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2016.12.1
2016.12.1
所有しているものに高い価値を感じ、手放すことに抵抗を感じる心理効果を保有効果といいます。何か新しいものを手に入れた時のメリットよりも、今保有しているものを失うことや環境が変化することのデメリットを強く感じてしまいます。
保有効果では、保有している期間が長いほどそのものに対する好感度は高まり、人やカテゴリによって強い弱いがあるといわれています。
部屋の片付けをする時に、物をなかなか捨てられず上手くいかない人もいるでしょう。いつか使うかもしれない、捨てるのはもったいないと考えるからです。
実際にはほとんど使わない、所持していても意味のない物を捨てられないのは、保有効果が働いているからです。保有し続けたことにより、自分の中で高い価値を感じ捨てられないのです。
保有効果は、カーネマンとクネッチによる実験によって確認されました。
カーネマンとクネッチは、無作為に集めた人々を3つのグループに分けました。第1グループにはマグカップを、第2グループにはチョコレートを与えました。そして第3グループにはマグカップとチョコレートのどちらか好きな方を選んでもらいました。
第3グループでは、マグカップとチョコレートがほぼ半数ずつ選ばれました。つまりマグカップとチョコレートのどちらか一方が特に好まれていることはなかったといえます。
次に、マグカップを与えたグループに、所有しているマグカップをチョコレートと交換できることを告げました。同様に、チョコレートを与えたグループに、所有しているチョコレートをマグカップに交換できることを告げました。この時交換には手間や時間がかからないように工夫されています。
その結果、最初にマグカップを与えたグループでは、約89%の被験者がマグカップを保有し続けることを選びました。チョコレートと交換したのは約11%だけです。また最初にチョコレートを与えられてグループでは、約90%の被験者はチョコレートを保有し続けることを選びました。マグカップと交換したのは約10%だけです。
グループ | マグカップ | チョコレート |
---|---|---|
第1グループ (最初にマグカップ) | 89% | 11% |
第2グループ (最初にチョコレート) | 90% | 10% |
第3グループ (最初に自由に選択) | 半数 | 半数 |
マグカップとチョコレートを自由に選ぶことができた第3グループでは半数ずつが選ばれたため、どちらも人気は同等といえます。そのため、交換ができると告げられた第1グループ・第2グループでも、被験者の半数は保有するマグカップあるいはチョコレートを交換すると考えられます。ただ結果的に交換する人はどちらも約1割に留まりました。
この実験結果から、新しいものを手に入れるメリットより、保有しているものを失うことデメリットを大きく感じたといえます。
マグカップとチョコレートの実験では、1度自分が保有したものを手放すという損失を避ける損失回避性により保有効果が生じたと考えられます。
損失回避性とは、損失を利益より大きく評価する人間の心理のことをいいます。利益から得ることができる満足より、同額の損失から得られる苦痛の方がはるかに大きいことから損失回避性が働きます。
保有効果は損失回避性がもたらす心理効果の1つです。もう1つ、損失回避性がもたらす心理効果に現状維持バイアスがあります。現状維持バイアスは大きな変化や未知なるモノを避け、現状を維持したくなるという心理効果です。
保有効果や現状維持バイアスに陥ると、自分の所有している財や意見、権利についての評価が高くなります。徐々に視野が狭くなり、他の人の考えや意見を正しく評価できなくなってしまいます。
自分が損失回避の状態に陥った時には、保有効果や現状維持バイアスを思い出すことで評価をフラットな状態に戻すことができます。
保有効果はマーケティングで利用されることが多くあります。
例えば「返金保証」がその1つです。通販番組でよく見られるこの制度は、顧客に1度商品を所有してもらうことで保有効果を生み出そうというものです。
人はある程度の価値を感じることができる商品を手にした場合、手放そうと考えることはありません。この「1度商品を所有してもらう」ことは大きな意味を持っています。
通販番組で「効果がなければ全額返金」というように使われます。商品への自信とともに、いかに保有効果の影響力が強いかがわかります。車の試乗や洋服の試着にも同様の効果があると考えられています。
商品だけに限らず、提供する環境やサービスにおいても顧客に1度保有してもらい、保有効果を活用してくことができます。商品やサービスを継続して利用している顧客に対しては、保有効果は大きな力を発揮します。顧客は商品やサービスのメリットを感じているので、その感覚を後押しするようなサービスなどを行うことで、保有効果による評価をさらに上げていくことができます。
逆に保有効果による壁がある業界もあります。携帯電話会社や保険会社です。これらの業界は新規顧客を獲得するのに苦労しています。
すでに持っている携帯電話や加入している保険に保有効果が働いているため、今あるものを手放して新しい商品を手にしようという気持ちにさせることは難しいです。そのためさまざまな観点やアプローチで新規顧客を獲得しようと努力しています。
人は所有しているものに高い価値を感じ、手放すことに抵抗を感じます。これは誰でも陥ってしまう心理効果であり、投資家が陥ると自分で保有株の評価を高めてしまい大きな損をしてしまうこともあります。
ただ熟練の投資家は保有効果に陥っても、保有株を簡単に手放すことができます。それは自分が保有効果に陥ることを理解しているため、保有株をフラットに評価することができるからです。
大切なのは保有効果を理解することです。理解すればマーケティングに利用することが可能になります。逆に、投資での損や無駄な買い物を減らすこともできます。ベストな判断をするためには保有効果を意識してみることをオススメします。