例えば、こんなこともクリエイティブにできるのかということに政治があります。具体的にものを作るわけではないこの分野でもクリエイティブは発揮されます。

歴史上の偉人にしても、「クリエイティブに」仕事をすることで、世界を新しい時代へと進めています。政治と「クリエイティブ」と聞いて意外に思う方もいるかもしれませんが、例えば、聖徳太子も政治の分野で「クリエイティブに」仕事した人物です。

 

聖徳太子は、当時の日本では先進的だった「仏教」という新しい知識を積極的に取り入れ、行政のトップとして自ら新しい仕事を切り開いていきました

新しい仕事とは

  • 人事制度の確立
  • 組織運営の基本理念の制定

です。

当時の日本はあたかもベンチャー企業が上場を目指すような新興国家だったのです。足りなかった内部運営に関する諸々の制度を導入していったのです。

 

人事制度の確立

当時の日本は、人事制度に対して確立したルールがありませんでした。地位やポジションをめぐって武力衝突や暗殺、政治的スキャンダルなど争いが絶えませんでした。これを聖徳太子は冠位十二階という制度を導入し、ルールの明確化を図ったのです。

現代企業風にいうと、ルールに基づく明確で公平な人事制度です。

聖徳太子は、今までになかった斬新なスキームを、当時の日本にいち早く取り入れた人物といえます。

 

組織運営の基本理念の制定

当時の日本では、武力にものをいわす豪族が力を持っていました。日本国内で皇位継承をめぐって豪族が対立していた時代です。しかし、中国大陸や朝鮮半島の国際情勢の混迷化が増す中、日本も力を合わせる必要に迫られました。

そこで、聖徳太子が考えたことが十七条憲法の導入です。現代企業でいえば、これは「企業理念」を明確化したということにあたります。

日本は、この理念を基に運営していくと明確にすることで、日本をまとめようと考えたのです。

こちらも当時の日本にはない、斬新な統治方法でした。

 

この2つが導入されたのは、それぞれ603年、604年のことです。

旧態依然とした時代を切り開いていく聖徳太子は、まさに「クリエイティブに」仕事をしたと言えるでしょう。過去の歴史は、今までになかったものを創り出し世界を変えていったということの繰り返しなのです。

 

会計だってクリエイティブ

私の場合も「クリエイティブに」仕事をすることを心がけました。

冒頭でも述べたように新卒で総合商社の会計部隊にいました。どちらかといえば会計にクリエイティブなイメージはない職種ですね。

入社当初は、当時は会計や経理の知識を一切持っていませんでした。業務・仕事の遂行のために必要な知識は当然勉強しなければなりません。しかし、教科書に書かれていない新しい事態や問題にどのように対処していくかは自分で考えていくしかなかったのです。

さらに、当時、総合商社は事業内容を大きく変化させていた最中でした。そのため過去の延長線上に仕事の答えがあるわけではなく、業務効率化のための「新」システムや「新しい」会計基準の導入などが求められていました。

一見、クリエイティブのない会計の仕事であっても、今までになかったものを生み出すための力が求められていたのです。

 

業務フローの改善だってクリエイティブにできる

私の場合は、少しでも業務を効率化すべくワークシートや業務フローの改善に取り組みました。

業務効率化に当たって私は現場でシステムを実際に使っている人にヒアリングすることにしました。実際に使っている人が使いやすいものを作らなければ本当の効率化にはならないと考えたのです。

そこで集まった意見から、ある時は最小公倍数、ある時は最大公約数を求め、その結果、自分の工夫が反映された新しい作業フローを確立することができました。

ルーティンに陥らず、自分なりの新しい工夫を取り入れようとした姿勢が、他部署も含めた信頼や協力を獲得することにつながったのです。

 

私の中でも「クリエイティブに」仕事を進められた経験のひとつだったといえます。

「クリエイティブに」仕事をすることは、仕事を主体的に行い自分のものにすることでもあるので、仕事自体に面白みを感じることもできました。

 

個人的なレベルでも歴史的なレベルでも「クリエイティブに」仕事をすることは望ましい居場所を自分で作っていくことといえます。

 

自分の手で働き方改革を

現在「働き方改革」として政府は国民全体の生産性を上げるように政策作成を進めています。

しかし、働くのは自分です。政府や上司などに決められた仕事のやり方にただ従うだけではクリエイティブから離れた姿勢ではないでしょうか。

仕事を自分の望むものにしていくためには、自分自身をクリエイティブな姿勢に持っていく必要があります。

 

すべての事が、必ずしも自分の希望通りに行くわけではありません。常に自分の望む世界と他人の望む世界の間で生きていかなけばいけないのが現実です。それでも、あなたの望む世界を主体的に創っていかなければ状況は変わりません。自分自身の「働き方改革」をすることをオススメします。

難しく考える必要はありません。今の業務の中に、自分なりの価値を少しでも付け加えるのです。目の前の業務を自分が楽しくする、やりやすくなるようにどんな小さなことでもいいので自分の手で何か工夫してみればいいのです。

 

「クリエイティブに」仕事をしよう。その先にはきっと今までになかった世界が待っているはずです。

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