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板前になるには15年かかる?元保険屋が見た40代高級寿司店オーナーシェフの人生

この記事は寄稿記事です。 保険の営業職に勤めていた経験を持つAさんが見た、40代の高級寿司店オーナーシェフの人生を紹介します。都内の人気高級寿司店の予約は、半分以上が外国人観光客で占められています。板前になるには時間がかかり、自分のお店を持つようになっても忙しい生活は続きます。

訪日観光客による寿司ブーム

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寿司店なのでオーナーシェフというよりオーナー兼板前といった方がしっくりくるのかもしれません。いま空前の寿司ブームが到来しています。特に海外において寿司の人気は高まっています。

都内の人気高級寿司店の予約表を見ると、およそ半分は外国人観光客で占められています。お店によっては3分の2ほどのところもあります。

その理由は海外に寿司店が増えたことで、寿司の認知度が高まったからです。円安の効果もあって、本場の日本の寿司を食べに来る人が多いのです。

実際に日本で寿司を食べてみると「美味しいからまた来よう」という人が多いようです。こうして日本の寿司にとって好循環が生まれています。

その反面日本人の常連客は大変です。予約が取れなくなり、お店に来た時に次の予約を押さえないといけない状況です。

 

ブームといっても特別なことはしない

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人気の高級寿司店は毎日2回転の満席です。客単価はお酒代も含めて約2.5万円です。お店の客席数が15席だとすると、1日の売り上げは約75万円、1カ月で約1800万円、年間で約2億円以上の売り上げです。

ただ海外の寿司ブームに合わせて何か特別なことをしているわけではありません

私が出会った寿司店のオーナーは、お店を開いて10年目です。メニューのラインナップに小さな手直しはあるものの、開業以来大きな変化はないといいます。

「自分達は基本的に味も変えていない。お客様の傾向が時の移り変わりに合わせて変わってきている」と仰っていました。

 

板前になるには時間がかかる

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高卒や中卒、もしくは中退といった人が「何か仕事でも」という軽いノリでも働けるのが飲食です。

ただし板前は違います。板前になるための修業は大変です。修行をはじめて約15年間ずっと下働きをしてようやく自分のお店を持つことができます

とはいえそんなに長く修業する必要があるのかというとそれはないといいます。包丁さばき、穴子を煮る、寿司を握る、これらの寿司屋に必要な技術を身につけようと思えば2~3年で習得できます。

修行期間を短くするポイントは2つあります。

技術を身につけたうえで、いかに先輩や上司に気に入られるかです。要は社内政治の上手さが求められます。飲食店は基本的にすべてのことが顧客につながっています。

洗い物1つとっても、お皿に汚れがついていればもうアウトです。そのため細かいことをきっちりできないと先輩や上司の信頼が得られません。信頼が得られないということは、仕事が回ってこないということです。

もう1つは人が辞めるといった人員状況です。人が辞めればその人の分の仕事をみんなで補わなければならなくなり、自分にも仕事が回ってきます。そのタイミングで新しい仕事を覚えていけるのです。

こうした事情があり、なかなか技術を習得していくことが難しいといいます。

最近では寿司の専門学校ができています。新人教育に時間がかかる寿司店の状況を逆手に取った、目のつけどころがいいビジネスといえます。

 

どの寿司店で修行したかが重要

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基本的に同じお店にずっといるという板前は少ないです。多くの板前は何店舗かお店を転々とします。理由はさまざまですが、お店が潰れたり、先輩や上司と合わなくて喧嘩したり、別の寿司店に誘われたりというのが多いようです。

板前は若い頃にやんちゃしてきた人が多いので、お店の中での人付き合いが技術的な修業よりも1番難しいといいます。

自分でお店を持つ時にはどこの寿司店で修業したかが重要です。要は影響力です。

ただ新しく開店しただけの寿司店に行こうと思う人はそういません。「有名な寿司店で修業した人が新しいお店を出す」となれば行ってみたいと思う人は多くなります。

そのためお店を始めるとまず来店するのは、以前働いていたお店で出会った顧客だといいます。そのまま常連さんになる人も多いようです。

 

築地が休みの前夜は飲みに出かける

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長い修行期間では、先輩達の顔色をうかがい、殴られ、怒られ、朝早くから夜中まで働き続ける生活を送ります。しかしいざ開業となってもまたハードな生活が続きます。

朝6時頃には築地に行って新鮮な魚を買います。ランチ営業がある場合はすぐにお店に行きます。睡眠時間は3時間ほどです。

長い期間修業してきたため失敗できないというストレスもあり、お酒の量が増えるようです。

月に何度か、水曜日に築地市場の休業日があります。その前日の夜はお店が終わった2時頃から飲みに出かけ、日頃の憂さ晴らしをしています。

多くの場合、前のお店の修業仲間や先輩達と出かけます。朝7時頃まで飲むこともあるらしく、そのままお店に行くこともあるそうです。板前は坊主頭の人が多いので、何人もの坊主の人がお店にいるだけでかなり異様な光景でしょう(笑)。

週に1度のお休みだけ家族とゆっくりできます。しかし日頃の疲れがたまっているので、なかなか家族サービスができないといいます。そうこうしているうちに夕方になり、翌日はまた朝早くから築地に行くのです。

 

長い修業期間が自信を生む

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海外で日本食の人気が高まっています。その中でも特に人気があるのは寿司です。寿司を食べるために日本に来る外国人観光客も多く、都内の高級寿司店は連日予約がいっぱいだといわれています。

板前になるには時間がかかります。しかし学歴はほとんど関係ありません。修行期間にどれだけ技術を身につけたかが重要になります。軽いノリで働ける飲食といっても、板前になるにはやはり覚悟が必要です。

都内で人気の高級寿司店ともなると、売り上げはかなりのものです。しかしブームだからといって、外国人観光客に向けて特別なことはしていません。

長い修業期間で培った技術やお店を信頼しているからこそ、食べる人を納得させる自信があるのだと思います。

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