20代で読んでおくべき本「負けない作法」の書評

この記事は書評に関する寄稿記事です。40代ビジネスパーソンの方より頂いた、40代目線から見た20代のうちに読んでおくべき本の書評をもとに構成しています。今回は「負けない作法」についてまとめました。スポーツの世界、とりわけ部活動に関しては、未だに上下関係や監督と選手との主従関係が強いです。そのため行き過ぎたスパルタ指導もまかり通ってしまいます。それで選手は幸せでしょうか。

負けない作法ってどんな本?

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この本は帝京大学ラグビー部を創部40年目にして初の大学日本一へ導き、さらに全国大学選手権史上初の6連覇を達成した岩出雅之監督の著書です。

スポーツの名将と言われる人たちは当然ですがチームが勝つことが最低にして最大の目標です。しかしこの岩出監督がほかの名将と違って私が共感するのは、最終目標が大学選手権に優勝するチームをつくることではないという点です。

岩出監督はこう言っています。

私が願うのは、卒業後、彼らが社会人として周囲の人たちから愛され、信頼され、幸せに生きていく力を身につけてほしい出典:負けない作法

岩出監督は教育者なのです。この本のタイトルを勝つとせずに負けないとしている点もそうです。岩出監督は勝つことは確かに嬉しいことだけど、自分の心はあまり動かなくなっているそうです。

 

幸せを感じて「自分づくり」

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勝ち負けは相手との相関関係で決まるからです。自分たちが最高のプレーをしてもそれより相手の力が上回れば負けてしまう。逆に自分たちが実力を出せなくても、それより相手が下回れば勝利を得ることができる。つまり勝敗は単なる結果に過ぎないのです。
しかし、勝敗も大切な目標の一つですが、何よりも大切なのは自分たちで目標を定めること、そして努力を積み上げてきたもの、加えて本来の実力をそのときに出し切ることです。出典:負けない作法

監督が見つめているところはほかの監督たちと全く違い、物事の本質を捉えています。この本では少しだけ触れているのですが、岩出さんがこのように考えるようになった理由のひとつに教え子の自殺というショッキングな出来事があったからだと私は思います。

本当にいやであれば逃げることも必要だと言っていますし、日本のスポーツに蔓延している自己犠牲や献身という考え方も否定しています。

他人のためという行為は自分によっぽどゆとりがないと本来はできません。そのゆとりがない段階で他人のためを前面に出して自己犠牲的になると、人はどうしても「私はここまでやったのに(あなたはなぜ返してくれないの)」と見返りを期待してしまうといいます。

まずは自分のために、人から授かる幸せを精一杯感じることが大切です。そうすると何か返したいという気持ちになり、献身ではなく貢献になります。自分がしたいからそうするのです。

他人のための前にまずは自分のためをしっかり行なうこと。「自分づくり」をまず先に行い、そこでできた余裕が仲間のために向かうのだといいます。

 

余裕がなければ他人のために行動できない

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自分づくりは自分を大切にすることから始まります。自分が好きなことをする。自分のことは自分で決める。そのためにラグビー部では上級生たちが雑用などをします。学年が上になればなるほど雑用が増えていくそうです。上級生が威張り散らしたりもしないそうです。

こうする理由は、部員の中で1番余裕がないは1年生で、余裕がないのに他人のために行動することはできないからです。1年生は自分達が大切に扱われていることを感じながら自分を大切にするということを学び、そんな恵まれた環境でじっくりと自分を見つめることから始めているそうです。

アメリカンフットボールの大学日本一を6回成し遂げた京都大学の元監督、水野弥一さんという方がいます。他大学は私立校で推薦入学があったり、付属高校のアメフトが強かったりと、選手集めには苦労しません。

ですが京都大学は最難関大学です。そこを突破するだけでなく運動能力も求められます。その環境で日本一になることは大変価値のあることだと思います。

その京都大学アメフト部でも、入部したばかりの1年生は部員の中で1番大切に扱われているといいます。その大きな理由は限られた部員が退部してしまうのを避けるためということだったそうなのですが、結果的に岩出監督が意図するような、自分たちが大切に扱われているという自己肯定感が生まれたのではないでしょうか。

 

愛情を感じるということ

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してくれたことが嬉しい。だからそれを自分も返したい。結婚して子供が産まれて、その子供を自分の手足のようにこき使う親はいるでしょうか。

最近ではそんな考えられない親の存在がニュースになったりしています。そんな愛情をもらえなかった子供たちが大人になると、他人を傷つけるだけでなく自分も傷つけるなどさまざまな弊害が出てくると言います。

やはり人は誰かに愛されている、誰かに必要とされている、誰かに認められている、そんな自己肯定感をある一定の時期はたっぷり味あわなければいけないのだと感じます。

そう考えると、帝京大学のラグビー部で行っていることは人間が産まれながらにもっている環境づくりと同じで、チームがまさにひとつの家族という考え方がベースになっているのです。

家族は子供達が勝とうが負けようが、とにかく幸せに育ってくれることを願っています。

子供たちが何かを成し遂げたことは嬉しいし、何か大きな失敗をしたことは確かに悲しい。ですがそのことに家族は大きく心を動かされることはなく、ただそばにそっといて幸せに生きてくれることを望んでいるだけです。

結局はすべては愛情なのだと思います。岩出監督が部員達に愛情を注ぎ、その部員達が将来誰かに愛情を注ぐ。だからこそ負けない集団になっているのではないかと感じる1冊です。

 

自分の幸せが他人に幸せを与える:編集後記

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近年はあまり聞かなくなりましたが、以前は学校の部活動などでスパルタ指導が問題となっていました。厳しく指導することでチームを強くする方法は有効な場合もありますが、行き過ぎればそれは権力乱用や暴力に繋がります。

特にラグビーなどの体を追い込むチームスポーツはスパルタ指導になりがちだと思います。そんな中で岩出雅之監督は、チームに愛をもたらしました。

未だにほとんどの部活は、下級生が雑用をやっていると思います。年功序列が染み付いた日本ではそれが当然のように扱われています。監督はそこに割って入り、チームを主従関係から家族にしました。そう簡単にできることではありません。

家族であれば、弟や妹、息子や娘などに気をかけて、できないことを教えてあげようと環境作りをしますよね。チームが家族であれば、下級生に環境を作ってあげることは当然のことです。

このような愛情を受けた「息子達」は、それだけで幸せです。自分が幸せであることこそが、他人に幸せを与える条件なのです。

岩出監督の愛情を感じたい方は、ぜひこの本を読んで下さいね。


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