お客様に感謝したことは?元保険屋が見たお客様に救われたこと

この記事は寄稿記事です。保険の営業職に勤めていた経験を持つAさんが見た、お客様に救われたことについてまとめています。営業職の場合は、ノルマがある場合が多いです。数字で見ればこれはあくまでも「ノルマ」ですが、実際には営業が売るサービスを買ってくれるお客様がいます。「お客様を大切にしなければいけない」と言われることも多いですが、心の底からお客様に感謝するような出来事には、多くの学びが詰まっています。営業職に勤めている人、顧客を持つ仕事についている人にオススメの記事です。

本当の意味で感謝すること

「お客様を大切にしなければいけない」とよく言われます。

 

「お客様に感謝します」とはいうものの、本当の感謝の気持ちは、自分の窮地を救ってくれた時、心のそこから湧いてくるものだと感じています。

 

それ以外は感謝ではない、というわけではありません。

ただ、そうした経験が、自分のお客様に対する気持ちを大きく変えることになりました。

 

 

いつも不安だった

外資系保険会社に勤務しているときは毎日が不安でした。

いまも不安な毎日を送っていますが…。

 

世の中で「不安はない」という人は誰もいないのではないでしょうか。

当時私は、こちらの記事で書いたように毎週3件のご契約を預かることを目標にしていました。

これを公言していたので、「絶対やり遂げる」という意思だけで毎日を過ごしていました。

 

最終日の日曜日にご契約が1件もない、という日も多々ありました。

それでもなんとか目標を達成してきました。

 

例えばある週は、こんな具合でした。

週3件のご契約を預かることを目標にしているので、ご契約を預かるためのプレゼンを毎週最低3個は入れておかなければいけません。

当然その週も3件のプレゼンが入っています。

その他に、5件の新規商談、来週以降のプレゼンにつながる商談を5件入れていました。

ところが3件のプレゼン中、2件がリスケジュールとなり、日曜日のプレゼンで3件契約いただかなければいけない状況になりました。

事前の商談で、

  • 毎月の生活費
  • お葬式などの死後の整理資金
  • 年金対策

この3つが必要とのニーズを洗い出したので、それぞれを補うプランで合計3件の提案でした。

ところがプレゼン終了後、お客様はこう言いました。

「ちょっと考えます。」

このフレーズが出てきたときが一番嫌なのですが、これからがとても大切です。

 

お客様は何を考えたいのかを聞き出すことが必要です。

  • 毎月の掛け金
  • プランの内容
  • 担当営業(自分)に対する不満
  • 会社に対する不安

概ねこんなところです。

いろいろ聞き出したのですが、結局その日はご契約になりませんでした。

自分の焦りもどこか滲み出ていたのかもしれません。

 

後がない状況では自分の気持ちに余裕がないので、

  • 「多くのプレゼンを入れる=新規商談数を確保する=紹介数を増やす」

このことは最も大切だということを学びました。

 

この時点で日曜日の午後3時です。

さあどうしよう…。

 

 

可能性にかける

考えた結果、来週のプレゼンをこの後にするしかないと考えました。

その方は以前からお付き合いのある方で、神戸に住んでいます。

しかも奥様同席で商談を進めていたので、奥様の了承を得なければいけません。

 

「すみません。いまからお会いできないでしょうか?」

事情は話せないのですが、来週のプレゼンをどうしても今からお願いしたいと伝えたところ、その方は二つ返事でいいよと言ってくれました。

奥様も同席で、日曜日夜から保険屋に会ってくれると言うのです。

 

この時点でありがたいという感謝の気持ちが湧いてきました。

ただご契約になるかどうかはわかりません。

それでも可能性かけるしかありませんでした。

 

その方は神戸に住んでいるので、東京から新幹線に乗ってお会いするのは早くて午後8時ぐらいでしょう。

準備を済ませ、駆け足で新幹線に乗り、神戸へ向かいました。

 

新幹線の車中ではロールプレイです。

頭の中で商談を何度も何度もイメージし、想定問答していました。

気がついたら神戸に着いていたという感覚で、その方のご自宅に着きました。

 

 

記憶にないお好み焼き

午後8時30。

早速商談しようというつもりでいたら、なんと晩御飯を食べずに待っていたとのことで、美味しいお好み焼きがあるから予約しといたと言うのです。

 

予約まで入れていただいてありがたいことなのですが…。

夜食は済ませておいていただければ…。

 

プレゼンは2時間ぐらいかかるので、「遅くなってしまってもいいですか」と伝え、お好み焼き屋に向かいました。

お客様には申し訳ないのですが、これほど記憶に残らないお好み焼きを食べたことはありませんでした。

 

食事中は自分が保険会社に転職したことや、いまの仕事の状況などをいろいろ聞かれ、話が盛り上がっていました。

先方もお腹を空かせて待っていてくれたので、あれこれ注文していました。

まるで甥っ子が遊びにきたように自分を歓待し、ご馳走してくれました。

 

ただこの後プレゼンをするので、自分の仕事に対する真摯な姿勢、気持ちだけはこの食事で伝えようと思い、箸を進めていたのを覚えています。

 

「来週でもよかったのに。どうしたの?」

お客様からこう聞かれました。

 

実は…と自分本位の事情が喉まで出かかったのですが、それはさすがに話すことができず。

「来週どうしてもその時間が外せない用事ができてしまい、急遽こんな形ですみません」

とだけ話すにとどめざるを得ませんでした。

 

ただもしかしたら、お客様は自分の事情はお見通しで、何かあると気づいていたのかもしれません。

そうこうしているうちに時計の針は午後10時30を過ぎていたのでした。

 

 

これからプレゼンしてもいいものなのだろうか…

食事を済ませてお客様の自宅に戻るときには、午後11時30を回っていました。

玄関先にゴルフクラブが置いてあり、そのことを話すと、そこからまたゴルフの話で盛り上がってしまいました。

 

「新しくこのアイアン買ったんだよ。練習場で調子いいんだよね。来週コースデビューするのが楽しみなんだ」

しまった…。

一通りゴルフの話が終わる頃には午前0時を回っていました。

 

こんな時間に申し訳ない。

本当にいいのだろうか。

「本当にいまからプランをお見せしてもよろしいのでしょうか?」

お客様に聞かざるを得ませんでした。

「大丈夫だよ。早速始めようか」

 

これまでの商談の振り返りをし、

  • 万が一のことが起きてしまった時の生活費
  • 葬儀などの死後の整理資金
  • 年金対策

この3つの資金が必要だということを確認しました。

 

この方はすでに他社の保険契約を持っている、いわゆる既契約者だったので、その保険の分析をし、いまの保険では何かあったら資金が足りないことを自ら確認してもらいました。

「焦るなよ」

テーブルに置いた時計を見つつも、心のなかでこうつぶやき続けていました。

そして自分が作成してきたプラン説明をしました。

 

 

お願いされる存在に変わる

「お客様が必要だと感じている生活費、死後の整理資金、そして年金対策、全てカバーしています。これまでご契約している保険と比べていかがですか?」

「あなたが持ってきてくれたプランの方が格段にいいね」

「ありがとうございます」

 

ここで沈黙です。

このタイミングで、「ではご契約でよろしいでしょうか?」と聞くのではなく、何も話さず黙ることがとても大切です。

何か自分から話し出すと、お客様は契約を押し付けられたような感覚になり、また自分の焦りも悟られてしまうからです。

すべて新幹線の車中ロールプレイでイメージしていました。

 

お客様は奥様とプランについていろいろ話し始めました。

「この特約は?」

「何が起きたら保険金が降りるの?」

「保障期間は?」

すべて保険の内容に関する質問でした。

この質問が出るということは、プランについてはほぼ合格という証です。

ただここでも、お客様の質問に対して答えた後は再び沈黙です。

 

「このあとはどうすればいいの?」

このフレーズが出てきて初めて、「ご契約でよろしいですか?」と聞きます。

「お願いします」

 

保険屋に会うのは、ほとんどの人が最初は嫌なものです。

どうせ契約が欲しいんだろう。

こう思われている保険屋が、「お願いします」と向こうから言っていただける存在に変わるのです。

 

お願いされる立場に変わること。

これがすべての営業に置いて必要なスタンスだと感じます。

 

営業とはお客様の問題点を解決する、そのお手伝いをする人なのです。

「本当にこのプランでよろしいのでしょうか?」

再度こう聞くことも大切です。

 

契約を焦るとこの再質問ができません。

契約の念押しをして、それでも大丈夫と言っていただけたら手続きに移ります。

気づけば時間は午前2時を過ぎていました。

 

「じゃあ飲もうか」

お客様は冷蔵庫からビールを出し、「契約に乾杯!」と言ってくれました。

 

感激のあまり泣いてしまいそうになるのをこらえるのに精一杯でした。

 

そのあとどこかビジネスホテルを探して泊まるつもりでいたのですが、お客様は「泊まっていけ」と替えのパンツまで用意してくれていました。

お風呂にも入らせてもらい、リビングに布団までひいてくれていました。

 

お客様が寝静まったころ、お客様がしてくれたことに対する感謝と、目標を達成できたという安堵感で、静かな興奮があり、なかなか眠れませんでした。

ふとベランダ出て夜空を見上げて息をついていると、自然と涙が出ていました。

 

 

すべては自分の甘えから

本当にありがたい。

空を見上げながら考えました。

 

日曜日の午前0時から商談を受けることは自分ではあり得ません。

それを二つ返事で受けてくれた人がいたのです。

 

ただ元はと言えば、自分の甘えからお客様に迷惑をかけてしまっているに過ぎません。

プレゼンのアポイントがキャンセルになったのも、もしかしたら事前に対策を打っていれば避けられたかもしれません。

また新規の商談数を増やし、プレゼン数をもう2個増やしていればこんな事態になりませんでした。

なぜそうしなかったのかを突き詰めれば、「これで大丈夫だろう」という見通しの甘さです。

 

お客様がしてくれた行為というのは、自分に何かを教えるために必然的に起こるのだと感じます。

すべての出来事は起こるべくして起こり、自分に何が足りないのかを教えてくれるのです。

 

自分の窮地をお客様に救われたことは、本当に心の底から感謝の気持ちが湧いてきました。

感謝する、ということは自分の至らなさを知ることでもあるのです。

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