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2019.11.7
2019.11.7
日本人の精神性をまとめたのが武士道です。5000円札の肖像に描かれている教育家、思想家の新渡戸稲造が書いた著作です。
仁や礼って何?と聞かれて答えられる人はどれぐらいいますか?私たちは今後、今以上に外国人と接点を持ち、また海外で仕事をする機会が増えます。そのとき海外の人から見たちょっと不思議な日本人の価値観について尋ねられることもあるかと思います。
日本人とは何か。これから海外に飛び立つ20代の人たちに読んでもらいたい一冊です。
この本は最初英文で書かれました。ちょうど日清戦争で日本が勝利して世界的に日本に対する関心が高まっていたころです。ドイツやフランスといった当時の大国で翻訳され、ベストセラーになりました。新渡戸はキリスト教徒なので、ある意味客観的に日本人を分析することができたと言われています。
そもそも武士道とは行動規範であり、ノブレスオブリージュ、高い身分に伴う義務です。
まず前提が2つあります。ひとつは卑怯者、臆病者であってはいけないこと。もうひとつは単なる知識を認めないということです。知識はそれを経験して初めて真の知識になり、目的ではなく知恵を得るための手段だとしています。
そして日本人の行動規範として7つの徳目を挙げています。義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義です。このなかで特に大切なのは義と勇であり、どんな困難な状況でも周りに流されずに正義を守る勇気を持つものが真の武士だとしています。
義理は詭弁と偽善だとし、本当の義ではないと認めていません。
自分が正しいと信じる道に対して人があれこれ行ってくるときがあります。そんな時でも理屈ではなく自分が正しいと信じていることを守り通すことが大切だと言っています。勇気とは正しいことをすることなのです。
武士が目指すべき究極の目標は忠義だと言っています。忠義とは自分の殿様や目上の人に正しく仕えるということです。個人は国の最小単位の構成要素ですが、個人よりまず先に国の存在を忘れてはいけないと言っています。
1人の主人に固執せず、他の主人を軽んじることなく2人の主人に仕えることは可能だとし、忠義を守って名誉を得ることが武士の到達点だとしました。
名誉とは新戸部いわく、恥を知ることで、人に笑われるような恥ずかしいことはしてはいけないということです。要するに体面を汚すようなことをせず、目上の人にしっかり仕えることで名誉を得ることを目標にしなさいと言っています。武士にとって忠義とは自己実現そのものなのです。
その名誉を得るために武士たちは切腹をしました。切腹は責任を取る手段でした。日本人は腹は魂と愛情が宿る場所でだと考えていて、切腹とは真心を示す意味もあったと言っています。
一方で切腹は人の死を軽んじる傾向も生みました。部下にやたらめったに腹を切らせて責任の所在を曖昧にしてしまうことも多々ありました。新戸部は切腹をする勇気を讃える一方で「いたずらに死を選ぶことは卑怯であり、真の名誉は天命を成就すること」としています。
当時外国人の間では、日本人の行動には謎が多く誤解を生じることも多々あったそうです。例えば日本人が苦しいときに笑うこと。これは日本人が鈍感だからだと海外の人は思っていました。
新戸部はそうではなく、苦しいときの微笑みは自分の心のバランスを保つための手段だと言っています。武士にとって感情をむき出しにすることは礼に反し、勇気のない行動だと解説しました。
そして日本が発展する原動力は劣等とみなされることに耐えられないという名誉心だとし、大和魂はこれら道徳的な考え方をまとめたあげた日本固有のものだと言っています。そして我々はこの遺産を守り、古来の精神をそこなわないこと、広い視野と柔軟な理性をもつことが使命であると述べています。
こうした武士道の考え方が国家に対する忠誠心を生んで戦争へとつながったとして、戦後GHQによって日本の道徳教育が見直された際にこのような日本人の精神性が失われたと指摘する専門家が多くいます。
その真偽は定かではありませんが、今の時代から見てもなぜ切腹していたのかという明確な理由はわかりません。ですが周りから笑われるような恥ずかしいことが切腹するくらいしてはいけないことだったと考えると、とても高い倫理観を持っていたんだと感じます。
この本を読むことによって人それぞれ感じ方があるかと思います。今の仕事の進め方や職場の仲間との関係に置き換え読む人も多いかと思います。いまの自分と比べ同じ日本人とは思えないようなことも書かれています。ぜひ我々日本人が持っている精神性を感じてみてください。
この記事の編集者が以前知ったミスを乗り越える方法に「昔なら切腹しなければならなかったのだからこれくらいのミスで落ち込まない」と考える、というものがあります。切腹のイメージは今でも「責任を取る」というものであることがわかります。
新渡戸稲造によれば「部下にやたらめったに腹を切らせて責任の所在を曖昧にしてしまうことも多々」あったようです。これは今の社会にも当てはまることがあるのではないでしょうか。責任を逃れるために他人のせいにすることは、ある意味で切腹させているのと同じです。
これは武士道における「忠義を守って名誉を得ること」の対局に位置すると思います。名誉とは「恥を知ること」です。責任逃れに他人に責任を押し付けることは、まさに恥を知らない行為といえます。
武士道は私達の根底にある精神です。本書を通じて、日本人古来の倫理観を学ぶことをオススメします。
出典:新渡戸稲造著「武士道」