損益計算書(PL)を読み込む!トヨタ自動車のPLから見えるもの

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。 慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。 卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。 2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から 様々なビジネスの知見を得る。 現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。 冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。
損益計算書(PL)にはたくさんの情報が記されています。数字の羅列でわかりにくいと思う方もいるかもしれませんが、数字の意味がわかると言葉では伝えられない企業の情報が見えてきます。さまざまな企業の経営の構造が数字からわかるのです。最近では東芝やタカタなどがニュースになっていますが、企業の問題点なども数字としてしっかりと損益計算書に表現されています。この記事では損益計算書(PL)をより深く読むための情報をまとめました。

損益計算書(PL)とは

損益計算書とは、企業の一定期間の経営成績を表す決算書です。

(一定期間=1年や四半期など)

 

  • PL(Profit and Loss statement)

とも呼ばれています。

基本的な見方はこちらの記事にわかりやすくまとまっていますのでご覧ください。

 

今回はトヨタ自動車を軸に、損益計算書からどんな情報が読み取れるのか具体的に見ていきます。

まずは、企業の構造を理解していきましょう。

 

 

「連結」と「子会社」と「持分法適用会社」

多くの大企業は、

  • 親会社(単体)
  • 子会社
  • 関連会社

などという構造を持っています。

(子会社と関連会社をまとめて「関係会社」といいます)

 

決算では「単体決算」と子会社等を含めた「連結決算」がありますが、通常、決算といえば「連結決算」のことを指します。

 

日本を代表するトヨタ自動車の場合は、最終的に自動車を売っていますが、

  • 部品を作る子会社
  • 販売に関係する子会社

など、主に自動車を作って売るために必要な事業を行っている子会社を持っています。

 

そのような企業の構造も決算書から見てとることができるのです。

決算書を見ていく上での基本的な見方でもあるのでひとつずつ見ていきましょう。

 

子会社

子会社とは、基本的に親企業が株式を50%超保有し、支配している企業のことです。

 

また支配力の強さで子会社にも以下のような段階があります。

  • 100%子会社(完全子会社):親会社が株を100%保有して、完全な支配下にある
  • 50%超子会社:親会社が株を50%超保有して、完全ではないが重要な影響力を持っている

 

子会社の決算はそのまま本体の連結決算に計上されます。

 

また、例えば「80%子会社」では子会社の利益の80%は親企業のものですが、残りの20%は親会社によって支配されていないので、その分の損益は親会社の決算から引かなければいけません。

 

その本体の支配を受けていない20%分の損益は

  • 非支配持分帰属損益

という項目で引かれます。

 

持分法適用会社(関連会社)

また、親会社の株式保有が20%~50%の重要な影響力を持っている「持分法適用会社」というものがあります。

 

子会社ほどの支配力はありませんが、

  • 本体から役員に出向している
  • 重要な商品の取引がある
  • 資金面での関係がある

などの様々な理由から本体企業の影響力がある企業です。

 

持分法適用会社の損益は、子会社とは違い本体の連結決算にそのまま計上はされず

  • 持分法投資損益

という項目で、株式保有割合に応じた損益を計上します。

 

これは持分法投資損益の一行だけで損益を計上するので、「一行連結」とも呼ばれています。

 

受取配当

また、株式保有割合が20%未満の会社からの利益取り分は

  • 受取配当金

という項目で計上されます。

 

受取配当金では、配当金として現金の受け取りが確定になったタイミングで収益を認識します。

 

損益計算書からわかること

損益計算書からは、現在の会社がどのように稼いでいるかがわかります。

  • 会社の商品がどの程度売れているのか
  • 収益構造はどうなっているのか(費用がどのくらいかかっているのか)
  • 保有している資産からのフロー
  • 関係会社からの利益(損失)
  • 最終的に残った利益(損失)

例えば、前年に比べて売上が下がった場合に、数字上でどこがネックになっているか把握することができます。

商品のトレンドは別として、売上が下がり続けないための戦略を立てるために損益計算書を理解することが必要だということがわかると思います。

 

 

トヨタ自動車の損益計算書から読み解く

実際に2017年3月期のトヨタ自動車の決算を例に見ていきましょう。

トヨタ自動車は日本を代表する企業です。

 

トヨタ自動車は日本を代表する企業として、そのPLも日本の優良企業を代表するような内容になっています。

しかし、すべての企業が同じようなPLの内容ではありません。

 

他の企業を比較をしながら詳しく見ていきましょう。

科目 2016年3月期 2017年3月期
A.売上高
 売上高合計 28兆4031億円 27兆5971億円
B.売上原価並びに販売費及び 一般管理費
 売上原価並びに販売費及び 一般管理費合計 25兆5491億円 25兆6028億円
①営業利益 (A+B) 2兆8539億円 1兆9943億円
C.その他の収益・費用(△)
  その他の収益・費用(△)合計 1294億円 1994億円
D.税金等調整前当期純利益 2兆9833億円 2兆1938億円
E.法人税等  8782億円 6289億円
F.持分法投資損益  3290億円 3620億円
G.非支配持分帰属損益  △1215億円 △958億円
②当社株主に帰属する 当期純利益  2兆3126億円 1兆8311億円

(※1億円以下は端数として切り捨てています。)

 

純利益(②)は、売上高(①)と税金などのその他の金額を合わせたものです。

(②=①+C+D+E+F+G)

 

 

売上と営業利益

トヨタ自動車は27兆を超える売上高、約2兆円の営業利益を誇っています。

前年からは減少してますが、規模感からすれば大きな減少ではありません。

トヨタは優良な経営を維持しているといえます。

 

トヨタを基準として売上と営業利益という観点で他の企業と比較してみましょう。

 

バーバリーを失った三陽商会

世界を代表するアパレルブランドのバーバリーの日本代理店であった三陽商会は、バーバリーの日本での代理販売事業を2015年をもって終了しました。

バーバリーとの契約更新が行われなかったことが原因です。

 

2015年12月期 2016年12月期
売上高 974億1500万円 676億1100万円
営業利益又は営業損失 65億7700万円 △84億3000万円

(三陽商会2016年12月期有価証券報告書より)

 

以上のように数字としてもバーバリーの問題はしっかりと表されています。

  • 売上としては約30%の減少
  • 営業損失を計上

また、事業の状況という部門でも文章としてバーバリーの契約終了について書かれています。

 

このように、経営上の問題は決算書に必ず表現されていくということを覚えておいてください。

 

タカタと東芝

  • 大きなリコール問題を抱えるタカタ
  • ウエスチングハウス問題の東芝

どちらも大打撃となる問題を抱えていますが、営業損益自体は黒字を維持しています。

 

タカタ(2017年3月期) 東芝(2017年3月期)
営業損益 389億5800万円 4兆7335億4600万円
特別損失 655億100万円 1兆2801億円
当期純損失 795億8800万円 9656億6300万円

(タカタ、東芝それぞれの2017年3月期有価証券報告書より)

 

しかし、決算書には必ず企業の問題は数字として表現されているのです。

それぞれ

  • タカタ:特別損失
  • 東芝:非継続事業からの非支配持分控除前当期純利益(△損失)(税効果後)

の項目で大きな損失を計上しています。

 

営業損益だけを見ても、企業の状態がわかるわけではない例といえます。

営業損益だけで企業を判断しないように注意しましょう。

 

営業損益を黒字に戻したシャープ

逆に、大きな赤字を黒字に戻したのがシャープです。

数字を見てみましょう。

2016年3月期 2017年3月期
売上高 2兆4615億8900万円 2兆506億3900万円
売上原価 2兆2282億7700万円 1兆6667億8400万円
売上総利益 2333億1200万円 3838億5400万円
販売費及び一般管理費 3952億7900万円 3214億円
営業利益又は営業損失(△) 1619億6700万円 624億5400万円

(シャープ2017年3月期、有価証券報告書より)

 

前年と比較すると売上高自体は下がっていますが、前年の営業損失から約624億円の黒字に戻しています。

 

上記の数字をみると

  • 売上原価
  • 販売費及び一般管理費

のコストが下がったことが要因だということがわかります。

 

シャープの例でも、営業改善へ施策が行われたことが端的に数字として表現されているのです。

 

このように売上高と営業利益だけをみても企業ごとにさまざまな情報が含まれていることがわかったと思います。

 

豊田自動織機の受取配当金

トヨタ自動車の祖業である豊田自動織機の収益構造も一見の価値があります。

 

トヨタ自動車はもともと、豊田自動織機で得た資金で創業された会社です。

その関係から、豊田自動織機は現在もトヨタ自動車の株式を6.93%保有しています。(2017年3月31日現在)

 

2017年3月期の豊田自動織機の損益計算書を見ると、金融収益として約640億円の計上があります。

当期利益が1375億6500万円なので、利益の中でも金融収益が、大きな割合を占めているのがわかります。

 

この金融収益のほとんどが、トヨタ自動車からの受取配当金なのです。

 

特殊なケースではありますが、損益計算書から企業間の関係が読み取れる例といえます。

 

 

さまざまな情報が隠れている損益計算書

トヨタ自動車の損益計算書をスタート地点として、さまざまな企業を読み取れたと思います。

 

まだまだこの記事では説明しきれないほどの情報が損益計算書には隠れています。

企業の情報を知りたいと思った時には、損益計算書をはじめとして、財務三表(損益計算書、貸借対照表キャッシュフロー計算書)を読み込むことをお勧めします。

 

気になる数字があれば、その数字の背景を探るとさらにさまざまな情報が集められると思います。

 

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