20代におすすめの転職エージェント全15選!選び方は?そもそも使ったほうが良い?転職サイトとの違いは...
2019.11.7
2019.11.7
日系企業の不祥事は絶えません。
この記事で取り上げる企業以外にも、カネボウやオリンパス、シャープなど、いくつもの企業が失敗をしてしまっています。
なぜ繰り返し問題が起こってしまうのでしょうか。
日系企業の失敗は大きく3つに分類できます。
この3つの失敗に対して、具体的な企業を取り上げながら、その原因をまとめました。
M&Aとは「Mergers and Acquisitions」の略で、「合併と買収」という意味です。
複数の企業が1つになる「合併」や、ある企業が他の企業を買い取る「買収」のことを指します。
M&Aは主に事業の拡大のために行われます。
2017年4月25日、日本郵政から初の赤字決算の見込みが公表されました。
オーストラリアの子会社トールの「のれん及び商標権」を一括償却することによって損失が発生したからです。
「のれん」とは「企業の時価純資産と買収金額の差額」のことです。
例えば、帳簿上の純資産である「簿価純資産」が100億円のA社があったとします。
A社が「帳簿には記載されていないけれど価値のある資産」を40億円もっていた場合、A社の「時価純資産」は
100億円+40億円=140億円
となります。
時価純資産が140億円のA社を200億円で買収した場合、差額の60億円が「のれん」です。
「のれん」には2つの要素があります。
「のれん」は「買収するときの企業の価値(=時価純資産)」以上のお金を払ったときに発生します。
これには、「のれん」によって払った額以上を将来的に稼げるだろう、という期待値が含まれています。
つまり、長期的に「のれん」の分を回収できなければ、買収しても損してしまうのです。
「のれん」とは、将来の収益のための先行投資といえます。
日本郵政は、トールの営業利益が今後も上昇することを見込んで買収しました。
ただ、実際にはトールの営業利益は落ち込んで行きました。
時期 | 営業利益(豪ドル) |
---|---|
2014年 6期 | 4.5億ドル |
2015年 6期 | 3.8億ドル |
2016年 3期 | 2.7億ドル |
2017年 3期 | 0.7億ドル(見込み) |
日本郵政は将来性を見込んで時価純資産以上でトールを買収しましたが、「のれん」の回収ができなくなってしまったため、会計で損失を計上することになったのです。
買収するということは、買収した相手企業の名前を手に入れるということです。
買収した企業の名前を手に入れることで、その企業のブランド力と信用を手に入れることができます。
これは同時に、買収した企業に対して責任をもつ、ということにもなります。
買収した企業に問題があれば改善し、同じグループとして一体化して運営しなければなりません。
日本郵政の場合は、トールを買収した後にそのままトールの経営陣に舵取りを任せてしまいました。
本来であれば、買収することで手に入れたトールのブランド力と信用を活かすために、運営に対して責任を持たなければなりませんでした。
日本郵政はトールを買収する際に発生した「のれん」に対して
という失敗から、損失を計上することになったのです。
粉飾決算や不正会計とは、実際とは異なる決算書類を作成することです。
業績をよく見せようとしたり、失敗を隠そうとしたりして行われます。
長年に渡って粉飾決済を行うと、金額が雪だるま式に大きくなっていき、最終的には負担が大きくなって発覚してしまいます。
2015年5月8日、東芝は、決算発表の延期を発表しました。
不適切な会計処理が行われていたことがわかり、第三者委員会を設置して実態を調査するためです。
その後、実際の利益より多く利益を得ていたように報告されていたことがわかりました。
この不正会計問題は、東芝の経営陣が各事業に対して無茶な利益目標を押し付けた結果、現場で利益の水増しなどの表面上の数字の操作が横行した結果と考えられています。
会計テクニックを使えば、損失隠しや利益の早期計上などは可能です。
ただそれは会計上の利益でしかなく、実態は伴っていません。
会計上の結果と実際の結果が一致していなければ、いつか嘘がバレてしまいます
不正会計問題と、今も続いているウェスチングハウス問題は別問題です。
ウェスチングハウスは、東芝が2006年に買収した原子力事業を行う企業です。
2015年に発覚した東芝の不正会計の際には、ウェスチングハウスは減損していない、と報告していました。
ただ2017年に入り、ウェスチングハウスが約7000億円以上もの減損を計上しました。
これに対して「減損を計上したタイミングは本当は2017年よりも前だったのではないか」という疑念が生まれたのです。
実はもっと前から減損していたのに、それを報告していなかった可能性が疑われています。
東芝は2017年8月1日付けで東証二部に格下げになることが決定しています。
ただこのまま債務超過が解消されなければ、上場廃止の可能性もあるとされています。
東芝の問題の原因は「当たり前ができていなかったこと」にあります。
経営陣が利益設定をした時に、それが適正かしっかりとチェックしていれば、各事業が不正会計をする必要はありませんでした。
各事業が利益の水増しなどをした際にも、会計上の数字と実態をしっかりとチェックして入れば、損失が大きくなる前に問題を解決することができたかもしれません。
傘下の企業の状況をしっかりと把握していれば、ウェスチングハウスが経営破綻する前に経営悪化に気づけた可能性もあります。
東芝は、
という失敗から、不正会計問題やウェスチングハウス問題へと発展してしまったのです。
サービスや商品そのものに問題が全く発生しないのがベストですが、まったく問題がなくなる、というのは現実的ではありません。
大切なのは、問題が発覚したときにどのようにして沈静化を図るかです。
これは「クライシス・マネジメント」とよばれます。
タカタはエアバッグで世界シェアの2割を持つ大企業です。
トヨタやホンダなどもタカタのエアバッグを採用していました。
タカタのエアバッグに問題がある、と報告されたのは2002年頃です。
この時は「高温多湿の地域で長時間使用した場合に、異常破裂が起きる可能性がある」と報告されました。
その後、2008年にホンダがアメリカでリコールを行うと、エアバッグが原因で死亡事故が発生したこともあり、トヨタなどがリコールを始めます。
最終的には、累計5000万個のリコールが行われました。
リコールによる費用は1兆円ともいわれています。エアバッグのリコール問題が原因で、タカタは2017年6月26日に経営破綻しました。
この問題の原因は、タカタが発生した問題に対して対応を誤ったことにあります。
メーカーの場合、製品に問題があった場合に
という判断をする必要があります。
たまたま不具合が起きただけなのか、生産ラインの段階で根本的に問題があるのか判断しなければならないからです。
その場で問題が解決できるのであれば、リコールをしないほうが問題を大きくしないで済みます。
タカタは、できるだけ問題を小さい範囲で収めるために、リコールの範囲拡大の拒否などを行っていました。
ただ最終的にはアメリカ全土などでリコールをしなければならなくなり「リコール隠し」と言われてしまったのです。
2010年に大規模なリコールを行ったトヨタは、アメリカの公聴会に社長自らが出席して厳しい質問に対応しました。
これに対してタカタは、公聴会には社長は出席せず、記者会見を開いたのも問題が発覚してからかなり時間がたってからでした。
全く問題のない完璧な製品を作ることはできません。問題はある程度起こってしまいます。
大切なのは、問題が起こったときにどのような対応をするかです。
タカタは
という失敗から、経営破綻となってしまったのです。
日系大企業が陥りがちな3つの問題について、実際の事例を参考にしながらまとめてきました。
企業が失敗してしまう要因を理解できたでしょうか。
大切なのは、問題は小さな火のうちに対応するべきだということです。
問題が大きくなってからでは、タカタのように最悪の事態になりかねません。
問題を小さなうちに発見するためには、現場からの報告をしっかりと上層部に届けることが必要です。
これには「現場の意見が経営陣まで届く」という風通しの良さが大切になります。
現場のことは現場でなんとかしろ、というのではなく、小さな問題を一つひとつ丁寧に対応していく姿勢が求められるのです。
今の企業は、風通しが良いでしょうか。
現場の声が上層部に届いているでしょうか。
現場のこと分かってないな、と感じる社員が多いのではないでしょうか。
もしこのまま日本の企業が風通しの悪い状態なら、ここに挙げた問題はなくなりません。
これは、この記事で挙げたような大企業だけでなく、中小企業にも当てはまることです。
大企業だから安泰、中小企業だから大企業のような問題は起きない、といった固定観念を捨ててください。
大企業=安泰ではありませんし、中小企業でもここに挙げたような失敗をします。
もし大企業こそ良い企業だと思っている人がいたら、その考えを疑ってみることをオススメします。
本当に良い企業とは何か、もう1度考えてみてくださいね。