政治・経済

世界経済フォーラム発表、今年の10大新興技術は?

この記事の結論は「今年の10大新興技術には今後私達の生活に関わる可能性がある技術が多く掲載されている。最新技術には危険がつきものだと理解して慎重に受け入れる姿勢が大切」です。世界経済フォーラムは2016年6月に2016年度版の10大新興技術を発表しました。どれも今後の研究・発展次第で私たちに直接関わる可能性があるものです。この記事では、世界経済フォーラムが発表した今年の10大新興技術(Top 10 Emerging Technologies of 2016)についてまとめました。

世界経済フォーラムとは?

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世界経済フォーラム(World Economic Forum=WEF)とは、本部をスイスのジュネーブに置く世界の大手企業や主要団体などが加盟する非営利財団のことです。いずれの利害関係にも関与しない独立・公正な組織で、あらゆる主要国際機関と緊密に連携して活動しています。会議はスイスのダボスで実施されることから通称「ダボス会議」と呼ばれています。

詳細は関連記事にまとめてありますので、合わせてご覧ください。

 

今年の10大新興技術は?

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世界経済フォーラムは、2016年6月に今年の10大新興技術(Top 10 Emerging Technologies of 2016)を発表しました。「THE WALL STREET JOURNAL.」の2016年8月18日の記事によると、リストはアメリカIBMのフェローで最高技術革新責任者(CIO)のバーナード・メイヤーソン博士をはじめとする世界の専門家で構成された委員会がまとめたものです。

リストに掲載されている新興技術はすでに何年も研究開発が行われてきたもので目新しさはありませんが、今回リストに掲載されたということは、それぞれの技術の影響力が大きくなってきたということを意味します。

世界経済フォーラムの発表をもとに、今年の10大新興技術をまとめました。

1 ナノセンサーとインターネット・オブ・ナノシングス
(Nanosensors and the Internet of Nanothings)
2 次世代電池
(Next Generation Batteries)
3 ブロックチェーン
(The Blockchain)
4 二次元材料
(2D Materials)
5 自律走行車
(Autonomous Vehicles)
6 生体機能チップ
(Organs-on-chips)
7 ペロブスカイト太陽電池
(Perovskite Solar Cells)
8 オープンAIエコシステム
(Open AI Ecosystem)
9 光遺伝学
(Optogenetics)
10 システム代謝工学
(Systems Metabolic Engineering)

1.ナノセンサーとインターネット・オブ・ナノシングス

2020年までにインターネットに接続されたデバイス(IoT)が300億個に達すると予想されていますが、現在ホットとなっている分野はナノセンサーです。

ナノセンサーとはナノテクノロジーの1つで、ナノ医療の分野の技術です。ナノテクノロジーとは、原子や分子の配列をナノスケールで制御することにより産業に活かす技術のことです。この「ナノ(nano)」という言葉は元々ラテン語で「小人」という意味で、「10億分の1」という意味で長さの単位にも使われています。つまりナノメートルは10億分の1メートルということになります。

地球を1メートルとすると、1ナノメートルはおよそ1円硬貨の直径に相当します。水素原子は0.1ナノメートルです。原子や分子数個単位でコントロールする技術がナノテクノロジーなのです。

ナノテクノロジーの中で、ナノセンサーは人体内で循環したり建築資材に埋め込んだりすることができる技術です。ナノテクノロジーとIoTが結びついた技術で、血液からがんを検出する技術など、化学物質の高感度・高速検出を目指した研究によって医療技術の発展に寄与しています。

2.次世代電池

再生可能エネルギーの普及を妨げている最大の要因の1つは、需要と供給を一致させることの難しさです。ナトリウムやアルミニウム、亜鉛などをベースとした電池を利用するエネルギー貯蔵技術の進歩により、クリーンで信頼性のある24時間体制のエネルギー源を提供することができます。

現在広く普及しているリチウムイオン電池のおよそ3倍以上の出力特性を持つ「全固体(型)セラミックス電池」や水素と大気中の酸素との反応で水を生成しながら放電して水の電気分解によって充電する「水素/空気二次電池」、ナトリウムイオンを使った次世代電池など、さかんに研究が行われています。

次世代電池の開発は自動車業界も注目しており、将来の電動自転車の普及に向けて開発を行っています。

3.ブロックチェーン

ブロックチェーン技術は仮想通貨に用いられている技術です。2009年に提出された論文が元になっています。

仮想通貨の1つであるビットコインに関連するベンチャー投資は2015年だけで10億ドルをこえました。「1ドル=100円」とすると、約1000億円規模です。

日本政府は2017年春を目安にビットコインを「支払手段」とする方針を打ち出しており、今後の世界に与える影響が注目されています。ビットコインの詳細は関連記事にまとめてありますので、ご参考にしてください。

4.二次元材料

近年の生産コスト急低下の背景には、グラフェンのような二次元材料が幅広く応用され始めていることがあげられます。空気や水のフィルターから新世代ウエアラブル端末、電池など、その汎用性は広いです。

グラフェンとは基本的には炭素原子の層でできたシートで、厚さは原子1個分しかありません。1mmの厚さにするには、このシートを約300万枚重ねる必要があります。伸縮性があって柔軟でありながら非常に硬く、強さは鋼鉄の100倍もあります。グラフェンの発見は2004年頃で、グラフェンを発見した科学者たちは2010年度のノーベル物理学賞を受賞しました。

近年このグラフェンを超える技術が研究されており、様々な製品に応用することで新たな製品の開発を可能にしています。

5.自律走行車

自動運転車は人命を救い、公害を減らし、経済を活性化し、高齢者やその他の社会階層にとって生活の質の改善をもたらす可能性を秘めています。

近年は測域センサーやカメラ、GPSなど各種センサーから得られる画像や位置情報を基に経路を追従し、障害物を避けながら決められた目的地を目指す技術などが研究されています。人が入り込めない危険な場所に入り込んだり、移動が困難な方の補助をすることができるとして期待されています。

日経ビジネスオンラインの2016年9月6日の記事によれば、アウディは世界初の「自動運転車」を2017年に投入する予定です。自動運転車の話題は多くのメディアが取り上げていますが、身近に自動運転車が現れる日も遠くはありません。

6.生体機能チップ

生体機能チップは、複雑で動的な細胞周囲の微小環境を生体外で再現しすることができるデバイスです。ヒト細胞が並んだマイクロチューブが埋め込まれており、空気や栄養素、血液、感染症の原因となる細菌などをチップ内の管を通して送り込むことができます。つまり、人間の内臓環境などを対外で再現し、実験を行うことができるのです。

このような人間の臓器の縮小模型には、医学研究や新薬開発に革命をもたらす可能性があります。以前は不可能だった方法で研究者たちが生物学的メカニズムの反応を見ることができるのです。

この技術により、新薬開発だけでなく、動物実験なども減らすことができるとして期待されています。

7.ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池はペロブスカイト結晶を用いた太陽電池です。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力氏の研究チームが開発しました。ペロブスカイトはチタン酸カルシウムの鉱物名で、ペロブスカイト太陽電池はこのペロブスカイトと同じ結晶構造を持っています。

従来のシリコン太陽電池より優れている点が3つあります。

  • 製造が簡単
  • ほぼどこでも利用できる
  • 効率的に発電

ただ課題も多く抱えています。大型化や劣化を防ぐなどの課題がクリアできれば、ペロブスカイト太陽電池は私達の生活改善に大きく役立つと予想されています。

8.オープンAIエコシステム

AIとは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では人工知能と訳されます。人工知能とは人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムのことです。人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりする事ができます。

近年は自然言語処理と社会意識アルゴリズムが進歩し、かつてない規模でデータが利用できるようになりました。近い将来、個人の金銭や健康の管理から洋服選びの助言まで、幅広い仕事で役立つことが期待されています。

チェスや囲碁で世界王者を倒したことでも話題になりましたが、人工知能が人間を凌駕する時代が来るかもしれません。

9.光遺伝学

光遺伝学とは、光によって活性化されるタンパク分子を遺伝学的手法を用いて特定の細胞に発現させ、その機能を光で操作する技術のことです。光(opto)と遺伝学(genetics)を組み合わせたことから光遺伝学(Optogenetics)と呼ばれます。

脳の神経細胞の働きを光を用いることで操作することが可能です。最近の進歩により、脳組織のより深い部分にも光の照射ができるようになりました。このことは脳障害を抱えている人々の治療改善につながる可能性があります。

近年はうつ病のマウスを治す実験や猿への応用実験も行われています。将来、脳梗塞などにも応用できるとされています。

10.システム代謝工学

代謝工学は、代謝経路の改変と解析に関わる学問やその技術のことです。微生物をシステムとして理解し、目的の物質を生産するための最適な手法を開発することを目的としています。

近年の合成生物学やシステム生物学、進化工学の進歩のおかげで、化石燃料の代わりに植物を利用して安価でよりよく製造できる基礎化学品が毎年増加しています。

微生物を用いることによって、プラスチック製品などの化石燃料を用いた製品に頼ることのない生活が実現する可能性があるのです。

 

最新技術には危険がつきもの

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世界の技術は日進月歩です。常に進歩や改善が続けられています。

目まぐるしく変化する世界情勢の中で、今回選ばれた技術の多くは今後私達の生活に直接関わる可能性があるものです。リストに掲載された技術を応用することで、私達の生活が飛躍的に向上するかもしれません。

一方で、最新技術には危険がつきものです。自動運転車を開発した電気自動車ベンチャーのステラは、自動運転中に死亡事故を起こして話題となりました。自動運転で初の死亡事故でした。

私達の生活が便利になることは喜ばしいことですが、最新技術には常にリスクがあることを理解し、慎重な姿勢を崩さないことが大切です。

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