AECとは?ASEANとどういう関係?日本との関係は?今後の展望は?

AECとは、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が域内の貿易自由化や市場統合などを通じて成長加速を目指す広域経済連携の枠組みのことです。グローバル化が進む現代において国際協力は欠かせません。AECは巨大な市場規模を持ち今後のアジア経済に大きな影響をもたらすと予想されます。日本はAECはどのような関係になっていくのでしょうか。この記事ではAECの内容、日本への影響、今後の展開についてまとめました。

AECとは?

AECとは「ASEAN Economic Community」の略称で、東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が域内の貿易自由化や市場統合などを通じて成長加速を目指す広域経済連携の枠組みのことです。

日本語では「アセアン経済共同体」と呼ばれます。

AECは通貨統合や域外に共通関税を課す関税同盟などは想定していません。

このためAECはFTA(自由貿易協定)に投資の自由化や熟練労働者に限定した人の移動の自由化を加えた「FTAプラス」と称されます。

また自由化の範囲と水準は日本がASEAN諸国と締結している経済連携協定(EPA)に近いと言われています。

 

AECが注目される理由は?

ASEANはAEC実現に向けて

  1. 単一市場・生産拠点
  2. 競争力のある経済地域
  3. 公平な経済発展
  4. グローバル経済への統合

という4つの戦略目標を掲げています。

もともとASEANは東南アジア10カ国を含む巨大な地域協力機構で、人口は約6.2億人です。NAFTAやEUを上回ります。

またGDPは2014年で約2.5兆ドルとインドを上回っていますが、中国の4分の1程度です。1人当たりGDPは約3978ドルで、中国とインドの中間に位置します。

このようにASEANには世界最大規模の市場があります。また市場の規模に加えて、ASEANは全体として人口高齢化のスピードが緩やかであるために潜在成長率も高いとされています。このことから消費市場の伸び代も大きいと言われます。

これらの理由から今AECには注目が集まっています。

 

AECと他の経済共同体との違いは?

日本総研の「ASEAN経済共同体(AEC)の行方」によると「AECとユーロ、NAFTA、TPPの違い」は以下の表の通りです。

○:実現済(かなりの進展あり)
△:目標とされているものの、 実現は難しい
×:実質的な意味で目標とされていない

なお、 AEC、NAFTA、TPPにおける「人の移動の自由化」は「未熟練労働者」を対象とした評価です。

項目 AEC ユーロ NAFTA TPP
関税撤廃
非関税障壁の撤廃
域外共通関税 × × ×
サービス貿易自由化
企画・標準の相互認証
貿易円滑化
外国投資の自由化
人の移動の自由化 × × ×
知的財産権保護
政府調達の解放 ×
競争政策
共通通貨 × × ×

世界には様々なFTAプラスが存在しますが、NAFTAと比較すると「規格・標準の相互認証」「外国投資の自由化」「政府調達の開放」などが不十分で、AECの自由化の水準はそれほど高いとはいえません

 

AECと日本の関係は?

近隣国である日本とは今後どのような関係になっていくのでしょうか。

世界最大規模の市場を持ったASEANがこれから経済発展を遂げた場合、日本を含む東アジアの経済成長と安定を支える基盤となると考えられます。

また人口減少に伴う潜在成長率の低迷という問題を抱える日本経済にとって、今後のAECとの関係は重要な問題になっていくこといえます

日本総研の「ASEAN経済共同体(AEC)の行方」によると、2012年のASEANにおける対内直接投資残高の割合は以下の通りです。

国・地域 割合
EU 20.7%
ASEAN 13.3%
日本 12.4%
アメリカ 11.5%
香港 4.2%
中国 2.8%
韓国 1.4%
その他 33.8%

※合計約1.2兆ドル

直接投資とは、企業が事業を行うことを目的とした投資のことです。国外企業が国内に対して直接投資を行うことを対内直接投資といいます。

対内直接投資のストックが対内直接投資残高です。

ASEANの対内直接投資の国別シェアにおいて日本は12.4%程度のシェアしか有していません。

ただ

  • 他国の対内直接投資がサービスや金融に集中していること
  • 日本の対内直接投資が製造業に集中していること

などから、日本は製造業の対内直接投資に関しては他の国より優位な立場にあります

また、そうしてASEAN地域に進出した日本企業の生産ネットワークが発展したため、ASEANにおける日本企業の影響力は非常に高いです。

これらのことから日本はASEAN市場においてとても有利な状況にあると言えます。

しかしASEANの主要貿易相手国は現在中国です。近年は中国がASEANとFTA(自由貿易協定)を日本に先駆け発行させたこともあり、対中貿易が急激に増加しました。

それに伴いASEANの対日貿易額は著しく減少しています。

このことから、ASEANにおける貿易は中国」「対内投資は日本」という二分化現象が起きています。

これからのAECと日本の関係は、今まで獲得してきた対内直接投資における影響力を生かして、どう生産ネットワークを発展させていくかが大切になっていくと考えられます。

また、最大の貿易相手国である中国との関係も非常に重要になってくることが予想されます。

 

AECの行方は?

国連の人口予測によると、中国とASEANの年齢階層別に見た人口構成はかなり異なります。

2015年時点ですでに人口ピラミッドが「つぼ型」となっている中国は、2050年に高齢化がさらに顕著となります。一方、 ASEANの人口ピラミッドは2050年でも「釣鐘型」を維持する見込みです。

このことは、ASEANが単一市場を実現すれば中国より潜在成長率が高くなる可能性を示唆しています。

経済成長には労働力だけでなく資本の投入と生産性の上昇が不可欠ですが、前者はAECに伴う対内直接投資の増加によって、後者はAECおよび中国を上回る自由貿易協定によって誘発される可能性が高いです。

なぜなら非効率的な企業や産業はAECやFTAによって厳しい競争にさらされるからです。

またASEANは消費者層の発展によって消費市場としての伸び代が期待されており、こうした期待はさらなる対内直接投資を促すと思われます。

それはさらなる域内経済の活性化に貢献するはずです。

しかしながら、AEC実現に向けた取り組みは関税撤廃以外では遅れが目立っています。

またAECに対する関心がTPPにより薄れるという問題もあり、AECの完全実現に向けて改善点はまだ多く残されています。

 

巨大な市場の貿易活性化のカギ

AECは東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟する10カ国が、域内の貿易自由化や市場統合などを通じて成長加速を目指す広域経済連携の枠組みのことです。

AEC実現に向けてASEANは

  1. 単一市場・生産拠点
  2. 競争力のある経済地域
  3. 公平な経済発展
  4. グローバル経済への統合

という4つの戦略目標を立てています。

その中でも特に「単一市場・生産拠点」を最も重要としています

「単一市場・生産拠点」は

  • 関税の削減などによる貿易自由化
  • サービス貿易の自由化
  • 投資の自由化
  • 熟練労働者の移動の自由化
  • 資本移動の一層の自由化

という5つの柱で構成されます。

ASEANの人口は約6.2億人と市場規模は非常に巨大であり、潜在成長率も高いです。また消費市場の伸びも期待されている市場となっています。

ASEAN加盟国がアジア諸国にもつ様々なFTAは、貿易活発化の切り口となると期待できます。しかし実際のAECの進捗は遅れており、組織の運営方法などに改善の余地があるされています。

これからその運営方法の改善やいかに世界からの注目をAECに向けていくのかが、AECの加速・成功への鍵となってくると予想されています。

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