経営戦略

経営改善の方法は?日立製作所・ソニーに見る業績回復のポイント

1983年生まれ東京都在住。青山学院中等部・高等部卒。 慶應義塾大学総合政策学部にて、国際政治学を専攻。 卒業論文で学部優秀論文賞(SFC AWARD)受賞。 2006年住友商事に入社し、海外駐在を含めた実務経験から 様々なビジネスの知見を得る。 現在、歴史を軸にしたコンテンツ作成者として活躍中。 冷徹な分析力で現代社会とビジネスを診断する。
経営破綻してしまう企業がある一方で、V字回復と呼ばれるほどの経営改善を遂げる企業もあります。経営を改善した企業はどのように悪化した状態から回復したのでしょうか。この記事では、日立製作所とソニーを例に、経営を改善した方法をまとめています。また、失敗してしまう企業については関連記事に詳細をまとめましたので、併せてご覧ください。

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日立製作所〜選択と集中〜

日立製作所は、日立グループの中核企業です。

  • 電力
  • エレベーター、エスカレーターなどの昇降機
  • 建設機械
  • 鉄道などのインフラ
  • 情報通信
  • ビッグデータなどのIT(情報技術)
  • 電子部品
  • 家電

など、幅広い事業を手掛けています。

 

日立はバブル崩壊後に業績低迷が続き、2009年のリーマンショック後には過去最大の8000億円近い損失を計上しました。

ディスプレイ事業からの撤退を余儀なくされるなど経営に苦しみ、日立は当時「沈む巨艦」と呼ばれました。

 

日立は経営を立て直すために、意思決定のスピードアップを図ります。

リーマンショックを乗り越えるためには事業を切り捨てる必要があり、そのためには機動的で迅速な意思決定が必要となったからです。

 

完全子会社化で意思決定のスピードアップ

日立はまず、上場子会社を完全子会社化しました。

日立が50%以上を出資している子会社に対して、必要と判断した子会社に100%出資した、ということです。

 

傘下に置く子会社に100%出資することで、他に出資している株主の主張を聞かなくてもいい状態にしました。

これにより、日立の経営トップから子会社までの意思決定のスピードが早くなったのです。

 

異例の人事で意思決定のスピードアップ

また、本社から子会社の社長に異動した役員を呼び戻して本社の社長に据える、という異例の人事を行いました。

子会社を経験した役員を社長に抜擢することで、

  • 子会社の気持ちを理解できる
  • 元々本社にいたため、本社の役員も言うことを聞く

という状態になります。

トップから子会社まで指示が通りやすくなり、意思決定のスピードが上がったのです。

 

選択と集中

素早く意思決定ができる環境を整えたうえで「選択と集中」を行い、必要な事業と必要ではない事業を選別しました。

 

「選択と集中」とは

  • 必要なもの
  • 必要のないもの

を明確に区別し、「必要のないもの」を捨てて「必要なもの」に集中する、という考え方です。

 

日立はHDDや液晶パネルなどの事業部を切り離す一方で、インフラやITに資源を集中しました。

意思決定のスピードアップを行ったため、迅速に「選択と集中」を行うことができたのです。

 

日立は、意思決定のスピードを上げることで迅速な「選択と集中」を可能にし、経営の再建に成功しました。

 

 

ソニー〜選択しないという選択〜

ソニーは、ソニーグループを統括する持ち株会社です。

子会社も通じて

  • ゲーム
  • 映画
  • 音楽
  • 銀行業
  • 生命保険業
  • 損害保険業
  • 不動産業

などを手がけるコングロマリット企業となっています。

 

ソニーはリーマンショック後の2009年3月期以降、何度も最終赤字に陥っており、2014年にはパソコンの「VAIO」の事業を売却してます。

2015年には、業績悪化によって配当金を支払わない無配となりました。

エレキ事業が振るわず、特にテレビの不振が大きく影響しました。

 

ソニーのビジョンに沿った選択

ソニーは経営を立て直す際に、日立のケースとは違って、あえて大規模な「選択と集中」は行いませんでした。

それはソニーが「ソニーだからできる新たな『感動』の開拓者になる。」というビジョンを掲げているからです。

 

ソニーは売って終わりの「切り売り」ではなく、商品を売った後も継続的にサービスを提供することで「感動体験」を提供しています。

例えばゲーム機の「プレイステーション4」は、ネット経由で動画などを配信する有料サービスがあります。

プレイステーション4を売るだけでなく、その後にもつながるサービスも提供しているのです。

 

直接商品の販売に関係のないサービスを切り離してしまうと、その後の継続的なサービスに繋がらず、「感動体験」を提供することができません。

商品が売れた後も継続的なサービスを提供するために、ソニーは大規模な選択と集中を行いませんでした。

 

あえて事業を残したことで、継続的なサービスを提供する「感動体験=ソニーらしさ」を実現し、経営を立て直したのです。

 

 

自力で経営改善ができない場合

日立やソニーは自力で経営を立て直すことに成功しましたが、もし自力で経営を立て直せない段階まで来てしまったらどうすればいいのでしょうか。

 

自力で経営が立て直せない場合、必要なのは企業風土の一掃です。

企業の根本的な部分から変えなければなりません。

例えば「上層部からの目標を達成するために、数値改ざんをいとわない空気」などです。

根本的な部分の腐敗は、「自力で経営を立て直せない状態」を生み出します。

 

企業風土を一掃するためには、企業外からの圧力をかける必要があります。

内部で立て直そうと思っても、また同じ失敗を繰り返してしまいます。

 

2010年に破綻したJALは、会社更生法の適用を申請して、社長以下取締役が即日辞任しました。

日本エアコミューター社長の大西氏が社長に、京セラ名誉会長の稲盛氏が会長に就任し、体制を立て直しています。

内部昇格ではなく外部からの人事によって外部圧力を加えたのです。

 

JALの再建を任された稲盛氏は、昼食をとりながら会議を行うときに出されたお弁当を見て、大西氏にお弁当の値段を聞きました。

聞かれた大西氏はその値段を答えられず、稲盛氏は大西氏を叱責します。

これから再建しようとしている企業で、お弁当の金額も把握していないコスト意識の低さを指摘しました。

このようにして稲盛氏は、蔓延する企業風土を一掃していったのです。

 

カルロス・ゴーン氏がルノーからやってきた日産も、外部からの圧力で再建した例です。

未だ再建途中のシャープの戴正呉社長も同様に、外部からの圧力で再建を目指しています。

 

 

企業はトップで判断すべし

日立やソニーは悪化した経営を立て直すことができましたが、世の中には経営の立て直しができずに経営破綻してしまう企業もたくさんあります。

日立は意思決定の速度を上げるために「選択と集中」を行った一方で、ソニーはビジョンを重視して大規模な「選択と集中」を行いませんでした。

 

「選択と集中」という観点では対象的だった2社ですが、どちらも経営を立て直しています。

つまり、企業が行っている施策だけではその企業が経営改善できるかどうかは判断できないのです。

 

これは経営改善を目指す企業だけに当てはまることではありません。

大企業であれ中小企業であれ、施策を見るだけでは企業の経営方針はわからないのです。

 

それでは、どこを見れば企業の目指しているものがわかるのでしょうか。

 

企業を判断する1つのポイントは、企業のトップを見ることです。

大企業はトップ人事に企業色が反映されますし、中小企業はトップの思想が企業全体に反映されます。

つまり、企業のトップを見ることで企業が何を大切にしているのかがわかるのです。

 

日立は子会社出身の社長をトップに据えることで、意思決定の早さを重視していることを示しました。

また、日立のトップがこれまで技術畑出身者が多い、というのも、日立のトップを見る上で重要です。

「技術の日立」と呼ばれる理由の1つでもあります。

 

ソニーの平井社長は日本経済新聞のインタビューで「ソニーの特徴は昔から顧客との付き合いの継続性が高いことだ」と答えており、サービスの継続的な提供を「ソニーらしさ」と捉えていることがわかります。

 

JALを再建した稲盛氏は、お弁当の値段にもこだわるコスト意識を示しました。

 

このように、企業のトップを見ることで、その企業が大切にしたいことが見えてくるのです。

 

もし気になる企業があるのなら、まずはトップに立っている人を調べることをオススメします

トップに立つ人物を見て、企業が何を目指しているのか、考えてみてくださいね。

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