パリ協定とは?日本は批准できない?デメリットは?

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この記事の結論は「パリ協定は京都議定書に続く温暖化対策を定めた国際協定。日本は国会承認が遅れたためパリ協定発効までに批准(ひじゅん)することができない。ルール作りに参加できないデメリットがある」です。2020年までの温暖化対策を定めた京都議定書に続いて2020年以降の温暖化対策を定めたのがパリ協定です。京都議定書は採択から発効まで7年かかりましたが、パリ協定は採択から発効まで1年足らずでたどり着いています。この記事では、パリ協定について、批准できない理由やそのデメリットについてまとめました。

パリ協定とは?

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パリ協定とは、2020年以降の温暖化対策を定めた国際協定です。すべての国が参加します。2015年11月30日から12月13日までフランス・パリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)によって正式に採択されました。

パリ協定は、1997年に京都で開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3)、通称京都会議で採択された京都議定書に代わる地球温暖化対策の取り組みとして位置づけられます。京都議定書は2008年から2020年までの地球温暖化対策として策定されたので、京都議定書の後の対策としてパリ協定が定められることになります。

環境省「パリ協定の概要(仮訳)」によると、パリ協定の主な目的は「世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること」です。これを達成することで、気候変動の脅威への世界的な対応を強化することを目的としています。つまり、世界の平均気温の上昇を2℃(できれば1.5℃)以下に抑えることで気候変動を抑えるということです。

パリ協定の中には、上記した目標を達成するために「主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新すること」「適応の長期目標の設定及び各国の適応計画プロセスと行動の実施」などが盛り込まれています。世界の平均気温の上昇を抑えるために、排出量削減目標を作り提出すること、達成のための国内対策をとっていくことが義務付けされたことになります。

 

日本はパリ協定を批准できない?

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2016年11月4日に発効されるパリ協定に、日本の批准は間に合わない見通しとなりました。

パリ協定は第21条で「この協定は、世界総排出量の55%以上の排出量を占める55カ国以上の締約国がこの協定を締結した日の後30日目の日に効力を生じる。」と規定されています。つまりパリ協定発効の条件は以下の2つです。

  1. 批准国が55カ国以上
  2. 批准国の排出量が世界全体の55%以上

ただ2016年8月の時点ではこの条件はどちらも満たしていませんでした。条件が満たされなければ協定は発効されません。そのため日本政府はTPP協定などを優先し、パリ協定の優先度を低く見積もっていました。

日本政府の大きな誤算は以下の3つです。

  1. 米中合意
  2. インド批准
  3. EU一括批准

米中合意

2016年9月3日にアメリカと中国はパリ協定の同時批准を発表しました。

アメリカは5月の主要国首脳会議(伊勢島サミット)の首脳宣言の中で「2016年中の発効」を盛り込んでおり、中国も9月に開催されたG20でパリ協定を重視していましたが、アメリカと中国が批准しても上記した2つの条件を満たさないことから、日本政府はアメリカと中国の動きを重要視しませんでした。

「THE HUFFINGTON POST」の2016年9月4日の記事によると、米中両国の公式表明の前には24カ国がパリ協定に参加しており、世界の温室効果ガスの排出量では約1.08%に過ぎませんでした。アメリカは約17.9%、中国は約20.1%を占めていますので、アメリカと中国の参加で排出量の総計は約40%に上昇したことになります。

インド批准

年内発効の可能性が高まったのは、2016年9月25日にインドが批准を表明してからです。インドは排出量が世界第4位で、約4.1%を占めます。

インドが批准を表明したことにより、発効の条件の1つである「批准国の排出量が世界全体の55%以上」を満たす可能性が高まったため、環境省は首相にパリ協定の批准を直訴します。臨時国会にて承認案を提出する事となりました。

EU一括批准

最も予想外だったのがEUの一括批准です。

2016年10月4日に欧州議会が異例のEU一括批准を承認しました。

通常は全加盟国の批准に時間がかかりますが、EUは今回、加盟国の手続きを後回しにしました。EUが一括批准したことによって、パリ協定発効条件の1つである「批准国が55カ国以上」の加盟国数は大きく増加したことになります。これにより、年内の発効が確実となりました。

同年10月5日に国連がパリ協定の条件を満たしたことを発表したため、11月4日にパリ協定が発行されることが正式に決定しました。

日本は10月11日に臨時国会に承認案を提出する予定ですが、批准国としての権利が得られるのは批准してから30日後と規定されているため、発効には間に合わない見通しです。

 

パリ協定を批准できないデメリットは?

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【今後の予定】

月日 予定
10月11日 (日本)臨時国会で承認案提出
11月4日 パリ協定発効
11月7日〜18日 モロッコでのCOP22に合わせてルール作り開始
11月30日 (日本)臨時国会会期末

前項で述べたように、批准国としての権利が得られるのは批准してから30日後です。上記した表が示す通り、日本はモロッコで開催される予定のCOP22に批准国として参加することができません。これは、日本がパリ協定のルール作りに参加できないことを意味します。

日本がルール作りに参加できないということは、日本に不利益な議論でも異議は申し立てられないということです。今後、温暖化ガスの削減目標の条件や目標が守られなかった場合の対策が議論される予定ですが、日本に不利な取り決めとなっても口出しはできません。

 

国際動向の読み違えが今回の事態を生んだ

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政府関係者は「COP22では大したことは決まらないため、日本に不利に作用することはない」と主張していますが、実際にCOP22が始まらないとわかりません。

また衆院ではTPP協定承認案を優先的に審議することを決めており、パリ協定は後回しになる可能性があります。

毎日新聞の2016年10月7日の記事によると、日本は途上国に省エネ技術を提供する代わりに途上国が削減した温室効果ガスの一部を自国の削減分に算入できる「2国間クレジット制度(JCM)」など独自の仕組みを提案したいと考えています。ただCOP22では批准国にしか発言権が与えられない予定のため、この提案は難しいと考えられます。

日本政府の国際動向の読み違えが生み出したとも言える今回の事態に対する政府の対応に注目が集まります。

 

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