20代で読んでおくべき本「新・観光立国論」書評

この記事は書評に関する寄稿記事です。40代ビジネスパーソンの方より頂いた、40代目線から見た20代のうちに読んでおくべき本の書評をもとに構成しています。今回は「新・観光立国論」についてまとめました。日本は観光業がさかんですが、他の観光立国と比較すると大した数字は出ていません。日本に必要なことは何でしょうか。

新・観光立国論ってどんな本?

この本はアンダーセンコンサルティングやソロモンブラザーズ、ゴールドマンサックスでアナリストを務めたデービッド・アトキンソン氏の著書です。

アトキンソン氏は、アナリスト時代に日本の銀行に眠る巨額の不良債権を指摘し、その後問題が顕在化したことで一躍有名になりました。

来日後茶道に打ち込んで日本文化に傾聴する一方、日本の国宝や重要文化財に興味持ち、その修繕を行う会社に入社しました。

現在は社長兼会長として経営の立て直しをする傍ら、文化財の専門家として日本の文化財政策、観光政策に対しアドバイスを送っています。

この本でアトキンソン氏は、おもてなしではなく何が楽しめるのかをアピールし、国別のマーケティングや観光インフラの整備を行うことが必要だと提言しています。

成長産業である観光やその周辺ビジネスに興味がある就活生やビジネスパーソンに読んでもらいたい1冊です。

 

日本の外国人観光客は少ない?

日本の外国人観光客は過去最高の約1300万人に到達しました。

しかしアトキンソン氏は、日本ほどポテンシャルのある国であれば驚くほど少ない数字だと指摘します。

外国人観光客数1位のフランスは約8473万人、4位の中国は約5569万人で、日本ははるか下位の26位です。

観光収入でみると1位のアメリカは約2147.7億ドル、2位のスペインが約676億ドルで、日本はそれを下回る約168.7億ドルにすぎません。

2030年には全世界の国際観光客到着数が年間約18億人と発展が予測される市場だけに、しっかりと経済政策として観光業に注力すべきだというのが著者論点です。

 

日本が観光立国になりきれないのはなぜ?

観光立国になるには

  • 気候
  • 自然
  • 文化
  • 食事

の4つの条件が必要不可欠とされています。

観光立国のフランス、イタリア、中国はこの条件をすべて満たし、日本も同等に有利だと言います。

気候に関しては、四季があり、北海道でスキーもできれば沖縄でビーチリゾートを楽しむこともできます。

食事は文化遺産になった日本食があり、文化についても歌舞伎や日本庭園などの伝統文化もあります。

アニメ・ファッションなどの現代文化もあります。

しかしこれだけ観光資源に恵まれながら26位に甘んじているということは、むしろ深刻な問題を抱えていると考えるべきです。

これまで日本は観光業よりも工業分野に注力してきました。

そのため文化財への予算が世界の観光立国に対して驚くほど少なく、観光業マーケティングやインフラ整備も遅れていると言います。

おもてなしに代表されるサービスの質や治安の良さを盛んに打ち出していますが、外国人からすると的外れのアピールだと言います。

外国人観光客は、気候・自然・文化・食事のどれか4つの条件に根ざしたものを目的にしていて、治安の良さやマナーを味わうためにわざわざ長時間も飛行機に乗って来ません

 

日本は外国人観光客に優しくない?

そもそも日本は外国人観光客にやさしい国ではないと指摘します。

成田空港の外国人向けカウンターが少なくいつも長蛇の列です。

電車の券売機もクレジットカード対応していません。

交通費も海外に比べて割高で、5分くらい遅れていいからもっと安くしてくれという声が多いそうです。

また外国人観光客のクレームの第2位は「ゴミを捨てる場所がない」ことだそうです。

物を売っておきながらゴミを自分で処理せよというのは、理解しがたい供給者側のご都合主義だと言います。

日本のサービスのアンケートを行ったところ、一方的に日本のやり方を押し付ける、融通がきかない、堅苦しいと酷評されるケースが多いと言います。

日本の観光業のサービスは国内向けにマニュアル化されているため、外国人にとって心地よいものとは言えません。

その根底にあるのが、ゴールデンウィークに代表される短期間で大量の観光客をさばこうとする日本ならではの観光業の特徴です。

ゴールデンウィーク限定プランなどはお客様視点のように見えますが、実はパッケージ化して効率化を図る供給者視点です。

個別の対応になるとうちではやっていませんとなりがちです。海外では別料金をとることで個別に対応するのが基本です。

 

観光立国になるためには?

日本が観光立国になるには発想を180度変えるべきだと指摘しています。

おもてなしという金銭的な見返りを求めない奉仕の心のようなイメージが浸透していますが、むしろお金を落としてもらうだけの高品質なサービスという発想を持つべきだと言います。

観光立国とされる国では外国人観光客数の増加ではなく、観光収入が目標に掲げられます。

日本に訪れる外国人観光客を国別に見ると、1位が台湾の約283万人、2位が韓国の約275.5万人、3位が中国の約240.9万人、4位が香港で、ようやく5位が約89.2万人でアメリカです。

距離的に近い隣国からの観光客は数日滞在が多く、長期滞在が一般的なヨーロッパやロシアの観光客は少ないのが特徴です

またアジアの人々は食事や買い物に集中するのに対し、欧米の観光客は日本食や日本酒といった目的は共通するものの、日本独自の自然や伝統文化、アニメなどの現代アートを味わうことに重点を置いています。

つまり外国人観光客がなにを求めているかを国別にきちんとマーケティングし、それに合わせてインフラを整備する必要があるのです。

日本の観光政策にはまだまだやるべきことがたくさんあります。

裏返せばそれだけ成長する余地があるということです。

日本が観光立国なった暁には観光業が日本経済に大きな影響をもたらすでしょう。

 

本当に求められているものを見つけ出す:編集後記

東京オリンピックのスピーチがきっかけで日本の「おもてなし」をアピールする風潮が広まりました。

ただこの記事に書いてあるように、外国人観光客は治安の良さやおもてなしを受けるために来日するわけではありません。

おもてなしは目的ではなく、サービスの1つなのです。

この意味で、日本が観光立国になるために必要なのは日本のアピールポイントを見つけることだと思います。

企業がビジネスパーソンを評価する時、マネジメント力やスキルなどで評価するはずです。もちろん大切なことですが、優しいなどで評価したりはしません。

日本の観光も同じです。外国人観光客が本当に求めるものをみつけ、日本の強みをアピールすることが求められるのです。

あわせて読みたい

カテゴリー