生き方

地方テレビ局で働くリアル③キャリアや将来性は?潰れない?

この記事はキャリアについての寄稿記事です。地方テレビ局に勤務されていた経験を持つAさんより頂いた、キャリア体験談を基に構成しています。3記事目の今回は、地方テレビ局で働く人のキャリアや地方テレビ局の将来性についてのお話です。地方テレビ局が抱える売り上げ基盤などが詳細に語られています。「地方テレビ局で働く人のリアル①②」と併せてご覧ください。

積み上げたキャリアは放送業界でしか通用しない

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営業部社内で待っていても見積もり依頼が届き、その書類に金額を記入しファックスするだけで受注できる。こんな会社があったら入りたいと思いますか?

地方局の特に東京支社ではこのやり取りだけで広告受注できます。あとは必要ないと私は思うのですが「顔を知ったものじゃないと…」という昔ながらの感情的、情緒的な要素で広告代理店を訪問し、挨拶と世間話をするだけのやり取りです。このように仕事を進めていくのがほとんどです。

自分でスポンサーを見つけて交渉して広告の契約を取り付ける仕事は、全体の仕事量のうち0.01%もありません。訪問先、営業先が決まっているルート営業が基本ですから、そのやり方を変えるなどして売り上げ向上の実績を作り、もっと待遇の良い大きな放送局に転職するくらいしかないのではないでしょうか。

報道・制作部に所属すれば、制作した番組が何かの賞を受賞するといった目に見える形がないとキャリアアップは厳しいでしょう。その実績を活かしてフリーのディレクターになったり、大きな放送局に転職したりするなどして自分のキャリアを積み上げていくしかないと思います。要は、地方局のどの部署にいても積み上げたキャリアは同じ放送業界でしか通用しないということです。

 

広告収入に頼らない売り上げ基盤の構築

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地方局の売り上げの約80%は広告収入ですが、広告動向はテレビ、ラジオからインターネットへどんどん移行し、その割合はどんどん縮小しています。これから人口が減っていき市場が小さくなっていくなかで、広告収入だけに頼らない他の売り上げ基盤を築かなければならない状況です。

ただどの地方局もその収入源を確立できておらず、また見つけることもできていません。おそらくこのまま何もできていない状況が続けば、売上が減り、人を雇っていられなくなります。そうなるとリストラが始まり、給与水準も下がっていくでしょう。

ただし、テレビ局が持つ集客量と即時性というメリットに対し、ある一定量の広告はテレビ局に投下したいというスポンサーがいると考えられます。そのため売り上げは下げ止まり、それに合わせた社員規模、給与水準になって会社は存続していくと思います。潰れないかというと、いずれ破綻する会社もあるかもしれませんが、どこか他の地方局と合併、吸収という形で残る局もあるでしょう。

 

テレビ局は官僚的な会社

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テレビ局は地方局も含めて免許事業で新規参入は基本ありません。またインターネットなど通信回線を使った放送も制限が大きく、融合はなかなか進みません。その方が新しい収入基盤ができると思いますが、広告代理店も含めてとてつもなく分厚い既得権益に守られているので変わろうとしないのです。

とりわけ、スポーツイベントは大きな広告量が見込めるテレビ局にとっておいしい期間です。オリンピック、サッカーワールドカップ、世界水泳、世界陸上などのすべてのイベントが被らないように開催されています。ここには広告代理店とテレビ局の思惑が見え隠れします。

これらの大きなイベントのスポンサー集めを主導するのは大手広告代理店の電通です。電通はテレビ局を束ねその広告枠を押さえる一方、スポンサーに対しこの時間このタイミングのCMを流せますとメリットを提案します。

そのなかで地方局は何をしているかというと、枠を確保しているだけです。他に何もしていません。あるのは社内調整だけです。マスコミは官僚批判をしますが、テレビ局ほど官僚的な会社もないのです。ある意味放送枠という誰にも邪魔されない鉱脈の維持管理をするだけの会社が放送局なのです。こうした現状が続けば地方局に将来性はないと断言できます。

 

環境の変化に対応できるものが強い

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かつて日活や大映といった映画会社が破綻しましたが、テレビ局も同じような道をたどるのではないでしょうか。AbemaTVはこうした現状を変えようとして生まれた新しいテレビ局の形と言えます。

どこにいてもスマートフォンで視聴できるアプリの開発は革命的な出来事です。ただ巷で言われているように収入源は広告ということなので、ビジネスモデルとしてはこれまでのテレビ局と変わらないでしょう。ここにも電通が絡んでいるので、広告が絡めばあの手この手で電通という関所を通らないと仕事ができない仕組みを作るのは、凄いなと感心します。

今回テレビ朝日とサイバーエージェントが共同出資して誕生しましたが、今後同じような無料視聴できるインターネットTVが少しづつ生まれるでしょう。そうなると地方局の未来はますます暗く、いずれ淘汰されるのではないでしょうか。ダーウィンの進化論ではありませんが、強いものが生き残るのではなく、環境の変化に対応できるものが強いのです。

 

デジタル広告費がテレビ広告費を追い抜く:編集後記

ランナー

地方局で積み上げたキャリアは放送業界でしか通用しないようです。営業でも報道・制作でも実績を作り待遇の良い大きな放送局に移ったり、フリーのディレクターになったりしてキャリアを積み上げていくしかないと、Aさんは仰っています。

最近では、デジタル広告費がテレビ広告費を追い抜くといわれています。また、BS・CS放送やインターネットテレビ局などといった、在京キー局や地方局以外のテレビ放送も増えています。これらのことからも、広告収入に依存している現在の状況を、今後も上手く続けていくのは難しいでしょう。Aさんが仰っているように、各地方局の抱える利益構造をどう変えていくかという問題は、一層深刻化していくと考えられます。

次回の記事では、地方テレビ局のビジネスモデルや売り上げについてのお話をまとめてお送りします。

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