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2016.11.25
2016.11.25
パラドックスとは、ギリシャ語で「矛盾」「逆説」「ジレンマ」を意味します。正しそうに思える前提と妥当に思える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉です。
例えば「急がば回れ」という言葉があります。普通に考えれば急いでいる時は最短距離を通る方がいいと考えます。ただ実際には最短距離は障害物などがあるため、まわり道をするのがいいというものです。
このように「一見正しく見えるが、よく考えると正しいとは認められない説」「一見正しくないように見えて実は正しい説」などをパラドックスといいます。
もともとは古代ギリシャにおいて、数学や哲学の世界で使われていた言葉とされています。定義や推論に対する厳密性がより求められるパラドックスという概念の登場は、当時の数学や哲学の発展に大きく貢献しました。
パラドックスは他にもいろいろな場合に応用できる考え方のため、様々な分野で使用されるようになりました。
パラドックスの例として有名な小話に「アキレスと亀」があります。
もちろんみなさんは、実際にそんなことは起こらないということは分かりますね。このようなパラドックスにまつわる小話はいくつもあり、どこかで聞いたこともあるかもしれません。
ただパラドックスは、そのような単なる小話に過ぎず、ビジネスの世界にも多く存在しています。中には知らないと結果として大きな悲劇を生んでしまうケースも少なくありません。ここではその内の5つの例を紹介します。
パラドックスの5つの例
経営学者ジェリー・B・ハーヴェイ (Jerry B. Harvey) が著書「アビリーンのパラドックスと経営に関する省察(The Abilene Paradox and other Meditations on Management)」で提示したパラドックスです。
「アビリーン」とは、著書の中でこの現象を説明する小話の中でハーヴェイが用いた町の名前にちなんで付けられました。小話の要約は以下の通りです。
この現象は、集団思考の1つのかたちであり、多くの業績不振の企業にも当てはまる例です。自分たちが間違った方向に向かって進んでいることに気づいても、誰もそれを口に出さなければ、行き詰るまでみんながその現状を維持してしまいます。
人は集団の中では、他の人と異なる意見になることを嫌います。日本人は特にその場の空気を読もうとして、流れに逆らわないようにする傾向が強いです。
このパラドックスは会社の意思決定やちょっとした話し合いにおいても起きる可能性があります。反対意見が1つも出てこないとき、意思決定があまりにもスムーズに進んでいるときは注意が必要です。
イノベーションのジレンマとは、業界トップとなった巨大企業が顧客のニーズに応えようとして、品質の高い製品サービスを提供しようとした結果イノベーションが遅れてしまうことをいいます。ハーバード・ビジネス・スクールのクレイトン・クリステンセン教授(Clayton M. Christensen)が1997年に提唱しました。
イノベーションには「持続的イノベーション」「破壊的イノベーション」の2つの種類があります。
イノベーションのジレンマは以下のような流れで発生します。
このようにして、大企業がベンチャー企業に負けてしまうこともあります。クリステンセンはこの現象を、コンピュータのハードディスク業界の事例を元に説明しました。
製品の高機能化は大きな付加価値につながると信じられていた当時、この理論は衝撃的でした。しかしハードディスク業界に限らず、他の業界にも同じような現象がみられていたこともあり、この理論は説得力をもって受け入れられることになりました。
「ギッフェン財」と呼ばれる財が生じる現象をギッフェン・パラドックスと言います。
「ギッフェン財」とは、価格の上昇に対して需要量が増加する財、または価格の下落に対して需要量が減少する財のことを指します。収入の多い家計に比べて収入の少ない家計の方がより多く必要とする財である「劣等財」がこのような変動をすると考えられています。
イギリスの経済学者ロバート・ギッフェン(Robert Giffen)が示したことからその名がつけられました。
経済学における、価格が下がると需要は上がるという常識に反することから、パラドックスの1例と捉えられています。「ギッフェン財」は、具体的にどの財がギッフェン財なのかという例はなく、現実に存在するかは議論の決着がついていない理論上の財です。
ビールと発泡酒で考えていきます。一般的に、発泡酒よりビールの方が高価でビールを好む人が多いです。ただお酒を飲むために使えるお金を考えて、安い発泡酒を代わりに飲むことがあるとします。ビールの値段が上がればビールを飲む回数は減ります。これが普通です。
しかし発泡酒の場合はどうでしょう。発泡酒の値段が下がったとすると、発泡酒を飲む回数を減らし、その分ビールを飲む回数を増やすことができます。逆に発泡酒の値段が上がると、ビールを飲む回数を減らし、発泡酒を飲む回数を増やさなければならなくなります。この場合の発泡酒をギッフェン財といいます。
お酒を毎月50杯飲みたい人がいます。お酒に使えるお金は月に1万4000円、ビールの値段は1杯400円です。発泡酒の値段が変わるとビールと発泡酒の数は以下の表のように変動します。
発泡酒価格 | ビール(杯) | 発泡酒(杯) | 合計(杯) |
---|---|---|---|
250円 | 10 | 40 | 50 |
200円 | 20 | 30 | |
100円 | 30 | 20 |
発泡酒の値段を下げたとき、発泡酒の販売数は減少しています。
ある商品の販売数を増やしたいと考えた時に、値段を下げると販売数が減ってしまう可能性があります。商品がギッフェン財だった場合、値下げは逆効果になり売り上げが減ってしまいます。
逆に値上げにより販売数が増加する場合もあります。販促方法として安易に値段を下げてしまうのは危険だということを認識しておくといいでしょう。
不況下における人々の行動に矛盾が生じることを説明した理論です。
不況になった場合、人々はできるだけ消費をしないように倹約に努めます。すると、商品の売り上げの下落傾向が強くなります。売り上げが減るということは、会社は業績を伸ばすことができなくなるということです。会社の利益は減少します。人件費もそれなりにカットをする必要が生じるため、結果的には会社で働く人々の給料が減ってしまいます。
つまり、倹約をすることによって、結果として家庭の経済状況が悪化してしまうというパラドックスが生まれるわけです。
しかし不況下で自分だけがお金を使おうとしても効果はありません。むしろ周りの人が倹約している中で自分だけが貧しくなってしまいます。多くの人が理解し不況の流れを止めようとしなければ、倹約のパラドックスから抜け出すことはできないといえます。
多くの人が共有している資源が乱獲された結果、資源が枯れてしまうという経済法則です。アメリカの生物学者ギャレット・ハーディン(Garrett Hardin)が、1968年に論文「コモンズの悲劇(The Tragedy of the Commons)」で発表したことで世間に知られるようになりました。
経済においては、多くの人々による乱獲により市場が崩壊し、その後少数による独占市場が生じる現象を指します。また世界規模の環境問題にもコモンズの悲劇が当てはまる例はたくさんあります。
ビジネスとパラドックスは切っても切れない関係にあります。会社のため、自分のためにとった判断と行動が、結果としてすべてを滅ぼしてしまう可能性もあるのです。
そのようなリスクはできるだけわたしたちの周りから排除したいものですが、大事なことは自分たちのことしか考えず近視眼的になるのではなく、大局を見通し、全体を俯瞰しながら常に余裕をもって仕事に取り組むということです。
ビジネスの世界には他にもたくさんのパラドックスが潜んでいます。日頃から危機意識を持ち、様々な事例の研究を行って、リスクに対応できる自分、企業やチームを作ってくださいね。