外資系生命保険営業のリアル③年収や待遇は?

この記事はキャリアについての寄稿記事です。外資系生命保険会社の営業職として10年間勤務された経験を持つAさんより頂いた、キャリア体験談を基に構成しています。3記事目の今回は外資系保険営業職の給与システムや待遇についてのお話です。外資系生命保険の営業の詳しい給与システムやボーナス、年収などについて詳細に語られています。

外資系生命保険営業の給与システムは?

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私がいた外資系保険会社の報酬は「初年度手数料」「2年目以降の継続手数料」「ボーナス」の3つで構成されています

手数料は営業の収入です。

手数料が支払われる期間は4年間です。契約から1年目を初年度手数料と呼んでいますが、これがお客様が支払う保険料の約30%です。

そして契約の2年目から4年目までが8%と一気に下がります。ご契約の人数分だけ増えていくのは良いことですが、同じ契約からの収入は4年間経過するとなくなります。

つまり、常に見込み客を探し続けて契約をしてもらわないと、いずれ収入はゼロになるのです。

さらにボーナスがあります。

毎年期末の全社員の手数料収入の平均値を基準に、その数字をどれくらい上回ったかで7段階のボーナスレートのなかから、自分のレートが決まります。

例えば、ある年の全社員の手数料収入の平均が700万円で、自分の手数料収入が1000万円だったとすると、自分のボーナスレートは70%になります。このパーセンテージが、翌期のボーナスに反映されるのです。ボーナスは各クォーターで区切り、年4回支払われます。

ボーナスレートが70%の状態で翌期の第一クォーターの手数料収入が200万円だったとすると、その70%である140万円がボーナスとして加算されるわけです。3ヶ月間で合計340万円なので、年収換算すると1300〜1400万円程になる計算です。

契約の解約は大きな痛手になります。

8〜30%の手数料が入らなくなることもありますが、最も大きな痛手はボーナスレートのパーセンテージが下がるペナルティです。契約から2年以内の解約は特に大きなペナルティが設定されています。

ボーナスレート獲得のためだけの契約が横行したことと、契約の継続率という業績数字を維持していくために、ペナルティが設定されたと言われています。

 

外資系生命保険営業の年収は?

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上記のような給与システムですと、年間1,000万円の手数料収入をあげている人の年収は約3000万円です。一方で、ボーナスレートが20%以下、または獲得できない営業も社内の3分の1を占めています。

ここから復活できず辞めていく人がたくさんいました。

私が入社したときは90人の同期がいましたが、10年後に残っていたのは10人でした。他の人に聞いても10年後に残っているのは同じくらいの割合なので、10年生存率はだいたい10%くらいです

この仕事は若くても大金を稼ぐことができますが、売れないと年収200万円にも満たない人もいる、フルコミッションの世界です。

私自身の年収は、1番多い年で4000万円、1番少ない年で400万円程でした。

 

外資系生命保険営業の待遇は?

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稼ぐには稼げるのですが、サラリーマンと比べると出費も大きく、待遇は良いとはいえませんでした。

家賃補助などはありませんし、個人事業主なので携帯電話、通信費、出張などの交通費、喫茶店代などの交際費はすべて自分持ちです。簿記や相続の勉強のために本を購入したり、学校に通ったりする費用も自分で払います。

文房具や紙袋といった備品も自分で購入していました。チラシのデザインと印刷を頼んだり、セミナーを開くために会場を借りる費用だったり、タウン誌に宣伝を出したりとサラリーマンであれば会社が負担してくれた営業活動にかかる費用もすべて自己負担なのです。

人にもよりますが経費で出て行くお金は30%~40%ほどでしょうか。このパーセンテージで計算すると、私が4,000万円の年収があったときは、1,200〜1,600万円は仕事の必要経費としてなくなってしまうのです。

この世界で働き続けていくためには、投資も必要なのです。

私が働いていた生命保険会社では1年間を区切りとし、社長杯と名付けたコンテストを実施していました。成績優秀者をハワイやラスベガスに招待し、日本から歌手も呼ぶなど派手なイベントを開催していました。

入賞の基準は、契約件数が100件以上、手数料収入が1000万円以上で、入賞ランクが手数料収入の金額によって4段階に分かれていました。1年を約50週とすると、週2件、20万円の手数料を契約しなければ達成できない数字なので、条件はかなり厳しいです。

社内には手数料収入1,000万円以上が約5%いて、なかには1億円を超える人もいました。

入賞する人の約30%が入社1年目の社員でした。

この理由は、新人には見込み客が豊富だからです。しかし、2年目以降の入賞率は大きく低下し、1年目は約30%だったのが2年目以降は3%になります。

件数と手数料収入の設定も、会社の決算や保険業界の経営指標に絶妙に連動しています。まるでカゴの中のハムスターのように、社長杯という名誉のために走り回っていました

そのために不正を働く人も少なくありませんでした。名義を借りる人や故意に契約を分けて件数を稼ぐ人、いまはどうかはわかりませんが、私が勤務していた頃は、毎月誰かが懲戒処分を受けている状態でした。

ルールに従えば、たとえば毎年の契約件数が10件で手数料収入が1件あたり100万円、合計1000万円という成績であれば、かなり稼げます。

ただ、そんな営業が増えすぎると業績評価の基準である契約件数が少なくなり会社は困るのです。そこに社長杯という名誉を得るための飴をぶら下げ、件数基準を設けているのです。

件数を増やさなければいけないので、同じ保険でも種類を変えたりするなど、お客様ファーストではなく自分のための契約を増やす人も横行していました。

支社運営においては社内のいたるところに「みんなでハワイに」といった標語や目標数字を掲げ、社長杯をプロモーションしていました。

私は別にハワイに行きたいから仕事をしているわけではなく、会社の保険に対する理念と商品に共感していたので、このような見え見えのやり方が好きではありませんでした。

「頑張っても頑張らなくても変わらない人生で、あなたはこのあとの人生頑張れますか?」。入社前に支社長に言われた言葉を思い出しました。頑張り続けるためには周りの環境にも流されない強い動機が必要でしたね。

 

仕事に対する強い信念:編集後記

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Aさんは会社の保険に対する理念と商品への共感があったため外資系保険会社の営業という仕事を選びました。働くうちに自分の仕事に誇りを持つようになり、そこにやりがいを感じていました。

ただ、Aさんの会社では、ボーナスや社長杯を目的に営業成績を伸ばそうとする社員が多く、社内にもそういった雰囲気があったといいます。金銭欲、名誉欲をうまく使ったコントロールといえますね。

報酬のために仕事を頑張るのは決して悪いことではなく、むしろ当然のことです。ただ、自分の仕事に誇りを持って働いていたAさんにとって、ときには不正を働く他の社員の仕事に対する姿勢は意に反していたのでしょう。「そんなやつらと一緒にされたくない」という思いがあり、ボーナスや社長杯のために働くことに納得できなかったのです。

Aさんは「頑張るためには周りの環境にも流されない強い動機が必要」と仰っています。これは、他の社員と同じようにボーナスや社長杯のために頑張るようになることを危惧しているだけではありません。他の社員の考えや社内の雰囲気に不満を持っていたとしても、自分は腐ることなく「強い信念を持って」仕事に取り組むべきだという意味が含まれているのだと思います。

次回の記事では、外資系生命保険営業のやりがいや辛かったことについてのお話をまとめてご紹介します。