憲法改正の4つの論点|内容や要点をわかりやすく解説

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。 慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。 卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。 2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から 様々なビジネスの知見を得る。 現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。 冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。
現在、憲法改正の議論が活発に行われています。憲法改正に関する様々なニュースが流れていますが、論点をしっかりと整理できている人は多くないのではないでしょうか。現在、自民党でまとめようとしている憲法改正案の論点は大きく4つです。もしこの憲法改正案が国会から発議されれば、国民投票が行われることになります。国民投票が始まってから情報を集めるような事態にならないように、今のうちから理解を深めておくことをオススメします。この記事では、4つの論点をまとめました。憲法改正の議論がよくわからないと感じている人にオススメの記事です。

憲法改正とは?

憲法とは

憲法とは「Constitution」のことで、原義は「柱」という意味です。

国の骨格を形作るベースとなるビジョンを表しているといえます。

 

憲法改正とは

憲法改正とは、日本国憲法の条文に対して、

  • 修正
  • 追加
  • 削除

のいずれかを行うことです。

「改憲」と言うこともあります。

 

憲法改正の手続き

日本における憲法改正は、日本国憲法第96条に規定されています。

憲法改正には以下の3つのステップが必要です。

  1. 国会の発議
  2. 国民の承認
  3. 天皇の公布

1.国会の発議

一定数の国会議員の賛成によって、憲法改正の原案が発議されると、衆議院と参議院の両方で審査が行われます。

その後、衆議院と参議院の両方の本会議で議員の3分の2以上が憲法改正案に賛成した場合、国会から国民に憲法改正の発議(提案)が行われます。

2.国民の承認

憲法改正案が国民に提案されると、国民投票が行われます。

国民投票で、賛成票が投票総数の2分の1を上回ると、国民が憲法改正を承認したと判断されます。

3.天皇の公布

国民が憲法改正を承認すると、天皇は国民の名において、改正された憲法を公布します。

 

憲法改正の4つの論点

憲法改正には、上記した3ステップが必要です。

それでは、どのような改正が行われようとしているのでしょうか。

現在、憲法改正の議論の中心となっているのは以下の4つです。

  1. 自衛隊
  2. 参院合区解消
  3. 教育無償化
  4. 緊急事態条項

この4つの論点に関して、以下に詳しくまとめました。

 

 

憲法改正の論点1「自衛隊:安全とは?国家の義務?」

自衛隊は、戦後間もない1950年の「警察予備隊」という、治安維持を目的とした組織が始まりです。

その後、1954年に現在の「自衛隊」に発展しました。

 

自衛隊は国民の生命や財産を守るために存在します。

そのため、地震や台風など、安全が脅かされたときに、国民を守るための活動を行います。

 

一方で、日本国憲法第9条において、

  • …武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

と規定されています。

 

また、日本国憲法第9条第2項において、

  • 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない…

とも書かれています。

 

「自衛隊の存在」と「憲法の条文」に不整合が生じている状態です。

 

日本国憲法が1948年に施行されてから、国際情勢は大きく変化しています。

現代の社会に合うような改憲を望む声があり、憲法改正の論点となっています。

 

 

憲法改正の論点2「参院合区解消:県と国会の関係性を考える」

  • 参院=参議院
  • 合区=合同選挙区

のことを指しています。

参院合区解消とは、参議院の合同選挙区を解消しようという動きのことです。

 

参議院選挙において、人口が多い選挙区と少ない選挙区では1票あたりの影響力に差がある、という問題があります。

例えば、1人の議員を選ぶのに以下の2つの選挙区があるとします。

  1. 有権者が100人の選挙区
  2. 有権者が500人の選挙区

A選挙区では、100人で議員1人を選出するのに対して、B選挙区は500人で1人の議員を選出します。

つまり、A選挙区の有権者の一票はB選挙区の一票の5倍の力を持っていることになります。

これを「1票の格差」と呼びます。

 

過去の判例から、一票の格差は大きくて2倍以内に抑えることが求められています。

 

「1票の格差」問題を解決するために2016年の参議院議員選挙で行われたのが、「参議院合同選挙区」です。

これは、参議院選挙において、

  • 鳥取県と島根県
  • 徳島県と高知県

のそれぞれ2つの選挙区を合区にして、1つの選挙区にしました。

鳥取県と島根県で1つの選挙区、徳島県と高知県で1つの選挙区となりました。

 

ただこの合同選挙区には、

  • 2つの県でどちらか片方からしか議員を選出できない
  • 2つの県の意見の相違を反映できない

などの問題がありました。

 

1票の格差に左右されず、

  • 各都道府県の意見を国政に反映させる
  • 参議院を各都道府県の意見を議論する場にする

ことを目的として、参院合区解消が求められています。

 

選挙について規定している日本国憲法第47条の

  • …選挙に関する事項は、法律でこれを定める。

という部分を改正するのか、他の条文を変更するのか。もしくは憲法は改正せずに法律で対応するのか。

地方自治や地方の意見を国政に反映させるために、様々な意見が出ています。

 

 

憲法改正の論点3「教育無償化:義務教育とは?待機児童解決の鍵」

現在、小・中学校は義務教育です。授業料は税金でまかなわれています。

一方で、幼児教育や高校、大学は義務教育ではないので、通うためにはお金を払う必要があります。

このような状況で、授業料などの教育にかかる経費をなくそう、という動きが「教育無償化」です。

 

日本国憲法第26条第2項には、

  • …義務教育は、これを無償とする。

と書かれています。

小・中学校に授業料を払わなくていいのは、このためです。

つまり、義務教育となれば教育費は無償化されるといえます。

 

現在、保育園や幼稚園に入れない「待機児童」が問題視されていますが、幼児教育が義務教育となれば「待機」する必要はなくなり、この問題は解決されます。

 

教育とは、社会性を身につける意味合いもあります。

幼児教育を義務教育として教育費が無償化されれば、待機児童がいなくなるだけでなく、幼少期から社会性を身につけることができます。

 

問題は財源です。

幼児教育から大学までの完全無償化を達成するためには、総額で4兆円以上かかるという試算があります。

財源を何で補填するかの議論も行われています。

 

高校や大学に関しては、成績優秀者の授業料を無償化するなど、一部無償化とすることで費用を抑える、という意見もあります。

 

「教育無償化を憲法によって定める」という動きがある一方で、憲法改正しなくても「法整備で対応できる」という意見もあり、教育無償化に関する議論は慎重に進められています。

 

 

 

憲法改正の論点4「緊急事態条項:緊急とはいつのこと?」

緊急事態条項とは、テロや大規模な災害、他国からの武力攻撃を受けた時などに発令され、政府に権限を集中させるものです。

首相が緊急事態を宣言すると、

  • 内閣が法律と同じ効力を持つ政令を定める
  • 首相が地方自治体の首長に必要な指示を出す

といったことが可能になります。

 

緊急事態条項は「戒厳令」に近いものだといわれることもあります。

現在は、過激派のテロ行為の危険にさらされているフランスやフィリピン、2016年にクーデターが起きたトルコなどで戒厳令が出されています。

 

緊急事態条項のポイントは、国会や司法の権限が政府に集中することです。

 

これは、

  • 司法
  • 立法
  • 行政

の三権に関して、一時的に行政の裁量権を増大させる状態と言えます。

 

三権分立が著しく崩れるので、

  • 「一時的に」をどう規定するのか
  • どのような状況になったら緊急事態と判断するのか

など、具体的な条件を設定する必要性が叫ばれています。

 

緊急事態条項には、

  • 選挙の延期
  • 議員任期の延長

といった内容も含まれています。

これを、憲法改正によって規定するのかどうかが議論のポイントの1つとなっています。

 

 

論点を理解して自分の意見を持つ

ここまで、憲法改正の4つの論点についてまとめてきました。

大切なのは、憲法改正で何が議論されているのか理解した上で、自分なりの意見を持つことです。

 

もし、憲法改正案が国会で発議されれば、国民投票が行われます。

実際に発議されれば、憲法改正に関する様々な意見がテレビやインターネット上に溢れることが予想されます。

つまり、国民投票になってから情報を探し始めるのでは、本当に知りたい情報を手に入れにくくなるのです。

 

4つの論点はいずれも、私達と直接関わる問題です。

  1. 自衛隊→安全
  2. 参院合区解消→代表のあり方、自分たちの意見の反映
  3. 教育無償化→日本社会の根底
  4. 緊急事態条項→自由の制限の可能性

このように考えると、憲法改正は私達にとって重要な問題であり、決して人ごとではないことがわかります。

憲法改正を自分ごととしてとらえ、憲法改正の国民投票になったときに自分の意志で投票しに行くことが大切です。

 

今のうちから論点を整理して、自分の意見を言えるようにしておくことをオススメします。

他人の意見に流されて投票するのではなく、自分の意見で投票ができるように準備しておいてくださいね。

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