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2016.12.24
2016.12.24
2016年11月に、インドのモディ首相は高額2紙幣の廃止を発表しました。この発表はあまりにも突然行われ、猶予は4時間しかありませんでした。
インドの使用通貨はルピーです。紙幣が9種類、硬貨が9種類です。
5ルピー、10ルピー、20ルピー、50ルピー、100ルピー、500ルピー、1000ルピーの紙幣があります。この他にほとんど使われることのない1ルピーと2ルピーがあります。
このうち廃止された紙幣は500ルピーと1000ルピーで、流通している紙幣の約80%を占めていました。新紙幣の発行が追いつかず、紙幣の不足状態が続いています。
廃止された2紙幣は、2016年12月30日まで口座への預入が許可されています。
高額紙幣の廃止によて、日本企業も影響を受けています。インドは現金で商品を購入する人が多く、オートバイなどを中心に販売数が落ち込んだと見られています。
モディ首相は貧困撲滅のためには不正資金や汚職をなくす必要がある旨の発言をしています。インドで高額紙幣が廃止された理由は大きく3つあるとされています。
廃止された理由
インドにはGDPの半分ともいわれる規模の、記録に残らない地下経済があるとされています。一部の富裕層はあらゆる手法を使って、タンス預金として現金を所持しているようです。
またインドは、日雇い労働者などの多くの低所得者は納税していないといわれています。脱税による経済的な損失は、インドの経済成長の妨げにもなると考えられています。
インドでは高額紙幣の偽札が多く出回っていました。偽札を利用した犯罪などが増加していた状況もあり、偽札対策として高額紙幣を廃止しました。
インドは現金主義の国であり、不動産や自動車といった高額な買い物でも現金支払いが好まれています。そのため銀行口座を持っていない人が多い状況です。
今回の高額紙幣は銀行の窓口で新紙幣と交換できるようになっていました。しかし銀行口座の開設を推奨するために、新紙幣との交換は途中で中止になりました。口座を開設して預金して初めて新貨幣が使える仕組みになったのです。
政府は半ば強制的な銀行口座の開設と預金の推奨によって、所得税納税者を増加させようとしていると考えられています。また国内の資産状況を把握できるというメリットもあります。
モディ首相の高額紙幣廃止の発表後、インドの銀行やATMには新紙幣を手に入れようとする人の長い行列ができました。
高額紙幣の価値がなくなると思い込んだ、タンス預金をしていた女性による自殺も起きています。急な発表により情報が正確に伝わらなかったことが原因です。
こうした混乱状態を招いたことから、インド国民から高額紙幣廃止措置の手際の悪さが非難されています。一方で、不正資金がなくなり富裕層と貧困層の格差が縮まるとモディ首相を評価する意見もあります。
高額紙幣廃止による混乱は、インド経済の成長に影響を与えると考えられています。新紙幣の発行が追いつかず現金不足が続くインドでは、お金を使わなくなる人が増え、消費が落ち込みました。
インドの経済成長率は毎年7%を超えています。しかしイギリスの大手金融機関HSBCによると、今年度の成長率は昨年度と比べ1%ほど低下すると考えられています。
流通している紙幣の約80%が廃止になったことで、インドではデジタル決済への需要が高まっています。
インドのモバイル決済最大手のPaytm(ペイティエム)の利用は急激に増えています。Paytmによると、取扱高は約1000%、取扱件数は約700%も伸びています。また平均利用額は約200%増加し、アプリのダウンロード数は約300%に達しています。
インド準備銀行もデビットカードの普及を目指しています。先進国と同じように、現金利用を減らしていこうとする考えです。
また仮想通貨ビットコインの利用も増えています。インドの仮想通貨取引所ZebPayによると、ビットコインに関する問合せが急増しているようです。
紙幣のように偽造されることがなく、今回のように政府の政策に影響されないことから、紙幣よりもビットコインを信頼するようになっていると考えられます。
以前からインドではビットコインが少しずつ普及していました。今回の高額紙幣の廃止により、インドのビットコイン利用の広がりに拍車がかかっています。
インドの高額紙幣の廃止の理由はいくつかありますが、選挙対策もその1つとされています。モディ首相は不正資金のあぶり出しなど富裕層に対して厳しくすることで、貧困層の支持を集めるねらいがあったとされています。
しかし高額紙幣の廃止で最も影響を受けているのは農村部といわれています。農村部には銀行数が少なく、デジタル決済も普及していないからです。そのため農村部の収穫物の都市への供給も減っています。
高額紙幣の廃止は手際が悪く、あらゆる方面への事前予測が不十分な印象を受けます。長期的にはインドのブラックマネーをなくし、経済の成長につながるでしょう。しかし、高額紙幣の廃止に伴うさまざまな変化による混乱はしばらく続くと考えられます。