20代で読んでおくべき本「孫子」書評

書評・レビュー

この記事は書評に関する寄稿記事です。40代ビジネスパーソンの方より頂いた、40代目線から見た20代のうちに読んでおくべき本の書評をもとに構成しています。今回は「孫子」についてまとめました。孫子の兵法は現代にも通用する考え方としても有名です。多くの経営者がこの本を読んでいます。ただこの本の考え方は、経営だけでなくあらゆる場面に通用するものです。

孫子ってどんな本?

孫子は約2500年前、中国の思想家である孫武がまとめた軍事思想です。兵法書として馴染みがありますが、実は中身は人間とは何かを問いた哲学書です。読むと今からでも自分や組織を変えられるような即効性のある言葉がたくさんあります。

孫子がたどり着いたのは「戦わずして勝つ」という思想です。これからリーダーになる20代の人たちに、戦わないで勝つ意味を考えてもらいたくこの本を薦めます。

 

孫子の歴史

いまから約2500年前の中国は春秋戦国時代と呼ばれる動乱期で、各諸侯が国の存亡をかけて争っていた時期でした。孫子はそんな群雄割拠の時代に、春秋の五覇と呼ばれた呉王に仕えた孫武がまとめたとされる軍事思想です。

書物の分量としては意外に少なく、400字詰原稿用紙17〜8枚です。

孫氏は世界最古の兵法書として知られ、フランス皇帝のナポレオンやドイツ皇帝ヴィルヘルム2世なども読んでいたことが知られています。

日本に伝わったのは8世紀で、遣唐使の吉備真備が写本を持ち帰り伝えたとされています。武田信玄の「風林火山」もこの孫子からの引用で、戦国武将たちに広く読まれ、さかんに研究も行われました。

 

孫子の考え方

孫子は一般的には兵法書として広く親しまれていますが、中身は人間とは何かを問いた哲学書とも言われています。

人類の歴史は戦争の歴史です。戦争を考えるということは人間とは何かを考えるということにつながる、とある研究者は言っています。

孫子曰く、凡そ用兵の法は、国を全うする上と為し、国破るは之に次ぐ。出典:孫子

】孫子(孫武の敬称)は言う。基本的に戦争においては敵国を保全した状態で傷つけずに攻略するのが上策であり、敵国を撃ち破って勝つのは次善の策である

軍を全うするを上と為し、軍を破るは之に次ぐ。旅を全うするを上と為し、旅を破るは之に次ぐ。卒を全うするを上と為し、卒を破るは之に次ぐ。伍を全うするを上と為し、伍を破るは之に次ぐ。出典:孫子

】敵の軍団を無傷のままで降伏させるのが上策であり、敵軍を撃破するのは次善の策である。敵の旅団を無傷のまま手に入れるのが上策であり、旅団を壊滅させてしまうのは次善の策である。敵の大隊を無傷で降伏させるのが上策であり、大隊を打ち負かすのは次善の策である。敵の小隊を保全して降伏させるのが上策であり、小隊を打ち負かすのは次善の策である。

是の故に、百戦百勝、善の善なる者に非るなり。戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。出典:孫子

】したがって、100回戦って100回勝利を収めたとしても、それは最善の策とは言えない。実際に戦わずに敵を屈服させるのが最善の策である

 

戦わずして勝つ

人と人とが戦うこと、軍隊を組織すること、組織を率いるリーダーに求められること。戦争にまつわる様々な側面について深く考えが巡らされた結果、孫子が到達したのは「戦わずして勝つ」ことでした。

どこかで毎日戦争をしている動乱期にまとめられたものが不戦をうたっているのです。

なぜ戦わない方がいいのでしょうか。

戦い勝ったとしてもこちらも無傷というわけにはいかず、少なからず疲弊はします。また相手が降伏すれば戦力をそのまま組入れることができますし、次の一手を打つにも有利にことを運ぶことができます。

孫子は戦いの中に身を置く日々を送り、兵法家として仕えているなかで戦争の無益さや無常さに気づいていたのです。その根底に平和を願う気持ちが生まれていたのです。

 

戦わないという技術

ただ戦わないためには高度な技術が必要です。

話を論理的に組み立てる交渉、情報収集力と現状の分析、相手との駆け引きといった心理学まで、ありとあらゆる能力が求められます。

これが何を意味するかと言えば、つまり戦争は1番手っ取り早い誰でもできるもので、戦わないで勝つことが1番難しいことなのです。

言ってみれば、体罰をする上司は「自分に人を育て成長させる能力がない」ということを手を出して示しているようなものです。

またビジネスにおいては値下げ合戦が最たるものです。お互いに1円でも安くした結果、勝つには勝ったけど利益が全く残らず、社内も疲弊してリストラを余儀なくされ、挙句の果てには倒産してしまった会社も数多くあります。

要は手軽で手取り早い方法はその場限りのものすぎないのです。長期的視点で物事を考え行動するためには自分自身に高度な能力を身につけなければ簡単な方に流れてしまうのです。

言ってみれば、戦わないということは自分の強みを伸ばすことを意味しています。他の誰にも真似できない強みがあれば誰も戦いを挑んで来ないのです。むしろどうやって一緒に競合できるかを考えるでしょう。

戦いを仕掛けてこないということは、負けないということです。自分の強みを見つけ他の誰にも到達できないレベルで強みを伸ばすこと。それが職場でも市場でも求められる負けない処世術です。

 

その戦いは本当に必要?:編集後記

孫子の兵法は、軍事思想をまとめた本でありながら現代にも通用する考え方が書かれています。これはつまり、本質は2500年間変わっていないということではないでしょうか。

勝つことと負けないことは違います。スポーツで言えば、勝つことは攻めること、負けないことは守ることです。剣豪として知られる宮本武蔵は、一説によれば勝てる相手としか戦わなかったともいわれています。これもある意味で負けない戦い方です。

世の中には戦う必要のないものが多くあります。

例えば就職活動のとき、内定を何社からもらったか自慢しあっている人がいますが、最終的には1社に絞るわけですから数は関係ありません。多くの内定をもらっても第1希望の企業から内定がもらえなければ意味はありません。数で戦うことは必要ないのです。

このように、実際は戦う必要が無いのに戦おうとする場面は多々あります。本当に勝負する必要があるのか、何かに勝たなければならないのか、今一度問い直す必要があります。