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2017.8.21
2017.8.21
損益計算書とは、企業の一定期間の経営成績を表す決算書です。
(一定期間=1年や四半期など)
とも呼ばれています。
基本的な見方はこちらの記事にわかりやすくまとまっていますのでご覧ください。
今回はトヨタ自動車を軸に、損益計算書からどんな情報が読み取れるのか具体的に見ていきます。
まずは、企業の構造を理解していきましょう。
多くの大企業は、
などという構造を持っています。
(子会社と関連会社をまとめて「関係会社」といいます)
決算では「単体決算」と子会社等を含めた「連結決算」がありますが、通常、決算といえば「連結決算」のことを指します。
日本を代表するトヨタ自動車の場合は、最終的に自動車を売っていますが、
など、主に自動車を作って売るために必要な事業を行っている子会社を持っています。
そのような企業の構造も決算書から見てとることができるのです。
決算書を見ていく上での基本的な見方でもあるのでひとつずつ見ていきましょう。
子会社とは、基本的に親企業が株式を50%超保有し、支配している企業のことです。
また支配力の強さで子会社にも以下のような段階があります。
子会社の決算はそのまま本体の連結決算に計上されます。
また、例えば「80%子会社」では子会社の利益の80%は親企業のものですが、残りの20%は親会社によって支配されていないので、その分の損益は親会社の決算から引かなければいけません。
その本体の支配を受けていない20%分の損益は
という項目で引かれます。
また、親会社の株式保有が20%~50%の重要な影響力を持っている「持分法適用会社」というものがあります。
子会社ほどの支配力はありませんが、
などの様々な理由から本体企業の影響力がある企業です。
持分法適用会社の損益は、子会社とは違い本体の連結決算にそのまま計上はされず
という項目で、株式保有割合に応じた損益を計上します。
これは持分法投資損益の一行だけで損益を計上するので、「一行連結」とも呼ばれています。
また、株式保有割合が20%未満の会社からの利益取り分は
という項目で計上されます。
受取配当金では、配当金として現金の受け取りが確定になったタイミングで収益を認識します。
損益計算書からは、現在の会社がどのように稼いでいるかがわかります。
例えば、前年に比べて売上が下がった場合に、数字上でどこがネックになっているか把握することができます。
商品のトレンドは別として、売上が下がり続けないための戦略を立てるために損益計算書を理解することが必要だということがわかると思います。
実際に2017年3月期のトヨタ自動車の決算を例に見ていきましょう。
トヨタ自動車は日本を代表する企業です。
トヨタ自動車は日本を代表する企業として、そのPLも日本の優良企業を代表するような内容になっています。
しかし、すべての企業が同じようなPLの内容ではありません。
他の企業を比較をしながら詳しく見ていきましょう。
科目 | 2016年3月期 | 2017年3月期 |
---|---|---|
A.売上高 | ||
売上高合計 | 28兆4031億円 | 27兆5971億円 |
B.売上原価並びに販売費及び 一般管理費 | ||
売上原価並びに販売費及び 一般管理費合計 | 25兆5491億円 | 25兆6028億円 |
①営業利益 (A+B) | 2兆8539億円 | 1兆9943億円 |
C.その他の収益・費用(△) | ||
その他の収益・費用(△)合計 | 1294億円 | 1994億円 |
D.税金等調整前当期純利益 | 2兆9833億円 | 2兆1938億円 |
E.法人税等 | 8782億円 | 6289億円 |
F.持分法投資損益 | 3290億円 | 3620億円 |
G.非支配持分帰属損益 | △1215億円 | △958億円 |
②当社株主に帰属する 当期純利益 | 2兆3126億円 | 1兆8311億円 |
(※1億円以下は端数として切り捨てています。)
純利益(②)は、売上高(①)と税金などのその他の金額を合わせたものです。
(②=①+C+D+E+F+G)
トヨタ自動車は27兆を超える売上高、約2兆円の営業利益を誇っています。
前年からは減少してますが、規模感からすれば大きな減少ではありません。
トヨタは優良な経営を維持しているといえます。
トヨタを基準として売上と営業利益という観点で他の企業と比較してみましょう。
世界を代表するアパレルブランドのバーバリーの日本代理店であった三陽商会は、バーバリーの日本での代理販売事業を2015年をもって終了しました。
バーバリーとの契約更新が行われなかったことが原因です。
2015年12月期 | 2016年12月期 | |
---|---|---|
売上高 | 974億1500万円 | 676億1100万円 |
営業利益又は営業損失 | 65億7700万円 | △84億3000万円 |
(三陽商会2016年12月期有価証券報告書より)
以上のように数字としてもバーバリーの問題はしっかりと表されています。
また、事業の状況という部門でも文章としてバーバリーの契約終了について書かれています。
このように、経営上の問題は決算書に必ず表現されていくということを覚えておいてください。
どちらも大打撃となる問題を抱えていますが、営業損益自体は黒字を維持しています。
タカタ(2017年3月期) | 東芝(2017年3月期) | |
---|---|---|
営業損益 | 389億5800万円 | 4兆7335億4600万円 |
特別損失 | △655億100万円 | △1兆2801億円 |
当期純損失 | △795億8800万円 | △9656億6300万円 |
(タカタ、東芝それぞれの2017年3月期有価証券報告書より)
しかし、決算書には必ず企業の問題は数字として表現されているのです。
それぞれ
の項目で大きな損失を計上しています。
営業損益だけを見ても、企業の状態がわかるわけではない例といえます。
営業損益だけで企業を判断しないように注意しましょう。
逆に、大きな赤字を黒字に戻したのがシャープです。
数字を見てみましょう。
2016年3月期 | 2017年3月期 | |
---|---|---|
売上高 | 2兆4615億8900万円 | 2兆506億3900万円 |
売上原価 | 2兆2282億7700万円 | 1兆6667億8400万円 |
売上総利益 | 2333億1200万円 | 3838億5400万円 |
販売費及び一般管理費 | 3952億7900万円 | 3214億円 |
営業利益又は営業損失(△) | △1619億6700万円 | 624億5400万円 |
(シャープ2017年3月期、有価証券報告書より)
前年と比較すると売上高自体は下がっていますが、前年の営業損失から約624億円の黒字に戻しています。
上記の数字をみると
のコストが下がったことが要因だということがわかります。
シャープの例でも、営業改善へ施策が行われたことが端的に数字として表現されているのです。
このように売上高と営業利益だけをみても企業ごとにさまざまな情報が含まれていることがわかったと思います。
トヨタ自動車の祖業である豊田自動織機の収益構造も一見の価値があります。
トヨタ自動車はもともと、豊田自動織機で得た資金で創業された会社です。
その関係から、豊田自動織機は現在もトヨタ自動車の株式を6.93%保有しています。(2017年3月31日現在)
2017年3月期の豊田自動織機の損益計算書を見ると、金融収益として約640億円の計上があります。
当期利益が1375億6500万円なので、利益の中でも金融収益が、大きな割合を占めているのがわかります。
この金融収益のほとんどが、トヨタ自動車からの受取配当金なのです。
特殊なケースではありますが、損益計算書から企業間の関係が読み取れる例といえます。
トヨタ自動車の損益計算書をスタート地点として、さまざまな企業を読み取れたと思います。
まだまだこの記事では説明しきれないほどの情報が損益計算書には隠れています。
企業の情報を知りたいと思った時には、損益計算書をはじめとして、財務三表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)を読み込むことをお勧めします。
気になる数字があれば、その数字の背景を探るとさらにさまざまな情報が集められると思います。