政治・経済

GATTの特色は?WTOに引き継がれた理由は?日本に影響を及ぼした?

2016年11月4日にTPPが承認されました。TPPにおける農業に関する論争は、GATTの際の論争と似ていることをご存知でしょうか。GATTとは「関税と貿易に関する一般協定」です。1995年にWTOに引き継がれています。日本の農業に大きな影響を与えました。この記事ではGATTの特色、WTOとの違いや背景、日本への影響についてまとめました。

GATTとは?

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GATTとは「General Agreement on Tariffs and Trade」の略称です。日本語では「関税と貿易に関する一般協定」と訳されます。1948年に発足し、日本は1955年に加入しました。

GATTの目的は?

GATTは無差別で自由な貿易を目指すために発足しました。貿易制限措置の削減や貿易の無差別待遇を基本原則としています。特定の国を優遇することなく、全世界の関税を引き下げることを目指しています。関税を引き下げることで貿易を活発化させてるのが目的としています。

当時の貿易では関税や輸出入制限などが壁となっていました。GATTは国際貿易を活発化させて世界経済を支えようとしたのです。関税を撤廃を目標としています。

GATTが目指した自由貿易とは?

GATTでは自由貿易の維持や拡大が提唱されました。自由貿易とは制限や保護がない状態での貿易のことです。

一方で、国内産業を保護する貿易は保護貿易と呼ばれます。関税や輸入量の制限を行う貿易のことです。それぞれの国が自国の利益だけを追求して保護貿易をした場合、世界単位での貿易は混乱します。第二次世界大戦が起きたのは主要各国が保護貿易を行ったことが一因とされています。

経済学では保護貿易よりも自由貿易が良いとされています。自由貿易が優れているというのは世界の経済学者にとっての唯一の共通認識と言われています。

第二次世界大戦の教訓からGATTは自由貿易を目指しています。

GATTとラウンド

GATTで加盟国間が貿易問題の交渉を行う場をラウンドといいます。二国間で行うよりもラウンドで多国間で話合った方が効率がいいからです。ラウンドはこれまで8回行われてきました。8回に渡るラウンドの末、先進国の平均関税率は4%程度までに低下しています。

1986年から1994年にわたる8回目のラウンドはウルグアイ・ラウンドで、GATTの機能を強化したWTO(世界貿易機関)の設立が決定しました。WTOはGATTの役割を受け継ぐ形で1995年1月に設立され、GATTは1995年末に廃止されています。

 

GATTとWTOの違いは?

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GATTとWTOには、いくつか違いが見られます。

GATTは「関税と貿易に関する一般協定」として、一般協定という形を採っていました。加盟した国で適用される一般規定にすぎないということです。GATTは正式な国際機関ではありません。

WTOは国際機関として発足しています。加盟国はWTOの決定事項を守る義務があり、紛争処理機関も設けられています。

適用範囲にも違いがあります。GATTでは貿易の対象がモノの取引に限られていました。WTOでは貿易の対象に知的財産やモノ以外のサービスも含まれているのです。

GATTとWTOは権限の範囲に違いが見られます。WTOの方がより拡大した権限を規定しています。

 

GATTがWTOに引き継がれた理由は?

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WTOには2016年1月末時点で162の国と地域が加盟しています。外務省のホームページによると日本は1955年にWTOに加盟しました。

WTOがGATTから引き継がれた背景には、自由貿易の推進機能の強化という側面が挙げられます。

貿易が進むにつれ、国際紛争の数は増加することになりました。紛争増加によって効果的な紛争処理手段への要請が強まったのです。GATTにある紛争処理に関する規定をさらに強化する必要性に迫られました。

GATTは協定という形を取っていたため統制力が不十分でした。国際機関として設立されたWTOはGATTより統制力が強化されました。

WTOでは効果的な紛争解決能力が向上しています。WTOではGATTの紛争処理の規定を強化した紛争解決制度が採られているためです。更に紛争処理機関も置かれました。実際にWTOでは紛争案件数は増えました。

外務省のホームページによると、GATTでの紛争案件数は1948年から1994年までの間に年平均で約6.7件でした。WTOでの紛争案件数は1995年から2018年8月までの間に年平均で約24.5件に上ります。年平均の紛争案件数はGATTの頃から約3.7倍の増加となったのです。WTOの紛争処理に対する加盟国からの信頼度がわかります。

出典:外務省 よくある質問集
出典:世界貿易機関(WTO)紛争解決制度とは

GATTが現在の日本にもたらした影響は?

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GATTが日本へ及ぼした代表的な影響は、ウルグアイ・ラウンドでの農業交渉が挙げられます。

ウルグアイ・ラウンドの農業交渉

ウルグアイ・ラウンドはGATTでの最後のラウンドです。1986年から1994年まで124ヵ国で交渉が進められました。ウルグアイ・ラウンドでは農産物を例外なく関税化することが合意され、日本の農業へ影響を与えました。

農業に関する交渉では、当時のEC(現在のEU)とアメリカの間で農産物の貿易の対立が激化したことが背景でした。交渉は進められましたが難航し、途中からアメリカが主導する「例外なき関税化」の主張が強まりました。

最終的に農業分野では関税の削減率が提案され、各国共通のルールとなりました。

ウルグアイ・ラウンドでの決定

ウルグアイ・ラウンドでは「関税化」と「ミニマムアクセス」が決定されました。

「関税化」では、貿易品目に関税を払えば自由に輸入できることになりました。GATTは関税の撤廃を目標としていますが、輸入数量制限を関税に置き換えることで貿易の自由化が進んだのです。関税はかかりますが、輸入量は自由になりました。

関税化に加えて、ミニマムアクセスという最低輸入機会も提唱されました。ミニマムアクセスは、貿易品目に最低限の輸入枠を義務として設定したものです。最低限の量が決められたことで、不景気でも貿易が一定以上行われるようになりました。

日本の農業への影響

日本では「米を輸入させない」との立場が強かったため、米の最低輸入量を受け入れることで関税化を6年間猶予されました。1999年に米の関税化が行われます。

関税化をした背景には、例外なき関税化を原則とするWTOの交渉で関税化の拒否を続けることは難しいとの判断がありました。拒否し続けることでさらに追加的な譲歩を求められることにもなり、結果として代償が大きくなるおそれもあります。

関税化に至るまで、国内では米の関税化に反対する動きが強まりました。一方で関税化による国内市場への影響はあまり出ないとの考えもあり、農業問題に対する考察の場となったといえます。

 

GATTとTPPは似ている?

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現在ではTPPによる農産物の関税についての交渉に焦点が置かれています。GATTのウルグアイ・ラウンドでの状況と似ている点が指摘されています。

TPPでは農産物の関税が大きなポイントとなっています。TPPでは各国の貿易の自由化が提唱されており、関税の撤廃によって貿易の簡素化が進むことによる輸出入の迅速化が望まれています。

一方で日本の農業界からは反対の動きもあります。TPPによる関税撤廃で日本の農業の生産額が大きく落ち込むことが予想されるためです。国内の農業を守る関税を撤廃すべきでないという見方があります。ただ関税が撤廃されても農業の持続に影響は少ないとの見方もあり、対立しています。

GATTのウルグアイ・ラウンドでは「関税化」、TPPでは「関税撤廃」という形で貿易の自由化が提唱されました。いずれも貿易の自由化という面で共通していますが、どちらも貿易の自由化への反対意見が目立ちます。

強固に反対する姿勢はかえって代償を強くするとの見方もあったことから、GATTでは関税化の承認につながりました。

2016年11月4日には、衆院TPP特別委員会でTPPの承認案と関連法案が可決されました。TPPにおける農業に関する論争は、GATTの際の論争とも比較して注目されることになります。

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