現代哲学

ソシュールとは?近代言語学の父

ソシュールは「近代言語学の父」といわれるスイスの言語学者、言語哲学者です。ソシュールが言語の本質をつかむためにたどりついた方法論はその後の構造主義を生み出し、哲学的にも大きな影響を残しました。ソシュール自体を完全に理解することは簡単ではありませんが、現在の世界の当然とされる考え方の基礎にもなっているのがソシュールです。自分がどのように考えているかを探るヒントにもなるでしょう。この記事ではソシュールについてまとめました。

ソシュールとは?

ソシュール(1857~1913)は、スイスの言語学者・言語哲学者です。

近代言語学の父」とも呼ばれています。

 

ソシュールは言語学にかぎらず1960年代からはじまる構造主義、ポスト構造主義にも大きな影響を与えました。

 

ソシュールの言語論は現在わたしたちが普通に考えてることにも基礎的な部分で影響を与えているといえます。

それではソシュールの言語論の内容を見ていきましょう。

 

ソシュールの言語論

ソシュールの言語論をおおまかに理解するためには

  • ラング/パロール
  • シニフィエ/シニフィアン
  • 通時言語学/共時言語学

という3つの項目を知る必要があります。

 

聞いたことのない言葉だと思う方もいると思いますが、1つずつ見ていきましょう。

 

ラング/パロールとは?

ソシュールは、まず言語を2つの種類に分けて考えます。

それが

  • ラング:文法など、社会的に皆が共通の約束事として決められている言葉
  • パロール:ラングにしたがって実際に話される言葉など、個人的な意を伝える言葉

です。

 

ラングやパロールは相互に影響を受けながら変容していくものの、区別して考えられるべきだとソシュールは考えました。

 

相互に影響

普段話している言葉をイメージしてみてください。

 

誰しもが、文法や意味など、おおまかな規則(ラング)を使いながらも、この規則を飛び越えて自分なりの話し方をします。

これがパロールです。

 

ラングが時代とともに変遷していくのは、パロールのそうした「飛び越え」が源泉になっているといえます。

 

科学的な対象はラング

パロールはその性質上、個人の数だけ形があります。

一方で、ラングは社会的に共有された共通構造を持っているので、科学的な研究対象になりえるとソシュールは考えました。

 

シニフィエ/シニフィアン

次に、シニフィエ/シニフィアンを見ていきましょう。

これは言葉自体の基本構造についてです。

 

では、ためしに「りんご」という言葉の構造を見ていきましょう。

 

シニフィエ

「りんご」という言葉がさすものを想像してください。

大半の人が果物のりんごを思い浮かべると思います。

 

その思い浮かべた内容のことを「シニフィエ」といいます。

言葉が指す対象のことですね。

 

シニフィアン

また、目の前にりんごがあるとします。

この時、「りんご」「アップル」など”目の前のりんご”を示すための言葉があります。

 

この「りんご」「アップル」などの言語表現が「シニフィアン」です。

 

「シニフィエ-シニフィアン」の構造

言葉には常に

  • 「指される対象(記号内容)」
  • 「指すための表現(記号表現)」

があります。

つまり、言葉は常に「シニフィエ-シニフィアン」の構造を持っているということです。

 

 

「りんご」を例に出しましたが、物質じゃなくても同じことです。

「楽しい」などの感情にも「シニフィエ-シニフィアン」の構造があるのです。

 

コトバの恣意性

また「りんご」に戻りましょう。

 

目の前にりんごがあるときに日本人であるならば日本語で「りんご」といいます。

しかし英語圏の人からすれば、それは「apple」と表現されます。

 

このように、ひとつの「シニフィエ」に対して「シニフィアン」は複数存在しえます。

 

ソシュールは、なぜ目の前のりんごに対して「りんご」と「apple」など複数の「シニフィアン」があるのかということに絶対的な根拠などないと考えました。

 

りんごはなぜ「りんご」という言葉になったのでしょうか。

「りんご」という発音で呼ばれるようになった絶対的理由はない、たまたま「りんご」になったといっているのです。

 

つまり、「シニフィエ(内容)とシニフィアン(表現)を結びつけるものは恣意的である」ということです。

この考えがその後の現代思想に大きな影響を与えました。

 

もう少し見ていきましょう。

 

すでに客観的に存在する事物はない

さて、シニフィアンが恣意的に成立していることまで説明しましたが、その指し示す対象自体(シニフィエ)についても考えてみましょう。

 

ここでは「虹」の例がわかりやすいかもしれません。

 

虹はある文化では3色だとされています。

日本では7色ですね。

 

このように同じ対象(シニフィエ)に対して様々な見方、呼び方があります。

 

つきつめて考えると、客観的に存在している事物に「シニフィエ-シニフィアン」の構造があるならば、いつもその概念は同じになるはずです。

 

にもかかわらず、「虹」を見ればわかるとおり同じ対象に対して別の見方が生まれるのは、

  • 客観的に存在している事物はない

からだと考えられます。

 

人間の観点よりも以前に対象が存在してるのではなく、観点が対象を作っているということです。

 

これは、古代ギリシア哲学から続く実在論に新しい観点を与えました。

 

 

通時言語学と共時言語学

最後に、通時と共時の話をしたいと思います。

通時と共時とは

  • 通時:歴史的な流れ
  • 共時:ある一定時期、その時、その空間

という意味です。

 

ソシュールの言語学が画期的だったのは、共時的な観点を言語学に取り入れたことです。

 

それまでの言語学は、言葉を理解するために歴史的な変遷(通時的)を研究していました。

ex.)この言葉の語源は?

 

しかし、ソシュールは歴史的な変遷を見なくとも、言語の構造は明らかにできると考えたのです。

そして、実際にソシュールは共時的な観点から「シニフィエ-シニフィアン」といった構造を取り出したのです。

 

ソシュールは構造主義に大きな影響

このように、言葉を共時的にとらえ、言葉自体の意味から離れた構造を取り出す方法論は、その後の構造主義につながっていきます。

ソシュールの構造的にとらえるこの方法論は、私たちの日常でも当たり前に使っているはずです。

 

言葉がさす実体は、絶対的なものではありません。

その奥に潜む構造を取り出すことで、より本質的なものに近付けるのです。

 

ソシュールを知ることで、本質的なものの考え方を探ってみてはいかがでしょうか。

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